管接続技術研修の実施

プロジェクトの第1期に実施した管接合技術に係るベースライン調査の結果、AAWSAが抱える課題の一つとして、「AAWSA職員が基本的な知識、適切な施工方法を習得し、管布設工事、継手技術、管修理工事、給水管工事の品質向上を図ること」が確認されました。AAWSAの配管工等のテクニシャンの多くはこれまでに研修受講経験がなく、先輩職員によるOJTを経て業務経験を重ねています。そのため、基礎的な知識及び適切な施工方法の理解が不足しており、現在の作業手法が適切であるとは言い難い状況にあります。

AAWSA支局が担当する配水支管の多くはポリエチレン管が採用されています。また、本部が担当する送水管及び配水本管はダクタイル鋳鉄管やPVC管(塩ビ管)が現在は採用されておりますが、ポリエチレン管へ移行する方針にあり、新規工事においてはポリエチレン管が多く採用されています。しかしながら、配水支管は110mm以下の口径であることからコンプレッション継手による管接合を実施しております。大口径管においては、小規模工事の場合はAAWSA職員が布設工事を実施し、大規模工事の場合はプロジェクト施工業者が布設工事を行っており、AAWSA職員が実施する工事はダクタイル鋳鉄管であることが多く、ポリエチレン管の融着による工事は外部委託による工事であることから、ポリエチレン管の融着接合を実際に経験したAAWSA職員はいません。

以上のことから、基礎的な配管技術及び適切な施工方法の理解度を高めること、配管接続の技術、ポリエチレン管の融着技術の習得を目的として、2023年10月31日から11月2日にかけて、管接続技術研修を実施しました。研修対象者はAAWSA本部及びパイロット支局(4支局)の管接続業務を担当している部署である配水課、無収水課、顧客サービス課から選定され、AAWSAが今後も継続して管接続技術研修を実施し、より多くのテクニシャンに技術移転を行うことができるように、テクニシャンのみならず課長及びエンジニアクラスの職員を含む合計24名が研修対象者として選定されました。

座学研修は基礎知識及び施工手法技術向上を目的として、普段の業務で使用する単位・数量・単位変換、管材料の材質・性質の特徴、配管工具及び機械、管布設工事の品質管理・安全管理の講義を実施しました。上述したとおり研修の継続性を考慮し、研修講師は日本人専門家のみならずAAWSA職員も担当しました。講義では、アディスアベバ市の現状を列挙するとともに、適切な手法・他国の事例を紹介することで自身の現状・作業方法を客観的に判断できるよう工夫しました。基本的な知識を習得できる機会を提供することにより、「実際の自身の作業状況と比較することができ、自身の作業方法の問題点に気づくことができた」との声がありました。

また、管接続研修の直前に本邦研修を実施したことから、本邦研修参加者による発表の時間を設け、本邦研修にて学んだこと、感じたこと等を発表していただきました。本邦研修でもポリエチレン管の融着接合技術を実地研修にて習得しており、それらの経験も共有されました。さらに、日本の水道局のマネジメント体制、特に図面の管理状況、アセットマネジメント方法について日本でどのように管理しているのか詳細に説明していました。受講者からは、「日本ではどのような無収水対策が行われているのか?」、「日本とアディスアベバの違いは何なのか?」、「どのようにしたら日本のような体制にすることができるのか?」等多くの質問があり、活気づいた発表の場となりました。なお、本邦研修の参加者は今回の管接続技術研修では、実地研修の際に講師アシスタントとして研修準備から実地研修の講師補佐を担っていただきました。

実地研修では、管切断(パイプカッター、のこぎり)、管接合(接着剤、ゴム輪、フランジ、クランプ)、バット融着(HDPE管)、電気融着(HDPE管)、水圧試験、給水管接続について研修を行いました。AAWSA職員に対して新しい技術となるバット融着、電気融着だけでなく、現在実施している管接合技術について改めて研修を実施することにより、適切な施工技術を身に着けることができるようにしました。

バット融着、電気融着の実地研修では、すべての職員が初めての作業となることから、非常に積極的に参加し、施工方法を習得しました。「現在採用しているコンプレッション継手との違いは何か」、「バット融着と電気融着の違いは何か」等多くの質問がありました。また、「せっかく習得した技術を現場にて実施するべきだ」、「バット融着機等の研修にて紹介した機材をAAWSAにて調達するように働きかける」、との意見もありました。

研修後に実施したアンケートでは、「非常に有意義な研修であった」、「引き続きこの研修を続けていくべきだ」と好評でありました。また、「研修期間をもっと長くすべきだ」、「もっと多くの座学を取り入れたほうが良い」、「実地研修での機材が足りなかった」等の研修改善のための意見もあり、今後の研修実施に向けて改善点も確認できました。

AAWSAの管接続に関連するテクニシャンは、300人以上おり、なるべく多くの職員に対して本管接続技術研修を実施したい意向を示しております。本プロジェクトでは、AAWSAが継続して管接続技術研修を実施ししていけるようにサポートし、多くのAAWSA職員のスキルが向上するように引き続きプロジェクトを進めていきたいと思います。

業務にて使用する単位・単位変換に関する講義

業務にて使用する単位・単位変換に関する講義

配管工具に関する講義

配管工具に関する講義

本邦研修についての発表

本邦研修についての発表

管切断の実地研修

管切断の実地研修

管接続(コンプレッション継手)

管接続(コンプレッション継手)

バット融着の実技

バット融着の実技

バット融着の実技

バット融着の実技

電気融着の実地研修

電気融着の実地研修

給水管の水圧試験

給水管の水圧試験

研修修了

研修修了