最終JCC会議の開催

最終JCC会議の開催

2024年2月1日、プロジェクトは第7回合同調整委員会(Joint Coordinating Committee:以下JCC)をバンコクで開催しました。JCCの議題は3点:(1)最終成果物であるスクンビットモデルを都市交通関連ステークホルダへ提案すること、(2)プロジェクト終了後にスクンビットモデルを普及するタイ側アクションプランに合意すること、(3)プロジェクト達成状況を自己評価することです。バンコク都庁(Bangkok Metropolitan Administration:以下BMA)、JICAなどから計56名がJCC会議に参加しました。同日BMAは、会議概要を公式Webサイトからタイ語でバンコク都民へ発信しました(外部リンク)。

画像

冒頭BMA事務次官補から、バンコク都知事がスクンビットモデルの提案内容に強い関心を持っていること、提案実行へ向けてBMA各部局へ指示を出している、との紹介があり、バンコク都民のQOL向上に資するため意見交換するよう参加者に投げかけました。続いて、JICAタイ事務所長が、コロナ禍を乗り越え多くの研究成果を出したプロジェクトメンバーに賞賛の辞が述べられ、ステークホルダを含む関係者が成果を活かしバンコク都市交通の課題を克服する期待を込めて挨拶しました。

画像

JICAタイ事務所長の開会挨拶

スクンビットモデルの提案セッションでは、林良嗣教授(中部大)がスクンビットモデルの概要を説明しました。キーメッセージは(1)コネクティビティ(接続性)、(2)シェアラビリティ(共有性)、(3)フレクシビリティ(柔軟性)であることを強調し、それらを実現する戦略的アクションを各研究者が発表しました。コネクティビティは大都市圏グランドデザイン提案で実現し、公共交通指向型開発(Transit Oriented Development: TOD)を推進し、副都心型バンコクへ転換することです。シェアラビリティはStreets-for-Allガイドラインが示す、街区内でライドシェアモビリティを活用したラストワンマイルサービスの普及と、人工知能AIや仮想現実VRを活用した歩きやすさ(Walkability)評価結果に基づき、全ての人々のための街路をデザインすることです。フレクシビリティは、QOL評価手法を主軸に、一人一人のQOLを最大化する、場所や時間が柔軟な生活様式と移動手段・経路を提案するアプリケーションQOL-MaaSを活用することです。これらを可視化する意思決定支援基盤として、デジタルアースシステムをプロジェクトは開発し、市民、研究者、政策立案者などが一緒に考えることを提案しました。参加したステークホルダからは、バンコクが抱える課題と合致した提案内容に賛同する点、解決方法の実行に向けて関連政策やガイドライン作りに活かすことができる、というコメントがありました。

画像

ステークホルダのコメント

議題2では、プロジェクト終了後の上位目標、スクンビットモデルのタイ国内普及を達成するため、タイ側の各研究機関がアクションプランを発表しました。タマサート大SIITとカセサート大は、各成果を応用し継続研究するため共同研究センターを各々設置し、政策提言と政策実務者たちとの対話を継続する計画を立案しました。一方、QOL評価調査を担うタマサート大建築計画学部は、プーケットで新たなプロジェクト研究資金を獲得しており、バンコク以外でQOL評価調査を実施する計画を発表しました。また、チュラロンコン大はAIによるQOL評価モデル開発を継続すること、バンコク将来シナリオをデザインした研究チームは、バンコク都包括計画を策定する有識者委員会のメンバーとなり、スクンビットモデルの普及と促進をする行動計画を立案しました。一方NECTECは、VRの応用研究を継続し、街路のWalkability評価を継続すること、プロジェクトメンバー機関と連携することを発表しました。

議題3について、日本側研究グループリーダが各成果をレビューし、全て達成したことを報告しました。今後の課題として、プロジェクト目標であるスクンビットモデルの提案について、どうやってBMAが正式に承認するのか、政策など公式文書に活かすことが課題として指摘されました。プロジェクトメンバーからは、粘り強くBMA等と活用に向けた対話を継続することが対策としてあげられました。また、都知事が推奨したスクンビットモデル活用についてのワークショップ等をBMA等と連携して開催する具体案もあげられました。

閉会の挨拶で、JICA本部の本プロジェクト担当次長から3点コメントがありました:(1)提案したスクンビットモデルの実行を目指し、ステークホルダの意見を反映した具体的なハンドブックや行動計画をまとめること、(2)JICAが実施中の関連プロジェクトと密に連携し、タイ側メンバーが立案した将来活動にステークホルダを巻き込むこと、(3)JICAの財産(アセット)であるプロジェクト人材が、世界中に広がる人的ネットワークを活用し、QOLを軸とする都市交通計画と開発コンセプトを、ASEANを含む世界へ発信することです。最後に林教授が、プロジェクト創設の“父”であるSIITタナルック教授に会えたこと、安藤業務調整員のプロジェクト実施プロセス上の助言、プロジェクト活動に多大な貢献した日本とタイの若手研究者達へ、感謝の言葉を述べJCC会議を締めくくりました。