新規論文発表とタイ・スマートシティ・エクスポ２０２３

２０２３年１１月１６日、研究グループ１が新しい学術論文を国際誌に発表しました。この論文は、バンコクの都市鉄道ネットワークの拡張が、鉄道駅の利便性と周辺の不動産価値に与える影響を分析しています。まず、２０２６年までに整備される鉄道ネットワークが、各駅の重要性（ネットワーク中心性）にどんな影響を与えるか分析しています。この分析により、例えば、他駅への接続性が高い駅（例サイアム駅）、他路線へ乗り継ぎしやすい駅（例バンス―駅）など分類し、今は郊外にある駅が、将来はネットワークのハブ（重要な結節点）として機能する可能性を示唆しています。一方、不動産価値について、２０２１年時点の２０３駅周辺にある５０５棟のコンドミニアム（分譲マンション）価格や築年数など実データを集め、各鉄道駅の中心性が変わることで、不動産価値にどのような影響を与えるか統計分析しました。これらの結果を統合し、将来鉄道ネットワークが拡張することで、一極集中型から分散した副都心型都市へバンコクの都市構造が変わる場合に、郊外にあるサブセンター駅周辺の利便性が高まり、不動産価値が上昇することを推計しています。このような研究は、都市交通開発の政策がどのようなインパクトがあるか評価するとき、あるいは将来の政策シナリオを検討するのに役立つことが期待されます。

出展: Figure 4. The average listing price per square meter of the sample condominiums from　“Influence of Urban Railway Network Centrality on Residential Property Values in Bangkok.” by Varameth Vichiensan, Vasinee Wasuntarasook, Titipakorn Prakayaphun, Masanobu Kii, and Yoshitsugu Hayashi. Sustainability 15, no. 22 (Nov 16, 2023): 16013. https://doi.org/10.3390/su152216013, クリエイティブ・コモンズ・ライセンス（表示4.0 国際）.

２０２３年１１月２３日、タイから中部大博士課程に留学中のJICA長期研修員が、共著論文を国際誌に発表しました。バンコクで交通渋滞が発生する原因のひとつに、通学時間帯に親たちが子供たちを一斉に車で送迎することがあげられます。この論文は、その影響を定量的に示すためコンピュータシミュレーションモデルを使った分析をしています。次に、渋滞対策を考えるため、時間と空間を変化させたシナリオをいくつか設定し、どのような効果があるかシミュレーションしています。例えば、大人がラッシュアワーを避け早く通勤した場合、在宅勤務(Work from Home: WFH)した場合、子供も早く通学した場合、などのシナリオです。これらをシミュレーションモデルで予測し、渋滞や二酸化炭素排出量が、今(Business as Usual: BAU)と比較してどの程度減るのか推計しています。バンコク都庁は、大人の柔軟（フレクシブル）な働き方や在宅勤務を奨励する政策を掲げていますが、親たちの働き方と暮らし方は、子供たちの通学時間に左右されます。著者は、会社だけでなく学校にも配慮した包括的な政策が必要であることを提案しています。このように、著者は家庭全体の日常活動にも焦点をあて、人々の生活の質（Quality of Life :QOL）が向上するよう、時間と空間に柔軟性を与えた生活様式の変化を重視し、渋滞と二酸化炭素排出の削減対策の必要性を論じています。

出展: Figure 10. Comparison of CO2 emission between scenarios from “Identifying Impacts of School-Escorted Trips on Traffic Congestion and the Countermeasures in Bangkok: An Agent-Based Simulation Approach.” by Titipakorn Prakayaphun, Yoshitsugu Hayashi, Varameth Vichiensan, and Hiroyuki Takeshita. Sustainability 15, no. 23 (November 23, 2023): 16244. https://doi.org/10.3390/su152316244. クリエイティブ・コモンズ・ライセンス（表示4.0 国際）.

２０２３年１１月２２日から２４日、タイ・スマートシティ・エクスポ２０２３がバンコク市内クイーン・シリキット国際会議場で開催されました。そこで本プロジェクトは活動紹介ポスターを展示しました。タイ長期経済計画Thailand4.0にも位置付けられているスマートシティ開発とは、情報通信技術（ＩＣＴ）など新しい技術を活用し、人々が住みやすい都市をつくることです。例えば、移動手段モビリティ、環境、暮らしに役立つこと、エネルギー資源、公共サービスなどのデータをＩＣＴの力で効率的に運営して、住民へ便利なサービスを提供することです。タイ政府は３０の都市・地域をスマートシティと認定していますが、２０２３年中に１５都市をスマートシティに追加することを目指しています。このため、本展覧会はスマートシティ開発への投資促進を目的に、デジタル経済社会省(Ministry of Digital Economy and Society: MDES)、デジタル経済振興公社(Digital Economy Promotion Agency: DEPA)などが共催し、アセアン各国から関係者を招待しました。スマートシティ技術を開発する民間企業など多数が出展しました。