三重県青年海外協力隊として派遣される方を「みえ国際協力大使」に委嘱し、
派遣国と三重県の架け橋として活躍いただいています。

  • グローバル人材の育成・確保
  • 開発途上国への物品提供
  • 広報協力

三重県庁では、JICA海外協力隊に参加する県出身者に対して「みえ国際協力大使」を委嘱し、その数は2006年から2022年12月までに245名に及んでいる。こうした三重県の取り組みについて、県国際戦略課の課長(※令和4年度時点)である関美幸さんに話を伺った。

三重県がJICA海外協力隊に委嘱
「みえ国際協力大使」の3つの役割

県庁で国際分野を担う国際戦略課には、国際ビジネス支援班と国際交流班の2つの班があります(※令和4年度取材時点/令和5年4月に組織改編あり)。前者は、県内企業の海外進出のサポートなどを担当しており、後者は、ブラジルのサンパウロ州、中国の河南省、スペインのバレンシア州、そしてパラオ共和国といった、海外の国・地域との姉妹友好先との交流などを担当しています。

先日は、パラオで農業を学ぶ大学生と高校生、農業に関わる研究者、行政職員などを県に招へいしました。パラオの農業を担う若者たちに県の農業研究機関などで研修を実施したほか、県の農業高校も訪問し、学生同士の交流も図りました。お互いに意識を高め合いながら、友好を深めるのが目的です。

「みえ国際協力大使」は、JICA海外協力隊経験者である森本裕也さんが所属する、国際交流班が担当する事業です。JICA海外協力隊として派遣される方々を大使に委嘱し、三重県と派遣国の架け橋となり、国際交流を推進いただくことを目的に実施しています。大使には3つの役割があります。
1つ目の役割は、派遣国の状況やJICA海外協力隊としての活動内容などを報告していただくことです。その内容を県のホームページに掲載し、国際協力への関心を高めることに役立てています。

2つ目の役割は、派遣国での活動で必要な物資を県に要請すること。県は要請された物資を広く呼びかけて集め、現地へ送っています。今までに楽器、折り紙、車椅子など多様な物資を届けてきました。大使は受け取った物資を派遣国支援に活用し、その状況を県に報告します。

3つ目の役割は、派遣国にて県の魅力をPRすることです。派遣国の方々に三重の魅力を伝えることで、三重のことをよく知ってもらうとともに、隊員ご本人にも地元の魅力を再発見してもらえると考えています。

国際戦略課長の関美幸さん

外に出てみることで地元の良さを知る
真摯な姿勢に期待

JICA海外協力隊として派遣される皆様には、派遣前に副知事へ表敬訪問いただき、その中で、「みえ国際協力大使」の委嘱を行っています。表敬訪問において、応募の背景や活動にかける意気込みを聞くとJICA海外協力隊に参加する方々の前向きさを感じ、頭が下がる思いです。本人が日本で経験してきたことを他の国でも役立てたいという強い気持ち。しかも、2年間も現地に住みながらです。自身の目標や志を穏やかに話す皆さんを見ると、「しっかり活動しよう」という覚悟が伝わってきます。
表敬訪問の際、副知事は必ずと言っていいほど「健康に気をつけて」と伝えています。活動もさることながら、無事に元気に帰って来ることが、JICA海外協力隊として一番大切なのだと思います。

「みえ国際協力大使」の委嘱期間は、海外協力隊の在任期間中ですが、帰国した後は、活動を通じて培った経験を活かして、ぜひ県内で活躍してほしいと思っています。工業、観光業、農林水産業、教育職、医療職など、県内には様々な職場があり、それぞれのフィールドで協力隊経験を活かせると思います。

私は三重出身で、東京の民間企業で10年以上働いた経験があります。しかし、やはり地元に戻りたくなりました。三重には多様な産業がありますし、住むにも本当にいい所だからです。

まずは自然。伊勢志摩サミットで各国首脳から絶賛された風光明媚な景色、海の幸にも山の幸にも恵まれています。山が良いので水も良質。お米も美味しく育ちます。

大都市圏への交通の便も良く、県庁のある津から名古屋までは50分、大阪までは1時間半。どちらも乗り換えなしで行けます。東京までの日帰りも可能です。他県からの移住者も暮らしやすいと思います。

協力隊の参加前は県内で保健師として働いていた森本さんですが、帰国後は東京で仕事をしていたそうです。お子さんが生まれるタイミングで地元の三重に戻り、今は県庁の行政職として勤務しています。

今、森本さんには国際交流の業務に加え、課の予算や経理も担当してもらっています。予算や経理という基本も公務員として大切だからです。今は地道な業務の積み重ねですが、力をつけたうえで、協力隊で培った知識やスキルも活かし、国際交流の企画立案などにも関わって欲しいと願っています。

