ブロック構築のための活動について

アディスアベバ市の水道事業を担うアディスアベバ上下水道公社(以下、AAWSA)では、無収水量削減を担当する課が設置されており、給水区域内の漏水や盗水といった、AAWSAの収入につながらない水(無収水)の削減に努めています。
無収水量を削減するためには、①漏水や盗水といった目に見える無駄な水と、②水道メーターの精度や感度、顧客の支払い漏れなどからくる目に見えない無駄な水、この2つを削減していくことが必要です。このためには、まず、どのような無駄な水が発生しているのか、その原因を探っていくことが必要になるため、先述の①においては、老朽管路の更新や漏水修繕記録の保存、そして配水区域を何区画かに区切って、街全体ではなく小さな区域に絞って給水の管理をしていく「ブロック配水システム」の構築が効果的です。そして②では、顧客の情報を設置場所と登録書類、及び料金システム上のデータを照合・精査したうえで、水道メーターの老朽化や健全性の改善を行ない、メーターが計測できない量を減らしていくことが効果的です。
上記①及び②を効果的に削減するための活動を進めていくことが、このプロジェクトの役割となっています。それらを効果的に実施するためには、ブロック配水システムを実現させていくことが重要です。このために、本邦研修等で培った経験や北九州市の知見等を活用し、AAWSAの無駄になる水を削減⇒収入の増加⇒施設の更新や効果的なシステム運営⇒職員のモチベーションや技術の向上⇒収入の増加、という「正の連鎖」に繋げていかなくてはいけません。

図-1: アディスアベバ市Kirkosブロック内の11(K-1ブロックには小ブロックを設置)のブロック

図-1: アディスアベバ市Kirkosブロック内の11
    (K-1ブロックには小ブロックを設置)のブロック

ブロック配水システムでは、先の活動で設定されたKirkos地域の11のブロックに設置する「ブロック流量計」とブロックを形成することを目的とした「配水管路の布設」の両方を実施する必要があります。現状は、道路を管理する組織に対する掘削許可申請が認可されるまでに時間を必要としており、2023年11月末頃に許可予定で、12月からブロック流量計設置のための流量計室(コンクリート構造物)の工事を開始しています。そのため、事前にブロック流量計室を設置するための場所と配水管路布設の場所の両方を現地で確認・指示し、円滑に工事着手できるようにしました。

写真-1: 現地調査の様子(K-4ブロック流量計位置確認)

写真-1: 現地調査の様子(K-4ブロック流量計位置確認)

写真-2: 現地調査の様子(K-10ブロック流量計位置確認)

写真-2: 現地調査の様子(K-10ブロック流量計位置確認)

なお、この調査の途中、K-7ブロック内の井戸から8barという高圧で配水している区域(日本の基準では、最も負荷がかかる時の水圧を7.5barとしています)において配水管路の布設状況が悪い部分があり、漏水の疑いがありましたので、今後の調査と改善を行なう予定です。

写真-3: K-7ブロックに設置された井戸から伸びる配水管路の漏水疑い

写真-3: K-7ブロックに設置された井戸から伸びる配水管路の漏水疑い

写真-4: K-7ブロックに設置された井戸から伸びる配水管路の漏水疑い(轍があり何度も車に踏まれている)

写真-4: K-7ブロックに設置された井戸から伸びる配水管路の漏水疑い
      (轍があり何度も車に踏まれている)

写真-5: 漏水疑いのある管への配水圧は約8bar

写真-5: 漏水疑いのある管への配水圧は約8bar

また、11ブロックには優先順位が設けられており、K-1,5,7,11を最優先ブロック、K-2,8,10を次の優先ブロック、K-3,4,6を最後に整備するブロックとしています。この中で、特にK-1ブロックについては、2か所既存のブロック流量計を正常なものに交換すれば、現在どのような状況にあるのかを調べるための基礎状況調査をすぐに開始できる状況にあることが分かっていましたので、AAWSAと協力して、11月23日に交換を行い、活動の準備が整いました。加えて、現地を歩いて調べる中で、K-1ブロックの南側(以下、K-1S)は、2020年に新しく親メーター(ごく小さな区域の使用量を計るためのブロック流量計のようなもの)と子メーター(ここでは各戸の水道メーター)、及び水道管の構成で整備された区画があることが分かりました。この区画の水道設備が新しいことから、目に見える無駄な水はほぼなく、目に見えない無駄な水をある程度計測することが可能と判断し、10月23日から親メーターの検針(メーターを読むこと)を帰りの道中にほぼ毎日計測しました。この結果、K-1Sにおける目に見えない無駄な水の割合(無収水量率)を9月の検針データと比較した結果、約12%という結果となりました。ざっくりと「おそらく10%前後ではないか」と考えていたことから、おおよそ正解だったと考えています。今後は、この区画の継続的なモニタリングや料金収入情報の確認を実施しながら、この原因を探ることが求められます。

写真-6: K-1Sブロックに設置された親メーター

写真-6: K-1Sブロックに設置された親メーター

AAWSAの推計によると、給水区域内の無収水量率は約40%となっており、仮に目に見える無駄な水がなくなれば、10%前後の良い値も期待できるかもしれません。K-1ブロックにおける基礎状況調査をしっかり実施して結果を考察すれば成果は得られる、という感触があることから、早期に他の給水区にも調査対象を広げ、調査を継続することが重要です。