無収水（商業的損失）削減のための顧客調査実施状況

プロジェクトの第１期である2022年の10～12月にかけて、商業的損失の要因となり得る水道メーターの稼働状況や検針の正確性、不法接続などの状況を確認するため、対象地域の顧客サンプル500件の調査を行いました。調査では、サンプルとして選定した顧客を一軒ずつ訪問し、水道公社の料金徴収システム上の顧客情報と、実際の顧客訪問で確認した情報、顧客ファイルの情報を一つずつ照合し、特に水道メーターの登録情報や検針データの確認を行いました。その結果、システムや顧客ファイルに記録されている水道メーターの登録番号、メーター設置年月日、メーターのサイズ情報などについて、平均で10～40％の情報が実際の顧客情報と一致しておらず、顧客情報管理の改善が必要であることが分かりました。顧客情報の把握は、正確な料金徴収に不可欠であることに加え、水道サービスの担い手であるアディスアベバ上下水道公社が顧客から信頼を得るためにも非常に重要です。

また、設置してある水道メーターの設置状況を目視で確認したところ、非稼働、上部ガラス部分の汚れや傷などによる判読不能、不適正な設置（土中に埋設、土台の歪みや不安定など）、遮へい物による検針困難、不法接続疑いなど、設置や管理に関係する問題（疑い）のある件数が6割にも及び、水道メーターによる正確な水量の把握や検針員による正確な検針の実施をするうえで、様々な問題があることが分かりました。

2023年7月、プロジェクトではカウンターパートと上記の調査結果を共有し、顧客情報の管理改善と、より正確で適時の顧客水道メーターの状況把握、検針員による適正な検針実施の管理と改善が不可欠であるという認識を新たにしました。調査に参加したAAWSA支局職員は、メーターの不適正な設置や不法接続疑いのあるケースが多数存在することに強い問題意識を持ち、調査結果を待たずとも自ら40個のメーター検査と交換を実施したこと、明らかな不法接続ケースについては調査と対策を行ったことを報告しました。また、結果共有を受けた支局長たちや本部職員も、改めて水道メーターを扱う技術者や検針員の業務の標準化や管理強化に取り組む必要性について言及しました。

2023年8月、これらの経験を基に、広くパイロット地域 ^[i] の顧客を対象とした顧客調査の準備を開始しました。専門家チームは、カウンターパートと共に、調査項目の検討と調査票作成を行い、パイロット地域を管轄する4つの支局職員を対象とした研修を実施しました。参加者にとっては、携帯端末を使った目新しいデータ収集の方法を学び、顧客との対話を楽しみながら、水道サービスに関する顧客の要望に耳を傾け、水道メーター設置や正確な検針にかかる課題について考察する体験となりました。参加者は「（水道サービスを）良くしてくれるのなら、調査にはいくらでも協力するわよ」という顧客の声に励まされたり、怪しい者ではないかと疑いの目を向けられて門前払いをされそうになったりしながらも、慎重に調査票への入力や写真撮影を行っていました。2023年10月からは、パイロット地域の内、ひとつのブロック（顧客数646件）を対象とした調査を実施する予定です。

[i] プロジェクトの対象地は、アディスアベバ市内に新たに水道行政区として設けられる予定のキルコス地区です。プロジェクトではこの地区を11のブロックに分け、そのうち4つのブロック（総顧客数約6,000）をパイロット地域として優先的に活動を進めることにしました。2023年10月から顧客調査を開始する予定ですが、まずはK-1と名付けたブロック（総顧客数646）を対象とします。