グローバル人材の定義

青年海外協力隊経験者の採用や民間連携ボランティア制度への関心から、当社が本格的にJICAボランティア事業の情報収集を始めたのは昨年のことです。8月にはJICA駒ヶ根で青年海外協力隊の派遣前訓練の様子を、12月にはマラウイで青年海外協力隊員の活動現場を見学させていただいています。そうしたご縁をきっかけに、今年に入って立て続けに3人の青年海外協力隊経験者を採用するに至ったほか、民間連携ボランティアについても派遣に向けた話を進めさせていただいているところです。

　当社はITサービスをはじめとする事業をグローバルに展開する企業ですので、求める人材も、いわゆるグローバルなマインドを持つ人たちです。社員の9割は留学などなんらかの形で海外を経験している者が占めており、当然、青年海外協力隊経験者も我々のターゲットに含まれます。

　｢グローバル人材｣という言葉の意味についてはさまざまな説明がなされていますが、当社ではこれを｢多様性を受け入れることができ、かつ日本人としてのクオリティーを守れる人｣と捉えています。海外とかかわるビジネスでは、言語や文化、価値観などの違いを理解し、それに対応できる力、つまり｢多様性を受け入れる力｣が不可欠なのは当然のことです。しかし、海外の人に合わせ過ぎてもいけない。日本人は海外から｢仕事のクオリティーが高い｣という確かな信頼を獲得しているのだから、日本企業としてビジネスを行う際には、いわばこの｢日本人ブランド｣のすばらしさを理解し、それを生かそうという姿勢を持つことが重要となってくるのです。

　｢グローバル人材｣をこのように捉えたとき、それは決して｢教育｣だけによって養成することはできません。というのも、外国の言語や文化は人から聞いて教わることができますが、日本の良さというのは、実際に異文化社会に入り込み、そこでサバイバルする経験のなかで初めて自覚できるものだからです。たとえば、良いか悪いかは別として、世界には｢順番待ちの列は割り込むのが当たり前｣というような社会もあります。日本人の常識では違和感を覚えるようなそういう社会で暮らしながら、日本社会の良さを肌で感じとっていく。当社が青年海外協力隊経験者を積極的に採用したいと考えるのは、青年海外協力隊がまさにこうした学びを重ねることができる機会にほかならないからです。

取締役
麻場 俊行さん

グローバル人材を生かすための組織づくり

青年海外協力隊や留学などで海外に飛び出すような人というのは、自主性や行動力が人一倍旺盛な人材です。そのため、会社が｢これこれをしなさい｣と管理するばかりでは窮屈を感じてしまう。グローバル人材は採用すればそれで済むというものではなく、彼らのパワーを活用できるよう、会社が組織づくりの工夫に努めなくてはならないのだと思います。

　当社はそうした考えに立ち、どの部署の社員が参加しても構わない｢フリースペース｣ともいうべき部署を設けて、｢フラットな組織｣を実現しています。この｢フリースペース｣では、役職を超えて誰もが対等の立場で新しい事業についてのアイデアを交換し合う。そこで立てられた事業計画は、社が実際に採用してプロジェクトとして実施されることもあります。そうすることによって、すべての社員に｢会社づくりに参加している｣という実感を持ってもらえるわけです。

　民間連携ボランティア制度については、この｢フリースペース｣などを通じて、青年海外協力隊に参加した社員が帰国後、派遣国における新たな事業を立ち上げてくれることを期待しています。派遣中に現地で築くネットワークは相当な量でしょうから、それを生かしたビジネスのアイデアがかならず生まれるはずだからです。

グローバル人材の時代に

｢フラットな組織｣にしていると、社員のなかには事業を立ち上げる力を着実に伸ばしていき、もはや当社の枠組みでは収まりきらない人材にまで成長する人もいます。そうなったら、旅立っていくのもやむを得ません。当社の社員のように、世界にみずから飛び出していった経験を持つような人に、1ヵ所にとどまることを求めるのはもともと難しいことだからです。旅立った社員とはその後もビジネス上で良い関係を維持しつつ、そうした逸材を新たに採用するというサイクルが理想的ではないかと考えています。

　グローバル人材はかつて｢癖のある人間｣と見られ、日本企業からはなかなか受け入れてもらえませんでした。しかし、ようやく彼らの力が必要とされ、大手企業が取り合いをするような時代になりました。そうしたなか、当社はグローバル人材がその力を十分に発揮できるような組織づくりに真っ先に取り組んでまいりました。そんな当社を、青年海外協力隊の方々に帰国後のキャリアパスの一つとして積極的に利用していただければうれしい限りです。