【2022年のニュース】2022年8月の活動ダイジェスト:振動台実験 他

振動台実験とU字型壁静的加力実験を実施

8月11日と12日に内務文化省文化局(DOC)と公共事業省技術局(DES)が文化局実験施設で振動台実験を行いました。約2年9か月ぶりに研究者の渡航が再開され、スタンバイしていた試験体(1/6縮小モデル)の加振を行いました。試験体は、版築造2体(補強有・補強無)とマッドモルタル石積造2体(補強有・補強無)の計4体です。
カウンターパートは、振動台の操作を遠隔講習で伝授されていたものの、試験体の設置方法、測定機器の設置、測定ソフトの使用方法、加力手順などは今回学ぶことになりました。「補強の無い建物」と「補強された建物」を2体振動台にのせて同時に加振するので補強効果が明確に確認できます。
1度目の加振は日本側が準備から測定まで全工程を細かく指導し、2度目を行う際はブータン側が自ら行いました。9月にも日本側は渡航し、試験体の向きを変えて実験を行い(90度回転)、揺れの方向による建物挙動の変化を確かめます。
縮小モデル試験体を使った振動台実験は、実大試験体に比べ作成費用も安価で済むことから今後の主流として期待されます。

8月16日と17日にはU字型試験体(3/4スケールモデル)の静的加力実験が行われました。スルーストーン(壁厚長の石)を、「壁角(コーナー部)部」と「一定間隔で平面部」に配置する構造をもつ試験体です。スルーストーンにはせん断ひび割れを制御する効果(対角線のひび割れを防ぐ)が期待されています。スルーストーンの有る壁と無い壁を油圧ジャッキで押して、耐力を測定しました。結果は、耐力の増大は見られなかったものの、破壊性状(壊れ方)には違いがみられました。今後は、縮小モデルを作って振動台で検証する予定です。

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版築造試験体の加振の様子(左)写真提供:文化局

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U字型試験体の静的加力の様子(右)写真提供:文化局

文化局で施工教材ビデオ収録を実施(F字型壁を使った施工指導)

日本側研究者の指導のもと、文化局においてF字型壁モックアップ試験体を使った施工指導が行われました。版築造と石積造のそれぞれを模した試験体で、基礎・地中梁・壁・柱・梁をもつ構造体です。
プロジェクトで開発した耐震化工法と更新する施工基準もこの試験体の施工には盛り込まれています。これらの施工の要点を記録し、教材ビデオを作成することが今回の目的です。作成されるビデオ教材は県の技術者に向けて行われるTraining of Trainers(指導者育成)で利用されます。施工者は、研究者の指導のもと各部の施工を慎重に行い、その要点が録画されました。
さらに壁部にはメタルメッシュとモルタルによる耐震補強も行われ、その施工状況も記録されました。コンクリート内の鉄筋の定着長や被りコンクリート厚の確認など要点は多くあります。見慣れた施工の中で、見落としがちな要点にも焦点をあててこのビデオは作られます。

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日本側研究者による施工指導(左)写真提供:文化局

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版築造試験体の施工(右)写真提供:文化局

地質鉱山局で地震観測ソフト(Seiscomp)の操作講習を実施

8月15日(7日間)から地質鉱山局(DGM)で地震観測ソフト「Seiscomp」の操作講習が行われました。研修会社から遠隔指導を受ける形を取りつつ、日本人研究者・京都大学の大見教授がブータンを訪問し、研修指導のサポートを行いました。このソフトウェアを導入することで、DGMはマグニチュード(M)3未満の地震を観測できるようになります(これまではM3以上の地震しか観測できませんでした)。
さらに、教授はサーバーシステムを修正して、DGMがこのソフトウェアを使用して自らのコンピューターで14か所の地震観測所からのデータにアクセスして、分析できるようにしました。活動最終日には活動総括の打合せを行い、DGMサーバーの現状を説明しました。またDGMメンバーからの質問に対して、観測所からのデータ送信の設定方法をアドバイスしました。

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ソフトフェアの操作講習(左)写真提供:京都大学大見教授

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活動総括の打合せ(右)写真提供:京都大学大見教授