保健省主導による非感染性疾患(NCDs)研修のためのファシリテーター養成開始

ニカラグア政府は国家保健政策として、“プライマリ・ヘルス・ケア”の基礎となる「家庭・地域保健モデル」を導入しています。このモデルは家族や地域の健康問題を医療従事者だけに任せるのではなく、その地域を一番よく知る住民が、そこの担当医師や看護師とチームを作って、主体的に保健活動を進めながら、家族ぐるみ、地域ぐるみで健康の維持増進を目指すものです。プロジェクトでは、母と子の健康について、この「家庭・地域保健モデル」を展開する仕組みおよび、それに携わる人材を強化するための研修を実施してきました。今後は、この強化手法の全国普及を目指しています。また、これまで母子保健分野で確立した「家庭・地域保健モデル」の強化手法を、次にNCDs対策に適用させた形で実践していくことが求められています。このNCDs対策研修は母子保健研修と同様にカスケード方式で進められます。その第1ステップは、 保健省による“県保健管区レベルのNCDs研修ファシリテーター”の養成研修です。ここで養成されたファシリテーターが、第2ステップで、自身の同僚のほか、県保健管区が管轄する各市支所のNCDs対策担当職員に対して研修を行い“市支所レベルの研修ファシリテーター”を養成します。そして、この研修受講者が、第3(最終)ステップで、市支所の同僚、および各市支所が管轄する保健所・保健センターの医療従事者に対して、NCDs対策とサービス強化のための研修を実施していきます。

チョンタレス県保健管区とセラヤ・セントラル保健管区では、母子保健分野における「家庭・地域保健モデル」の強化手法として、研修やその後のモニタリングなどの仕組みが、既に定着しています。両保健管区は、2023年8月1日と2日に合同で、NCDs対策として、疾患の早期発見のためのスクリーニングと確実な患者の捕捉について、また、糖尿病や高血圧症患者への適切な薬剤投与と生活指導など、医療サービス強化のためのカスケード研修を実施しました。第1ステップの研修は、チョンタレス県保健管区の講堂が会場になりました。この研修の受講生は各保健管区の「NCDs委員会」のメンバー10名で、講師は、保健省の家庭・地域保健モデル課の課長、保健プログラム担当者、評価担当者のほか、この研修教材の作成に携わった、両保健管区のNCDs委員会メンバー4名が務めました。

NCDsに関して保健省からプロジェクトに実施支援を要望された研修科目は、「1. NCDsスクリーニング」「2. NCDs患者管理台帳」「3. 高血圧症」「4. 糖尿病」「5. ヘルスプロモーション」で、各科目は、①事前テスト、②講義、③ケーススタディ、④事後テストで構成されています。また、「家庭・地域保健モデル」に関して母子保健研修と重複する講義、例えば、「基本的な家庭・地域保健活動」はここでは割愛されています。

講師らは、受講者たちの学習を助けるための、テキスト、事前・事後テスト、ケーススタディ、講義用パワーポイント等の研修教材を作成しました。また、解説に使う用語の難易度を慎重に見直すなどの事前準備ののち、講義に臨みました。

研修の導入部分で、ファシリテーターの役割や研修全体の進め方を解説し、続いて、ヘルスプロモーション、NCDsスクリーニング、NCDs患者情報の管理等の方法論、そして、ニカラグアで罹患者の多いNCDsの中から「高血圧症」と「糖尿病」に係る専門基礎知識強化のための講義が行われました。研修終了時、保健省の家庭・地域保健モデル課の課長は「この手法は国内すべての県保健管区に拡大できるものである」と述べました。

参加者には、研修テキスト(印刷版とデジタル版)セットのほか、研修プログラム、各テーマの事前・事後テスト等の教材が配布されました。

今後、第2、第3ステップへと進んでいく予定です。

研修会場(チョンタレス県保健管区講堂)

研修会場(チョンタレス県保健管区講堂)

NCDsのケーススタディにグループワークで取り組む

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