DCGの巡視艇維持管理・船外機特殊工具管理についての指導(2022年3度目の現地派遣)

2022年11月14日~12月6日の間に実施したJICA短期専門家(日本海難防止協会)の第9次派遣では、ジブチ沿岸警備隊(DCG)を対象とした運航能力向上にかかる訓練に加え、JICAが供与した巡視艇の予備品や船外機(小型艇のエンジン)の整備用特殊工具の適切な保管・管理(成果3関連)にかかる指導についても実施されました。
“整理整頓”は日常生活だけでなく仕事を効率的に進めるための重要なキーワードですが、実は日本の技術協力における得意分野でもあります。

巡視艇予備品倉庫整備

巡視艇の構造は、大きく船体部・機関部・電気部の3つに分けられます。予備品も船のそれぞれの箇所に対して専用の部品となっているので、同様に3つに分けることで効率的な管理が可能となります。
予備品管理を正確に継続していくために、JICA短期専門家は、倉庫内を以下の通り3つのゾーンに分けて予備品を保管し、使用状況を台帳に記録するという2点を提案しました。

1.予備品台帳作成

  • 台帳左側:予備品リスト 船体部・機関部・電気部の3つの章に分ける。
  • 台帳右側:在庫持ち出し時に、日付、在庫数、使用者の名前、管理者名前を記入する。

2.倉庫の内の保管方法を3つのゾーンに分ける。

  • Hゾーン:Hull Part(船体部)の頭文字から
  • Mゾーン:Machinery Part(機関部)の頭文字から
  • Eゾーン:Electric Part(電気部)の頭文字から

具体的にはまず、3つの部分の予備品リストを収集し、責任者に予備品台帳の作り方・使い方を説明し、納得した上で、予備品リストをスキャナーでデータ保存し、予備品台帳を製作しました。

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予備品台帳提案

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予備品リスト収集(船体部・機関部・電気部)

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予備品台帳作り方・使い方説明

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予備品リストデータ保存(船体部・機関部・電気部に分けて保存)

DCGの責任者及び担当者はこれまで、予備品倉庫の適切な整備方法を模索してきましたが、3つの部の予備品を混在して保管したまま解決の糸口を見つけることができていませんでした。JICA短期専門家から今回新しい提案を受けた彼らは、内容を速やかに理解し、混在していた予備品を2日間で3つのゾーン別に仕分け、実践を通して予備品の格納方法について学びました。さらに、予備品台帳を元に、3つのゾーンごとに実際に予備品の在庫を確認し、在庫数の全体を把握することができました。

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予備品倉庫仕分け説明(船体部・機関部・電気部)

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倉庫責任者・担当者と共に倉庫整備

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予備品台帳完成

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予備品台帳引き渡し

船外機用特殊工具

船外機整備をするための特殊工具92品が本プロジェクトにて供与されました。この特殊工具はジブチでは調達できない物で、DCGが今後自ら船外機を維持管理していく上での必需品となります。小さい部品が含まれることや品数が多いことから、適切に管理し紛失を防ぐことが課題となっていました。
その管理のために専用の収納庫を購入予定でしたが、適切な既製品は見つからず、DCG自らパネルやフックを用いて作成することにしました。まず、特殊工具収納庫の設置場所を決定し、木製パネルで製作し、模造紙を収納庫と同じ寸法にとり、その上に供与された92品の配置場所を確定していきました。

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特殊工具収納庫設置場所検討

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特殊工具収納庫完成

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特殊工具配置決め

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特殊工具仮設置

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特殊工具設置状況

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特殊工具設置済み

さらに、「使用したら必ず元の場所に戻す。」をテーマに、特殊工具の形をパネルにかたどり、特殊工具の名前・型番を表示した名札を設置し、一目で元に戻す場所を判別できるように工夫しています。
この特殊工具についても専用の使用台帳を作りました。日付、使用者の名前記入、返却時のサイン欄を設け確実に返却できるように工夫しています。貸出中の工具がすぐにわかるので、期限内に返却されなかった場合には迅速に捜索にかかることができ、紛失防止につながります。

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各特殊工具名前・型番札作成

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各特殊工具名前・型番札設置

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特殊工具管理台帳完成

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特殊工具管理台帳引き渡し

巡視艇・船外機の維持管理について

備品・工具の適切な保管・管理は安全かつ効率的な船舶の運用に不可欠な船舶の維持管理の基本です。これからはDCGの担当者が責任をもって、これら物品を自立して保管・管理し、巡視艇や小型艇の維持管理が的確に実施されるように引き続き確認と指導を行っていきます。
本件技術協力は、ジブチ沿岸警備隊の能力向上を通じて、ジブチ領海、アデン湾及びバブ・エル・マンデブ海峡における治安維持・安全確保に貢献するものです。