全人教育フェアを開催しました

2023年9月、プロジェクトのパイロット３地区それぞれで「全人教育フェア」を開催しました。このプロジェクトでいう全人教育とは、マレーシアの地域社会の文脈と文化に基づいて主体性や協調性など子どもの潜在的な力を伸ばし、バランスの取れた個人を形成する全人的な学校教育を指します。今回のイベントは、MAKMur活動^※をパイロット校に導入して約1年の間に子どもの主体性・協調性等を育んできた取り組みを区内の他校へ理解を広めるとともに、保護者・地域の方々からの理解を得るための足掛かりとして実施したものです。参加者は計4200人を超え、パイロット校以外の小学校及び幼稚園の教職員や児童、児童の保護者（PTA代表等）などが参加するだけでなく、クアラルンプール日本人学校の先生方やJICA海外協力隊員も訪れる賑やかなイベントとなりました。

フェアでは、パイロット校の児童による展示、発表、模擬店などの他、様々な企画が実施されました。また、地区ごとにパイロット校と地区教育局が協力して企画から始めたため、地区ごとに興味深い特色が見られました。例えばPasir Mas地区では、伝統衣装を展示・紹介する企画や地域の伝統的な舞踊の披露、パイロット校の活動詳細やその効果が写真とともに展示されるとともに、活動紹介資料が配布されました。当日は、MAKMur活動の理解を促進する目的で、招待された校長向けの授業見学も実施され、児童の積極的な参加を重視した朝の会等が紹介されました。

また、Bentong地区では、児童による司会進行のもと、先住民系学校の児童による民族舞踊や遊びの紹介、参加者に向けたクイズ大会等が催されました。その他、催しに対する参加者からのフィードバック・ブースやアラビア文字の体験ブース等もあり、マレーシアの公立校は基本的に民族別に分かれているのですが、先住民系、中華系、インド系など様々な参加者が交流する姿が見られ、多くの児童にとって日頃はあまり見られない民族間交流も行われました。

Sentul地区では、パイロット校による活動紹介に幼稚園児も加わり、園児とフェア参加者間の交流が見られました。また、同地区では、フェアに参加した小学校の校長先生等は地区教育局からMAKMur活動に関するブリーフィングを受けた後、学級会の様子や自発的に掃除を行う児童の様子を見学しました。その後、校長等と地区教育局の間での「振り返り」の会が設けられ、見学したMAKMur活動に係る活発な意見交換が行われました。また、同地区のフェアでは、パイロット校教員は日本人学校の教員と直接交流する機会にも恵まれ、日本の学校での取組みについて直接話を聞くことが出来たのも各校にとって良い刺激となりました。

参加した小学校の校長からは、「教員の指示なしに子どもが楽しそうに活動している」、「活動に役割分担があり、全員参加していると感じた」、「朝の会は児童のモチベーションを高めると思う」といった感想とともに「教室に児童個人の目標や作品を掲示できることを知った」などの声があがりました。また、保護者からは「家で子どもからMAKMur活動について聞いている。学級会の司会をすることにワクワクすると言っていた」、「かつては子どもが自分でカフェテリアを清掃することなかった。他の保護者もこの様子（児童による掃除の様子）を見れば感動するだろう」、「MAKMur活動に取組むことにより、児童は社会に出る準備ができる」、「早くMAKMur活動を自分の子どもの学校でも実施して欲しい」といった感想が聞かれました。さらには、フェアに参加した大学生からは、「自分が子どもの頃にも、MAKMurのような子ども自身が中心になって動く活動があると良かった」と主体的な子どもの様子に喜ぶコメントが共有されました。これまでMAKMur活動を知らなかった方にまで、同活動が子どもの主体性を引き出して高めようとしていることが伝わった証だと思われます。参加して下さった多くの方に感謝するとともに、MAKMur活動の定着・普及に向け、関係者一同より一層意欲的になっています。

※特別活動を始めとする日本の全人的な教育の実践にヒントを得た教育的要素を含む活動