サポート宣言!

ビジネスの視点で「森林」の価値を発見する

インタビュー企画『サポート宣言!』の第一弾は、ビジネスプロデューサーの谷中修吾さんの登場です。『森から世界を変える REDD+ プラットフォーム』のオフィシャルサポーターに就任した谷中さんは、BBT大学で教鞭を執るとともに、ラジオDJやキュレーターなどメディアでも活躍されています。今回は、ビジネスプロデューサーとして国内外でさまざまなソーシャルビジネスを手掛けてきた視点から、REDD+の可能性について語っていただきました。

ビジネスプロデューサー
谷中修吾さん

REDD+ が目指すことって、
実はシンプル

ソーシャルビジネスの視点から環境問題にはアンテナを張っているつもりでしたが、『REDD+』という枠組みについては、今回、オフィシャルサポーターのお話をいただいて初めて知りました。環境分野の専門家のみなさんを除けば、一般的にはREDD+を知らない方のほうが多いのではないでしょうか。

REDD+に関わってみて印象的だったことのひとつが、説明してくださる方の多くが「少しわかりにくいのですが…」と前置きをして、枠組みや取り組みの経緯について話し始めることでした。確かに、国連での交渉の経緯など、ひと言で語りきれない部分があるようです。

でも、ブリーフィングをいただきながら気付いたのは、「REDD+って、めざすゴールの本質は、とてもシンプルなことじゃないか」ということです。

突き詰めると、REDD+の目標は、気候変動を抑制するための「温室効果ガスの削減」です。そのために、温室効果ガスを吸収してくれる“森を守る”。とてもシンプルな構図ですよね。わかりにくいと言われているのはそのルールのほうで、ゴールそのものは明快なんです。

そもそも、温室効果ガスを削減するための方法は、「排出量を減らす」「吸収量を増やす」という2つに大別されます。ここで、REDD+が注目するのは、温室効果ガスを吸収する「森」ですね。その森が、ものすごいスピードで減っているので、森を保全して温室効果ガスの削減に取り組むのがREDD+だと理解しました。

この構造は、ビジネスで利益をあげるために「売上を増やす」「コストを減らす」という両輪が必要になることと似ています。温室効果ガスの削減にも、先だって政府が発表した「26%排出削減」というやり方とともに、森林保全による「吸収量の維持・増加」というやり方があるのは理に適った考え方だと思います。

森を守ることからビジネスを生み出す視点が重要

途上国の森林エリアに住む人たちにとって、森の木を伐採して売るのは最も手っ取り早く収入を得る方法でもあるはずです。でも、無計画な伐採は、森林破壊を引き起こしてしまう。そこで、先進国としては「森を守りましょう」ということになるのですが、現地の方々にとっては日々の生活のほうが大事なわけです。必要なのは、目先の収入。

なので、すごく現実的には、森林保全の理解を求めるだけでは森林伐採が減ることはなく、必ず実利としてのリターンをセットとして考える必要があると思います。それはすなわち、「森を守ることで収入を得られるビジネス」を生み出すことにほかなりません。

地域の環境を守ることをビジネスに結びつけていくのは、まさにコミュニティビジネスやソーシャルビジネスの発想でもあります。また、豊かな森林を保全することは、健全な地域コミュニティを維持して、発展させていくことにもつながるでしょう。

そう考えると、REDD+は、私にとって非常に興味深い枠組みです。つまり、REDD+のプロジェクトとは、森林保全をテーマとしたビジネスデザインと捉えることができるのです。ビジネスプロデューサーとして、自分ならREDD+をどう「カタチ」にしていくか。そのような見方をすると、とてもワクワクする取り組みに様変わりします。ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスに関心のある方には、とても魅力的なテーマだと思います。

さまざまな企業が強みを活かした連携を!

私自身、過去15年ほど、東南アジアをフィールドとする国際教育活動を続けていて、マレーシアの熱帯雨林を歩くスタディーツアーなどを行ってきた経験があります。森林を守るために何が必要で、そのためにどんな活動をすべきなのか。また、森林と、そこに暮らす人々や地域の素材から、どんなビジネスを生み出せるのか。これを知るには、とにかく一度現地に行って、五感でまるごと体験してみるのが一番です。

現場に足を運ぶプロセスそのものに、さまざまなヒントが隠れています。街のホテルから森林へ向かう車中の風景や、案内してくれる現地ガイドとの会話から、思わぬビジネスシーズを発見できることは少なくありません。森林保全をテーマとするビジネスデザインも、まさに現場の体感からスタートするのではないかと思います。

そのためにも、さまざまな企業が途上国の森林に関わるエントリーポイントをつくることが重要です。官民連携で情報を共有する『REDD+プラットフォーム』は、日本国内の多くの企業と現地を結びつけるうえで貴重な存在だと感じます。企業単独では現地の窓口となる人物をみつけるだけでも大変です。プラットフォームがREDD+への入り口を広げ、新しい森林ビジネスのきっかけをつくるのは、とても有意義だと思います。

日本には、グローバルに活躍するすばらしい企業が数多くあります。ただ、1つの企業だけで途上国の森林保全ビジネスに関わろうとすると、なかなか広がりが生まれません。対象となる国や地域の森林保全について、何か「共感できるストーリー」が生まれ、多くの企業や団体がそれぞれの強みを活かして関わっていけるオープンイノベーションがキーになると思います。

ビジネスモデルが確立すれば、自発的に回り始める

途上国における森林保全ビジネスを生み出すうえで、日本企業と現地企業のコラボレーションはもちろんのこと、スタートアップ間もないベンチャー企業の参画にも大きなポテンシャルがあると思います。特に、初めからグローバル展開を視野にいれて起業する若手のベンチャー経営者には、自由な発想で新しいビジネスを生み出すセンスを持った方も多いので、歴史ある大手企業とベンチャー企業が協業できると大きなブレークスルーが起きそうです。

単なるCSRでは長続きさせるのは難しい。排出権クレジットや二国間クレジット制度(JCM)はREDD+にとって大切なファクターだとは思いますが、それ以前にビジネスとして成立しないと広がらない。逆に、少額でも継続的に利益が出るビジネスモデルを確立すれば、win-winな関係性とともに途上国の森林保全は自発的に回り始めるはずです。

このように整理して考えると、REDD+を促進するためには、REDD+を訴求するだけではなく、多くの日本の企業の方々に「途上国の森林の面白さ」を知っていただくことが最大のポイントになると思います。ビジネスの視点で森林を見て、本業と絡めて森林保全を「活用」していくカタチを見つけ出していただくきっかけづくりですね。機会があれば、日本の企業や団体の方々と、熱帯の森を訪ねるスタディーツアーやワークショップを開催してみたいです。

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