北九州市上下水道局での本邦研修の実施

アディスアベバ上下水道公社から8名の研修生が来日し、2023年9月25日~10月6日に北九州市上下水道局の協力の下、本邦研修を実施しました。

研修初日は宿舎兼研修施設があるJICA九州でオリエンテーションを行いました。2日目は、研修が行われる北九州市上下水道局へバスで移動しました。バスによる移動の間、高速道路やトンネルを通過しましたが、多くの研修員にとっては初めての光景であり、大変興味深そうに周囲を見回しながら、高速道路は無料?有料?料金はいくらくらい?トンネルはどうやって作っているの?等の会話をしながら、研修生は興奮した様子でした。

北九州市上下水道局に到着後、研修員は民族衣装に身をまとい本邦研修の開講式が行われました。その後、研修員8名が研修の講師を務める北九州市上下水道局の職員の方々に対して、アディスアベバ上下水道局の紹介や彼らの通常業務、抱えている課題等を説明し、講師陣にアディスアベバ市の現状を知ってもらうよい機会となりました。

研修3日目以降は、いよいよ北九州市上下水道局職員の方々による講義が始まりました。研修のプログラムは、プロジェクトのテーマである無収水削減に関するものを中心に構成しました。北九州市上下水道局の概要から始まり、どのように無収水を低水準に維持しているか、水道管路施設をどのように効率的に維持管理しているか、効率的に維持管理するために検討しなければいけないことは何か、それらを検討するためにどのようなシステムを使用しているのか、水道料金をどのように請求して徴収しているか等について講義を受けました。各講義の質疑応答の時間では、研修生から積極的に質問があり、それに対して講師の方からも丁寧な説明を受けました。研修生はとにかく色々なことを吸収しようという姿勢が見受けられ、質問の多さは予定していたスケジュールを押すほどでしたが、研修を通じて彼らの理解がますます深まる様子が窺えました。

講義だけでなく研修場での実技研修もあり、さまざまな種類の管材を用いての管路の施工方法、漏水の修理方法、漏水の発見方法等について研修が行われました。これら実技研修では、研修員の中でも主に現場作業を担っている研修員が積極的に実技に取り組んでいました。また、研修員の一人は管路の施工について既に十分な知識及び技術を有していることを示し、講師からも一目置かれていました。漏水探知の実技では、漏水を見つける音聴棒や漏水探知機を使用しながら、どれが漏水による音なのかを講師に確認しながら研修を受けていました。普段は現場で作業を行わない研修員も実技を行い、現場での作業の大変さを理解する良い機会になったと思います。

研修員と講師間のコミュニケーションは、通訳を介しながらではあったものの、講師の方々が真摯に対応してくださったことが研修生たちにも伝わったようで、「北九州市上下水道局の講師の方々が本当に一つ一つの質問に対して包み隠さずに教えてくれて感謝している」というようなコメントが研修生からありました。

また、本研修では無収水削減に関する本邦技術を紹介する目的で、本邦技術のデモンストレーションの機会を設けました。水道管路に関するマッピングシステムや、水道管にどれくらいの量の水が流れているか計測する超音波流量計、電磁流量計の他、道路下に埋まっている水道管から漏水を見つける漏水探知機等について、技術を保有する日本の企業に実物を持参してもらい、その技術の紹介や実際にどのように使用するかをデモンストレーションしてもらいました。研修生は、どの技術にも大変興味を示しており、連絡先や価格等についても質問していたので、本邦企業とアディスアベバ上下水道局につながりが出来たことも成果の一つです。

研修の最終日には、今回の研修で学び経験したことも活かして、自分たちの仕事に対してどのように取り組むかについて発表をしてもらいました。プロジェクトでは無収水削減活動を行っており、研修生は皆、今の自分の役職等を踏まえた上で、無収水をいかに削減するかについて発表しました。また、講師の方々へお礼をしたいということで、エチオピアの伝統的な踊りも披露してくれました。研修生の発表の後には、北九州市上下水道局の職員の方々より、日本に来れなかったアディスアベバ上下水道局の職員にも北九州市で学んだことを共有し、無収水を削減してより良い水道事業運営を行って欲しいという期待の言葉が贈られました。

研修期間中の週末には買い物をし、博物館、海、夜景を見に行きました。本当にどこも最高だったようで、一生忘れない!こんな場所に連れてきてくれてありがとう!と言っていたことが印象的でした。

この研修は、研修生にとって本当に良い機会になったようで、どのように無収水を低水準に維持しているかを学ぶことができ、北九州市で学んだこと、経験したことを自分たちの仕事に活かしたいと言っていました。また、講師陣による講義内容や質疑応答のやりとり等から北九州市上下水道局の職員の方々の時間を守る、約束を守る、決められたルールには従うといった仕事への取り組み姿勢にも強く感銘を受け、これらがより良い水道事業に繋がるのだと感じたようで、エチオピアにおける個々人の仕事への取り組み姿勢との違いを実感していました。研修生の一人は、技術面だけでなく精神面や取組姿勢に関するトレーニングも実施してもらえると有難いというようなコメントがありました。

色々なことを学び経験する中、2週間が非常に濃くあっという間に過ぎてしまったと感じたようで、もっと日本にいて学んだり、色々な経験をしたいと皆口をそろえて言っていました。

帰国後は、北九州市上下水道局から学んだことを彼らの仕事に活かしてもらいたいと同時に、彼らの学んだことをアディスアベバ上下水道局の職員の方にも共有してもらいたいと思います。また、プロジェクトも続いているので、プロジェクト活動においても研修生8名にリーダーシップを発揮してもらい活動を行い、プロジェクト実施による成果が出ることを期待しています。

最後に、北九州市上下水道局の職員の皆様、通常業務でお忙しい中研修にご協力いただき誠にありがとうございました。

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研修生代表からの挨拶

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開講式後の集合写真

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講義中の様子

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講師に質問する研修生

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水道管布設に関する実技演習

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漏水修理に関する実技演習

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漏水探査に関する実技演習

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発表会に向けた準備をしている研修生

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閉講式の様子

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週末に観光し、エチオピアにはない海を楽しんでいる研修生