熟練分娩介助者研修(レディーへルスビジター*1および准助産師対象*2)の実施

パキスタンのパンジャブ州では、一次医療施設である基礎保健ユニット(BHU)で、レディーヘルスビジター(LHV)と准助産師が、分娩介助や妊婦健診といった妊産婦・新生児ケアを提供しています。彼女たちは、限られた資源で最善のケアを提供しようと努めているものの、教育背景の違いや現任研修の機会の不均衡などより、能力にばらつきがあり、妊産婦・新生児死亡に直接関わる、産科異常出血や新生児仮死への対応など基礎的緊急産科ケア能力の向上が喫緊の課題となっています。

プロジェクト実施のカウンターパート機関である、パンジャブ州保健省一次二次保健ケア局は、最も地域住民に近い保健医療施設であるBHUでの施設分娩を推奨しており、BHUの24時間営業化や超音波診断装置の設置などの医療サービスの強化を進めています。他方、一次医療施設に従事する熟練分娩介助者のケア提供能力については、カウンターパートも強化の必要性を認識しているものの、体系的な現任研修は今のところ行われていません。

プロジェクトでは、プライマリレベルの母子保健サービスの質の向上、特に熟練分娩介助者であるLHVと准助産師の能力強化をめざし、2023年8月から熟練分娩介助者研修を開始し、11月末までに対象地域の228名が研修を受講することを目指しています。

研修計画と講義資料作成にあたっては、南パンジャブ地域唯一の教育病院であるムルタン県のニシタール医科大学病院産婦人科の協力を得て、7月にトレーナー養成研修(TOT)を行い、プロジェクト対象3県(ムルタン県、カネワル県、ベハリ県)の二次医療施設の産婦人科医および小児科医を講師として養成しました。

熟練分娩介助者研修では、講義による最新の知見の伝達や基本的事項の復習に加え、新生児モデルを使用した新生児蘇生法、母体モデルや模擬血液を使用した産科異常出血への対応など「演習」に重きを置いています。また搬送先である二次三次医療施設との関係構築を目指して、講師陣にはできるだけ相互交流式に進めるように依頼しました。これまでのところ、講師・参加者間で活発にコミュニケーションが取られ、講師が丁寧に手技を指導する様子、参加者が積極的に質問する様子が見られ、充実した研修を行うことができています。

プロジェクトでは、今後も更なる知識や手技の定着を目指し、2024年には研修講師によるBHUへのフォローアップ訪問、LHVと准助産師を対象としたリフレッシャー研修を計画しています。

*1 LHVは、高校卒業後に2年間の専門教育を受けて就業している者。近年、大学教育化が進み4年制の学士課程を卒業している者もいる。
*2 准助産師は、高校卒業後に2年間の専門教育を受け、かつてCommunity Midwifeとして地域で活動していた。施設分娩推進の流れを受けてCommunity Midwife制度自体は廃止されたが、人材不足のため一部のCommunity Midwife は准助産師としてBHUに雇用されている。

妊娠期の異常についての講義

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産科異常出血への対応(出血量の推定方法)

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新生児蘇生手技の演習

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外来病棟での超音波診断に関する演習

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