平成29年度ナレッジ分科会ナレッジセミナー
REDD+関連の国際動向について

開催日時:2017年6月2日(水)15:00~16:30
会場:JICA市ヶ谷ビル 2階 国際会議場(東京都新宿区)
主催:森から世界を変えるREDD+プラットフォームナレッジ分科会

【Summary】

森から世界を変えるREDD+プラットフォームナレッジ分科会では、同プラットフォームに参加する団体が、REDD+を含む森林保全活動の実施・促進に必要な情報・知見・経験を共有し、ビジネスモデルの開発等に資することを目的に、これまで4回のナレッジセミナーを開催してきました。現在、REDD+の活動を進める当たり、どのように資金を確保して運用するかという"資金の流れ"をつくることが急務になっています。

そこで、5回目となった平成29年度第一回のナレッジセミナーでは、REDD+に関する最新の国際動向や議論について報告し、REDD+の資金に関する制度や現状について情報を共有しました。

【Report】

当日のポイントをプログラムに沿ってご紹介します。

報告1:パリ協定関連議論の進捗:資金支援の議論を中心に

森田香菜子(国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 国際連携・気候変動研究拠点 主任研究員)

森田香菜子主任研究員より、2015年12月の気候変動枠組条約第21回締約国会議で合意されたパリ協定の概要、パリ協定実施のための詳細ルール策定の議論、特にREDD+の支援に関係する資金支援の議論について報告がされました。

森田「パリ協定には、世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑え1.5度に抑える努力をする長期目標が定められ、先進国だけでなく途上国を含む全ての国が自国の決定する貢献(NDC)を提出することなどが義務付けられています。パリ協定は、緩和(温室効果ガスの排出削減策)、適応(気候変動の影響への対応策)、資金支援の3つのバランスを考慮して合意され、現在は2018年までにパリ協定の詳細なルール作りを終えるため、議論が行われています。

先進国だけでなく途上国を巻き込むパリ協定を合意に導いた重要な要素の一つが資金支援でした。現在、途上国の気候変動の緩和策・適応策に関する資金ニーズは高まっています(例えばCarbon Briefの試算では、途上国各国が提出した排出削減目標案達成だけでも年間約2300億ドルが必要)。一方で、現在の先進国から途上国への公的・民間からの気候変動支援は年間約800億ドルという試算もあり(UNFCCC SCF, 2016)、REDD+を含む気候変動対策の資金ニーズと資金供与にギャップが生じています。条約の下で途上国の緩和策と適応策を支援するために設立された緑の気候基金(GCF)も、各国が約束している金額の総額は100億ドル程度です。」

このような背景を踏まえ、条約下で現在議論されている、資金支援に関する議論(パリ協定9条)、市場アプローチの議論(パリ協定6条)の進捗と課題、気候変動対策の資金支援全体の課題が提示されました。資金ニーズと資金供与とのギャップをどう埋めるか、パリ協定に記載のない具体的な資金動員方法の検討(民間資金や革新的な資金メカニズムの活用)、効果的・効率的な資金配分の検討(既存の資金フローの分析)の必要性が示されました。

報告2:2016年度REDD+関連議論の進捗(2017年度の予定を含む)

大仲幸作(林野庁 森林整備部 計画課 海外林業協力室 課長補佐)

大仲幸作氏からは、REDD+支援の動向について、緑の機構基金(GCF)やFCPFにおける取り組みや市場メカニズム(パリ協定6条関係)の交渉などの主要課題を中心に、昨年度の総括と2017年の最新状況の情報提供という形で報告がありました。

大仲「REDD+活動のスケールアップ、持続性の確保などの観点から、REDD+では「資金」に係る課題がクローズアップされつつあります。REDD+活動は、国家戦略やFRELの策定、セーフガード情報の整備などを行うフェーズ1、戦略等に基づき、具体的に成果を得るための活動等を実施するフェーズ2、成果に基づく支払いを受けるフェーズ3に分けて段階的に進められます。このうち、特にフェーズ3での「成果に基づく支払い」は、資金規模の大きさのみならず、支払い金額の査定に当たっては、フェーズ1、フェーズ2に関連する事項も含め、包括的な評価が行われることとなるため、途上国政府はもとより援助機関を含む多くの関係者が高い関心をもって見守っています。

2016年10月、気候変動対策の主要基金である「緑の気候基金(GCF)」では、「成果に基づく支払い」を含むREDD+支援に係る本格的な検討を開始しました。しかし「成果に基づく支払い」が実施された事例はREDD+はもとより、他の分野も含め極めて限定的であること等から、GCFにおける検討が大変難航しています。

REDD+関連資金としてはGCF以外にも、世界銀行の下に設立された「森林炭素パートナーシップ基金(FCPF)」や「FIP」、国連3機関(UNDP、FAO及びUNEP)が共同で設立した「UN-REDD」などの多国間基金があります。しかし、こうした活動に係る資金の大部分はODAから拠出されており、資金規模も十分でないことなどからREDD+活動のスケールアップ、持続性確保の観点において、市場メカニズムやグリーンボンドなどを通じて民間資金の戦略的な動員等を図っていくためのメカニズムの構築などが必要とされつつあり、そのことに関連する形でUNFCCCでのパリ協定の実施ルールに係る交渉などについても注目が集まってきています。」

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