農業普及員向け栽培技術テキストが完成しました

プロジェクトでは対象地域農業普及員の栽培指導能力向上と対象農協の安全作物生産能力向上を目的として、いくつかの栽培技術の現地指導を実施しています。特に「太陽熱土壌消毒法」と「堆肥作成法」は多くの農家に広く受け入れられてきました。国家農業普及センター(NAEC;National Agricultural Extension Center)は国内におけるこれら二つの技術の普及と活用を目指し、農業普及員向け栽培技術テキストの作成を決定しました。

「太陽熱土壌消毒法」の原理は単純です。畑に畝を立て、それを透明ビニールシートで3週間程度被覆すると太陽放射によって土壌が加熱されます。この処理は土壌中の害虫、病原菌、そして雑草種子を死滅させる防除効果が極めて高く、作物の収量増加が期待できます。日本では1970年代から研究が始まり、現在では有機農業の基本的な技術となっています。ベトナムの農家には本技術が浸透していませんが、プロジェクトによる実証試験の結果、ベトナムの環境条件下でも有効であることが確認されました。

「堆肥作成法」とは、家畜糞、野菜残渣、落葉などの有機物を微生物の働きにより発酵・分解して堆肥を作る方法です。出来上がった堆肥を畑に鋤き込むと土壌の通気性や保水性が高まり、野菜が良好に生育します。堆肥作成はベトナムでもよく知られた技術ですが、プロジェクトで普及を図っている作成法には二つの大きな特徴があります。市販のEM菌を使用する代わりに容易に安価で入手できるアルコール発酵酵母を使用し、また日本のボカシ肥料技術を応用して前処理段階で米ぬかを酵母で分解し、その分解物を堆肥化の原料とすることで堆肥発酵が促進され、安価で良質な堆肥を製造することができます。プロジェクトではその堆肥効果を確認しました。

2023 年 12 月 17 日、Nam Dinh省において農業普及員や農家を対象に栽培技術紹介ワークショップを開催し、栽培技術テキスト草案の説明と意見交換を行いました。翌18日には栽培技術テキスト評議会を開催し、ベトナム国内関連機関の農業専門家3名から建設的なコメントを得ました。それらコメントを元に再編作業を行い、今般、正式にテキスト発刊の承認に至りました。

テキストはベトナム語で作成され、総頁数43頁、前半が太陽熱土壌消毒法テキスト、後半が堆肥作成法テキストとなっています。各テキストの構成は、概要、利点、原理、作業工程、注意点、先行プロジェクトでの実施例、文献からなっていて、多忙な農業普及員が原理や要点を理解しつつ、作業工程をわかりやすく農家へ説明できるよう工夫されています。

テキストは全国63省の農業普及局へ配布され、同時にNAECホームページにも掲載されています。農業普及の現場においてテキストが広く活用されることを期待します。

NAECホームページ:Trung tâm Khuyến nông Quốc Gia (khuyennongvn.gov.vn)
テキスト掲載ページ:khu-trung-dat.pdf (khuyennongvn.gov.vn)

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栽培技術テキストの内容を対象省の農業普及員や農協メンバーと共有するワークショップ開催の様子(Nam Dinh省、2023年12月17日)

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栽培技術テキスト評議会

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完成した栽培技術テキストは全国の普及センターに配布される予定。