JICAボランティア経験者から

雇用経済部 国際戦略課 主任 森本裕也さん
(ザンビア/公衆衛生/2012年度派遣)

恩師の言葉で生まれた海外への関心

私は伊勢市に住んでいます。出身地である志摩市には車で45分ほど、県庁のある津市には電車で1時間ほどの距離です。協力隊から帰国後は東京で仕事をしていましたが、子どもが生まれたことをきっかけに、地元へ戻ってきました。伊勢市は高校生の時に通っていたこともあり、実家も近く、住み慣れた地域で子育てできることはありがたいと思っています。

海外への興味を持ったきっかけは、大学の研究室の先生のアドバイスです。大学で看護系の勉強をしていた頃、卒業後は看護師になる同期が多い中で、自分はどんなキャリアを歩むべきか悩みました。そういった悩みを研究室の先生に相談したところ、「海外に目を向けたら」と言われ、機会があればJICA海外協力隊にチャレンジしたいと思うようになりました。

病気の予防にも関心があったため、大学卒業後は市役所にて保健師として3年ほど勤めました。生活習慣病予防のための特定保健指導や、認知症を予防する介護予防事業などを主に担当し、地域住民の方向けに講座等を実施する仕事はとてもやりがいがありました。しかし、大学時代に持ったJICA海外協力隊への関心は捨てきれず、予防の知識や経験は開発途上国のほうが役立つかもしれないという思いも高まりました。マラリアや栄養不良など、小さい子どもの命に関わるような課題が少なくないからです。そう思いJICA海外協力隊へ応募しました。

ザンビアで公衆衛生隊員として活動した森本さん

ザンビアのクリニックにて
栄養不良の子どもを一人でも減らすためにできることは?

JICA海外協力隊として派遣されたのは、アフリカの南部に位置するザンビアで、ンドラ郡保健局のクリニックに配属されました。クリニックの管理下には、住民ボランティアによるヘルスポストが13ヶ所あり、子どもたちの体重測定などを行い、栄養不良などで体重が減っていないかをチェックします。私はそのヘルスポストを巡回し、ボランティアと一緒に子ども体重測定をし、栄養不良の子どもを早期発見するための活動を行っていました。支援を必要とする子どもが見落とされている現状もあり、そのような子どもが体重測定できっちり把握され、クリニックに紹介されるような仕組みづくりを目指していましたが、私が帰国した後にも続くような仕組みを実現することは、正直なところ難しかったです。

国際戦略課の森本裕也さん

協力隊での経験は
帰国後のキャリアにおいて活きているか?

協力隊として海外で生活し、異文化の中でボランティアを行った経験は、その後のキャリアにおいて、様々なところで活きていると感じています。

帰国後は東京の民間企業に就職し、タジキスタンの病院に医療機器を供与するJICAプロジェクトに携わりました。地元の三重県に戻ってからは看護大学の助手として、学生の海外実習引率や、実習生の受け入れなどを通じて、タイ、スコットランドの大学との国際交流に関わってきました。

県庁に入ったのは2019年4月です。行政職としての採用でしたが、保健師の経験を活かし、保健所へ配属され、指定難病医療費助成の業務を担当しました。申請者の中には、在日外国人の方もいて、窓口での申請に困っている方もいたので、そのサポートにおいて、協力隊の経験を活かすことができたと思います。また、翌年からは、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、感染症関連の業務も行っていました。日本語が話せない方への聞き取り調査や、受診、検査の案内など、協力隊での経験が大いに役立ちました。

2022年4月からは本庁の国際戦略課で勤務し、姉妹友好提携先との交流や、「みえ国際協力大使」の事業を担当しています。「みえ国際協力大使」の事業に携われることは、協力隊OBとして、とてもやりがいがあります。私自身も、協力隊に派遣される前には、三重県庁を訪問し、「みえ国際協力大使」に委嘱いただきました。現在は、担当者として、委嘱の準備や、委嘱者への制度の説明などを行いますが、派遣前の皆様の、熱意や意気込みを伺うと、私自身も当時のことを思い出し、頑張らなくてはとやる気をもらえます。一方で、派遣前の皆様は、不安に思うこともあると思うので、現地で役に立った物などをOBとして伝えたり、担当者として三重県のサポートなどを伝えて、少しでも安心して派遣に臨めるよう努めています。

私もそうでしたが、協力隊として海外で生活すると、これまで気づかなかった三重県の魅力を再発見できると思います。また、三重に戻ってから気づいたことは、行政、民間、大学、団体など、様々な分野で海外との繋がりがあり、協力隊の経験を活かせる場面がとても多いということです。「みえ国際協力大使」の方々の帰国後は、是非、三重県へ戻っていただければと思いながら、業務にあたっています。

※このインタビューは、2022年11月に行われたものです。

PROFILE

三重県
所在地:三重県津市広明町13番地

HP:https://www.pref.mie.lg.jp/index.shtm

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