巡視艇の運航能力向上(2022年3度目の現地派遣)-(ロープワーク・消火・曳航・漂流者救助訓練での習得状況にかかる評価を実施)-

2022年11月16日~12月6日、ジブチ沿岸警備隊(DCG)を対象とした巡視艇運航能力向上を図る活動(成果2関連)のために、JICA短期専門家(日本海難防止協会)の第9次派遣が実施されました。

今回の派遣では、巡視艇乗組員9名(1名欠席)に対して、これまで指導したロープワーク、消火、曳航、漂流者救助の知識・技術の習得状況の評価を実施しました。

ロープワーク

船の係留や曳航(車両でいう牽引)などの様々な場面で用いられ、船を運航するうえで必要不可欠な基本技術として、もやい結び・巻き結び・二回り二結び・本結び・二重つなぎ・コイル巻きもやい結びを訓練しました。正しく作れているか、結び目はしっかり締まっているか、手際よく結ぶことができるかなど細かく確認を行い、評価しました。残念ながら9名のうち2名は3回チャレンジするも合格点に到達せず、次回派遣時に再度評価をすることになりました。

消火訓練

より実践的な経験を積むために、小型船で火災が発生したと想定し巡視艇から放水消火をするシナリオで訓練を行いました。消火活動に必要な資器材の準備、放水ホースの持ち方、構え方、火災船への接近方法、情報共有など、これまで積み重ねてきた技術を評価し、習得状況を確認しました。特に目を見張って向上したのは、ガソリンポンプの圧力調整担当者と放水者との連携でした。無線連絡では、明確な指示で消火活動がスムーズになり、的確に火災船に放水するまでの時間が短縮されました。

曳航訓練

プレジャーボートが航行不能になり巡視艇で曳航救助するというシナリオで、約40mの曳航用ロープ(曳航索)などの資器材の準備、その設定方法、巡視艇の増速・変針要領、チーム内の情報共有などの評価を行い、技術の習得状況を確認しました。特に曳航索の引き渡しが格段にスムーズになり、曳航を開始できるまでの時間も短縮されました。海上では船が波により揺れることも多く、作業時間の短縮は乗組員の安全に繋がります。操船技術と巡視艇乗組員同士のコミュニケーション力の改善により、曳航船と被曳航船との間隔、曳航索の張力など意識して曳航する技術も向上しています。

漂流者救助訓練

1名の海上漂流者を救助するために、ネット(ロープワークで学んだ技術により作成した網)を使用して巡視艇に揚収するシナリオで、資器材の準備、救助用ネットの設定方法、漂流者の引き上げ要領、漂流者への接近方法などの評価を行い、技術の習得状況を確認しました。これまでに繰り返し訓練を実施したことにより、救助用ネットを舷側(船の側面)へ設置する際、おもりの取り付け、舷側への固定など、巡視艇乗組員同士の連携、手際のよい救助用ネットの取り扱いにより設置時間が格段に短縮しました。訓練中参加者全員の一体感も感じることができました。さらに、救助用ネット引き上げでは、漂流者を救助している潜水士と巡視艇乗組員の絶妙なコンビネーションも見られ、漂流者発見から、安全かつ素早くを救助できるようになりました。

自主訓練

DCG巡視艇乗組員は、前回の派遣後(2022年5月)から、定期的に自主訓練(ロープワーク・消火訓練・曳航訓練・漂流者救助訓練)を行い、技術の維持・研鑽に努めています。前回派遣時の技術と比較して技術の向上が見られ、各訓練とも自信をもって取り組む姿が見られました。

展示訓練と訓練生のこれから

これまで積み重ねてきた訓練と自主訓練の成果をDCGアダワ副長官をはじめ、DCG・日本側関係者に披露しました。展示訓練後、アダワ副長官は「訓練による技術の習得が分かり、高い評価を与える」旨、講評されました。

今後、航海訓練の知識・技術の認定を受けた訓練生はDCGの他の職員への指導方法の研修が予定され、DCGの自律的な発展に繋がるよう取り組んでいきます。

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ロープワーク仕上がり確認

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ロープワーク(全体の様子)

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消火訓練

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曳航索引き渡し訓練

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曳航訓練

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救助用ネット確認

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漂流者救助用訓練

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筆記試験

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展示訓練(観覧様子DCG・日本側関係者)

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修了式