プロジェクトニュース第3号(林業モニタリングへのリモートセンシング情報の活用)

パプアニューギニア(PNG)国における林業活動の多くは天然林において行われており、商用樹種のみを択伐(抜き切り)することとなっています。天然林における林業活動はLogging Code of Practice(LCoP)という規範に基づいて行う必要があり、それによって環境への負荷が低い林業が実現されるものとされています。LCoPでは、施業計画、木材伐採、林道の建設と維持、天然再生、森林の健全性など様々な事項について基準が定められており、これらが守られていることをPNG森林公社の職員が現地モニタリングによって確認しています。
しかし林業活動が行われる作業単位(Set-up)は約150 ヘクタール(≒東京ドーム32個分)と広大で、かつ森林内であるため、現地踏査によって隅々までをモニタリングすることは大変困難です。よって、衛星画像やドローン画像等のリモートセンシング情報、あるいはその他のGIS(地理情報システム)情報によってSet-upを俯瞰的に眺め、モニタリングの補助とする技術を開発することは、モニタリングの精度を高めるために大変有用となります。これらの情報によって観測できる可能性のあるモニタリング項目は、例えば以下のようなものが挙げられます。

モニタリング項目 基準
林道の幅 40 m以下
土場(材木を一時的に集める場所)の数 1 Set-upあたり3つ以下
土場の面積 0.25 ヘクタール以下
搬出道の幅 6 m以下
搬出道の総面積 Set-upの総面積の10%以下
伐採方法 択伐であること
河川からの距離 一定距離内伐採禁止
伐採制限区域 30度以上の傾斜地では伐採禁止

2023年8月31日にPNG国最西端西セピック州にある、プロジェクトサイトの一つである林業コンセッション(Amanab 1-4)を訪れ、2022年10月に伐採が行われた地区でリモートセンシング情報と林業現場の様子とを比較しました。ドローン画像・衛星画像ともに林道(幅40 m)を確認できました。一方、搬出道(幅6m)や河川(幅15 m)についてはドローン画像・衛星画像ともに明瞭ではありませんでした。これは搬出道や河川の上空が、周囲の樹木の枝や葉によって覆われていることが原因だと考えられます。一方、衛星画像の解析によって直近3年間の森林減少を検知したデータによると、林道建設に伴う伐採範囲を始め、択伐によって生じた樹木の消失も確認できることが分かりました。今後のプロジェクト活動において、これらの情報に基づいてモニタリングの補助とするような技術の開発に取り組みます。

搬出道の様子

搬出道の様子

ドローン画像に林道・搬出道の踏査記録や河川GISデータを重ねた図

ドローン画像に林道・搬出道の踏査記録や河川GISデータを重ねた図

衛星画像(Planet)による見え方

衛星画像(Planet)による見え方

ドローン画像に直近3年間の森林減少を検知したデータを重ねた図

ドローン画像に直近3年間の森林減少を検知したデータを重ねた図