【医師】総合診療研修プログラムの第二回責任者連携協議会が開催されました

2024年3月6日、オルホン県地域診断治療センター(RDTC)にて、総合診療研修プログラムの第二回責任者連携協議会が開催されました。

モンゴル保健省は、現在総合診療研修を全国で実施できるようになることを目指しています。前フェーズ以降、ウランバートル市内の複数の病院や、全国で5ヵ所のRDTCにおいて総合診療研修が開始されていましたが、2023年以降はさらに地域の県病院なども研修病院として認定され、総合診療研修がさらに展開されています。

2023年6月に第一回責任者連携協議会が保健省で開催され、すでに総合診療研修を開始している施設と新規に研修を開始する施設との間で情報共有が行われました。新規に研修を開始する施設から研修の具体的な運営方法などについて質問があり、活発な意見交換が行われましたが、研修開始にあたり各施設が抱える課題は様々で、一度の会議で各施設の課題すべてを解決することは難しい面もありました。また、実際に研修を開始してから見えてくる課題も多くありました。

そこで今回、本プロジェクトのモデルサイトとして2018年から総合診療研修を続けているオルホン県RDTCにて本協議会が開催され、施設間の意見交換とともに、オルホン県RDTCで研修が実施されている様子を視察することで、より深く理解することが企画されました。全国の研修病院の指導医・担当者や、保健省・地域保健局の担当者、また実際に総合診療研修を受けている研修医も参加し、約50名が集まりました。

保健開発センターやオルホン県RDTCの責任者からの挨拶に始まり、これまでのオルホン県RDTCでの総合診療研修の取り組みについて紹介がありました。特に、研修を成功させるためには病院のすべてのスタッフに対して総合診療研修の必要性を説明し理解してもらう必要があること、専属の研修担当者を配置し研修医のサポートを行うこと、行政機関との密な連携が重要であることなどが強調されました。そして、2018年から研修を続けてきた結果、研修医と指導医との間で診療について多くの議論が生まれ、お互いに学び合うことで病院全体としての診療の質の向上に繋がっていることが共有されました。

その後、研修医が症例プレゼンテーションを行うカンファレンスの実演、医学論文の抄読会の実演、さらに病棟での研修医指導の様子の視察が行われました。参加者からは、今後実際に自施設で研修医の指導を行うにあたり、具体的なカンファレンスの運営方法や留意することなどについて活発な質疑応答が行われました。

井上チーフアドバイザーからは、指導医が研修医を教えるだけではなく、研修医とお互いに学び合っていく姿勢の重要性や、同じ研修カリキュラムを共有する他施設と連携しながら総合診療研修を展開していくことの有用性などについてアドバイスが行われました。
また、同行した堀米医師から、日本の卒後臨床研修制度の実例について紹介が行われました。

最後に、総合診療研修を開始している研修医・指導医から研修の感想が共有されました。研修医からは、「すぐに専門科に進まずに総合診療研修を経験したことで、臨床の幅広いケースに自信を持って対応できるようになった」といった感想が多く聞かれ、地域に役立つ医師を育成するという総合診療研修の目標が達成できていることがわかりました。指導医からは、「研修を開始するまではどうすれば良いか不安だったが、やりながらわかってきたことがたくさんあった」「研修医を教育するとともに自分たちも研修医からたくさん勉強させてもらっていて、研修医がいることでお互いに医師として向上できている」といった感想が聞かれ、研修医を受け入れ教育することは医療の質の向上につながり、病院にとっても、そして地域住民にとっても有益であるという考えが改めて共有されました。参加者たちからは、「研修開始にあたり、わからないことや困ったことがあったが、これまで保健省・保健開発センターやオルホン県RDTCの担当者に相談すると、いつもすぐに丁寧に教えてくれた。そのことにまず感謝するとともに、今回もこのような素晴らしい情報共有の場を作ってくれたことに感謝します」とコメントがありました。

これから新規に研修を開始する施設は新たな課題にも直面すると思いますが、今後も同様の連携協議会を継続して実施し、情報共有とともに施設間の連携を深めていくことが、総合診療研修において生じる課題の解決のみならず、モンゴル国内の医療のさらなる発展に寄与するものと考えています。参加者からのコメントにあったように、すでにモンゴル国内の医療資源を十分に活用し、自分たちで助け合い、成長しあえる環境が成熟してきていることは、技術協力プロジェクトの役割を終えつつあることの証でもあります。残された活動期間は1年を切りましたが、成果を継続して活用していただけるよう、引続き支援を継続していきます。

モンゴル国 医師及び看護師の卒後研修強化プロジェクト
チーフアドバイザー 井上信明
          堀米顕久

研修医の症例プレゼンテーションに対する質疑応答

研修医の症例プレゼンテーションに対する質疑応答

病棟における研修医指導の様子の視察

病棟における研修医指導の様子の視察

最後に各研修医から総合診療研修の感想が述べられた

最後に各研修医から総合診療研修の感想が述べられた