読売新聞社途上国の子どもたちにグローブを
野球でつなぐ読者と世界

  • CSR活動
  • 開発途上国への物品提供
  • 広報協力

読売新聞社は、1994年に創刊120周年を記念して読売国際協力賞を創設し、毎年、「国際社会への貢献と協力の重要性を身をもって示した個人、あるいは団体、企業」を顕彰するなど、国際協力の振興に貢献してきた。その読売新聞社が2016年8月、JICAと連携し開発途上国での野球の普及と健全な青少年の育成を目的とした「世界の野球グローブ支援プロジェクト」をスタートさせた。これは、読売新聞社の呼び掛けで集まった中古グローブなどの野球用具を、JICAボランティアを通じて途上国へ届けるとともに、日本の野球指導者を派遣する活動だ。両者が連携した経緯や背景、これまでの成果などについて、読売新聞東京本社広告局ビジネス推進室の佐藤直樹(さとう・なおき)さんに聞いた。

世界に野球を普及させるために

「世界の野球グローブ支援プロジェクト」が始まるきっかけとなったのは、2015年の夏ごろ、広告局の若手が中心となって開いている営業企画会議でした。そこで、中古のグローブを開発途上国に送るという企画がアイディアとして出てきたのです。ちょうど2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの追加種目の決定を翌2016年に控え、2008年の北京を最後に正式種目から除外された野球を復活させようと、わが社にできることを考えていた頃でした。

野球が正式種目から除外されたのは、普及率が低いことが理由の一つです。ボールがあればすぐにできるサッカーと違い、野球はグローブやボール、バットなどの用具をそろえなければプレイできません。特にグローブは全てのポジションで必要な用具です。しかし、グローブは高価で、途上国の子どもたちが簡単に買えるものではありません。野球の普及率を高めるためには、まずは用具の問題を解決し、子どもたちに野球の楽しさを知ってもらい裾野を広げていくことが必要です。そこで考えたのが今回の企画というわけです。

広告局ビジネス推進室
佐藤 直樹さん

JICAとの協力で実現

とはいえ、当社は新聞社です。中古の野球用具を提供してもらうように読者に呼び掛けることはできても、それを開発途上国の子どもたちに送り届けるための手段を持っていません。そこで相談したのがJICAでした。

JICAは野球の指導を行うボランティアを途上国へ派遣しています。野球の振興とともに、礼儀や規律を重んじる日本式の野球を伝えることで健全な青少年を育成することが目的です。そして、途上国の子どもたちに野球の楽しさを知ってほしいという思いは、われわれもJICAも同じでした。双方の担当者が意見を交わす中で、紙面を通じて読者に野球用具の提供を呼び掛け、集まったものをJICAボランティアを通じて途上国に届ける「世界の野球グローブ支援プロジェクト」が形になっていきました。まさに読売新聞社の強みである「告知力」「巨人軍とのつながり」と、JICAの強みである「途上国での実績」「ボランティアが持つ現地のネットワーク」が生かされた取り組みだと感じています。

中古グローブの寄付の呼び掛けは、2016年8月5日付の朝刊全面広告でプロジェクトが始まったことを告知したのを皮切りに、紙面やホームページを通じて継続的に行いました。JICAの担当者に、プロジェクトの意義を寄稿してもらったこともあります。さらに、本事業に協力いただいた全日本軟式野球連盟が主催する高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会「マクドナルド・トーナメント」や読売巨人軍の本拠地となっている東京ドームでパネルやチラシを使った広報活動を展開し、来場者にもグローブの提供を呼び掛けました。

「マクドナルド・トーナメント」で集まったグローブは元JICA日系社会青年ボランティア(ブラジル・野球)の黒木豪(くろき・ごう)さんに手渡された

東京ドームで開催された「巨人―阪神戦」(2016年8月21日)で行われたプロジェクトのプロモーション

読者の社会貢献をお手伝い

広報活動の成果もあって、締め切りの11月30日までに届いた用具の数は、グローブ503個のほか、ボールやバットなど計1649個と、われわれの予想を大きく上回るものでした。個人だけでなく、少年野球や社会人野球のチームがまとめて送ってくださったものや、スポーツ用品店が回収して送ってくださったケースもありました。プロジェクトの立ち上げに当たり実施したモニター調査では「古くなっても捨てられないのでぜひ協力したい」という声が寄せられていましたが、そういう人が多くいることを改めて感じました。

お送りいただいた用具は、すでにJICAボランティアを通じてアルゼンチン、ザンビア、ブルキナファソ、ベリーズ、ウガンダに届けられています。また、2017年1月25日から2月1日まで、巨人軍の元選手でジャイアンツアカデミーのコーチである古城茂幸(ふるき・しげゆき)さんがアルゼンチンに行き、野球教室を開催しました。プロジェクトで初めてとなる野球教室をアルゼンチンで開催したのは、現地で野球を指導しているJICAボランティアからの強い要望があったからでした。野球教室には地元の野球少年少女だけでなく、野球経験のない子どもたちも多く参加し、大いに盛り上がったと聞いています。このプロジェクトが野球の裾野を広げる第一歩になればと期待しています。

プロジェクトは、2019年度まで続くことが決まっています。その後については、今後の状況を見ながらという部分もありますが、規模の大小にかかわらず、長く続けていければと思っています。

国際協力や社会貢献にはいろいろな形がありますが、報道機関である当社は、紙面を通じてその意義を伝えることが大切だと考えています。今回のプロジェクトでも「協力したい」という思いで読者が提供してくださった大事なグローブが、開発途上国でどのように使われているのかをしっかりと伝えていきます。そういう意味では、これは「新聞社としての社会貢献」であると同時に、「読者の社会貢献」のお手伝いともいえるかもしれません。こうした取り組みを通じて、国際協力の輪、そして野球の輪が世界に広がっていけばうれしく思います。

全国から集まったグローブ

ジャイアンツアカデミーの古城さん(奥右端)の指導を受けるアルゼンチンの子どもたち

日本から届けられたグローブを手にするベリーズの子どもたち

PROFILE

株式会社読売新聞東京本社
創刊:1874年
所在地:東京都千代田区大手町1-7-1
事業内容:新聞の発行等

HP:http://info.yomiuri.co.jp/index.html

 
一覧に戻る

TOP