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「まとめ」の言葉 池上彰氏
【イベントレポート】 シンポジウム『池上彰と考える 〜気候変動と森林保全〜』

パネルディスカッションが終わって「さあ帰れるぞ」と思いながらふと台本を見ましたら、最後に「まとめ」という時間があることに、先ほど気がつきました。

ふたつのパネルディスカッション、それぞれに今日はいろんな示唆に富む話があったと思います。

前半のディスカッションで、私は「筋肉質」のたとえ話をしました。筋肉を鍛えるには適度な負荷が必要だという話です。すると、後半のディスカッションでは、森を大切に保護しているだけでは、結局ダメになっていくというところがあるという話が出てきました。

高齢者を大切にするのでも、大事をとって何もしないでいると、高齢者がどんどんぼけていってしまうといわれます。高齢者の方にもお仕事や役割があって、活躍の場を作ってこそ、いつまでも若くて元気でいる。森林保全についても、そういう役割分担が必要なのかなということを思いました。

以前、北朝鮮に2度取材に行ったことがあります。北朝鮮では、金日成というリーダーの間違った政策によって、国中の森を伐採して段々畑を作り、食料増産というのをやったんですね。ところが、森を全部切ってしまったことで、ちょっとした雨が降れば土砂崩れが起きる。保水機能も失われ、ちょっと降れば大洪水、ちょっと日照りが続くと大干ばつということになってしまいました。

森の大切さを、改めて痛感します。

私は、宇宙から撮った地球の写真で作った世界地図を持っています。それを見ると、世界には緑の森が広がっているところもあれば、森がまったくないところもあります。そして、その地図で日本を見ると、緑で日本列島の形になっているんです。よく見ると、関東地方と大阪の周辺だけ、実はちょっと禿げてはいるんですけど、本当に、日本は緑が豊かなんだなと思います。

でも、ただ大事に大事にしていたのではいけない。有効に使ってこそ、本当に緑は残っていく。

わたしたち日本人は、世界の人々に何を訴えることができるのか。

途上国の森に暮らす人たちの経済活動をきちっと担保することによって、環境を守っていくことが大切という話もありました。これは森林だけではないですね。考えてみれば全ての分野において、それぞれの人の経済活動をきちんとして、それぞれの人が豊かになることによって、地球全体の環境を守っていくことができるのです。

そのときに日本には何ができるのか。実は日本がこれまでやってきた、その経験から学ぶことは、いくらでもあるんだろうということです。私たちの経験を、今度は世界に広めていく。そのときにも、とにかく上から目線ではない、本当に一緒になって共生していくことが大切だということです。

人々の共生と自然の共生。そして森林との共生。これを私たちは考えていく必要があるのではないか。そして、それは大変チャレンジングで、やりがいがあることではないかな。そんなふうに、今日は感じました。

長い時間、ありがとうございました。

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