JICA協力隊の人とシゴト
上野 和憲(うえの かずのり)さん

上野 うえの  和憲かずのりさん

職  種
経営管理
派遣国
ザンビア
派遣期間
2013年1月~2015年1月
  • 社会貢献キャリア
  • # 民間企業 # 経験を生かす

企業の経営者から、アフリカでのボランティアに転身。先進国の発想は捨て、現地の人々と同じ目線に立って、その国の将来を考える。

2015.03

応募のきっかけ

在職中から抱いていた
アフリカへの思い。
企業で培ってきた自分の経験を
役立てたい。

大学院を修了後、企業で研究開発や事業開発に携わり、子会社の社長を勤めた後、定年を迎えました。仕事で海外に行くこともありましたが、アフリカとは無縁。いつかアフリカで仕事をしてみたいと漠然と思っていました。
 退職してのんびりとした生活を送っていたある日、電車の中でシニア海外協力隊の吊り広告を見つけ強く惹かれ、たまたまその日に説明会があったので、その足で参加。自分が日本企業で携わってきたカイゼン活動(※1)や5S活動(※2)の経験が、開発途上国のために役立つことを知り、迷いなく応募したのです。

(※1) 主に製造業の生産現場で行われている作業の見直し活動のこと。作業効率の向上や安全性の確保などに関し、現場の作業者が中心となって問題解決を図る手法。
(※2) 「整理(Seiri)」、「整頓(Seiton)」、「清掃(Seisou)」、「清潔(Seiketsu)」、「しつけ(Shitsuke)」の5つの頭文字を取った言葉。
5Sの実行を促進することで、仕事に対する意識やモチベーションを高めたり、仕事の効率をアップしたり、コストを削減したりなど、さまざまな効果が期待される。

上野 和憲さん

現地での活動

日本式を押し付けるのではなく、
参加者自身が考える講義が大切。
セミナーを繰り返して
国際競争力の向上に貢献。

私の赴任先は、ザンビア開発庁。投資と輸出を促進し、中小零細企業の経営を支援する政府機関です。要請内容は、政府機関スタッフから中小企業の経営者まで、幅広い方々を対象に、カイゼン手法を普及させ、人材を育成指導すること。それにより、ザンビアの国際競争力の強化に協力することでした。国策として輸出主導の経済成長を目指すザンビアにとって、国全体の98%を占める中小零細企業の国際競争力の強化は急務で、私の業務は大きな期待を寄せられていました。
 全国各地で5Sやカイゼン手法のワークショップやセミナーを開催しましたが、日本式のやり方を押し付けるだけでは、「経済が発展している日本だからできること。私たちには無理」と関心を持ってもらえません。参加者がどんな仕事をしていて、何に興味を持っているかを確認し、例えばトヨタやホンダといった世界的に知られる日本企業を例に挙げるなどして、経営者が興味を持てるような内容を心掛けました。「アフリカ独自の発展を模索してもよいのではないか」と、参加者に考えてほしかったのです。
 赴任期間終盤には、ザンビアカイゼン協会(KAIZEN Institute Zambia)が発足したので、もっぱら零細小企業への支援に注力することになりました。セミナーや講演を繰り返すうちに、企業経営者たちのカイゼンへの理解や認知度も高まり、セミナーを受講した経営者たちから個別の経営相談も受けるなど、ザンビアの国際競争力向上に少しは貢献できたのではないかと思っています。

セミナーの様子

帰国後のキャリア

本当の幸せとは何か。
雄大な自然の中で価値観に変化が。

最近思うのは、日本の片田舎や町工場に息づく技術の中にこそ、途上国の経済発展に有効な基盤技術が数多くあるということです。日本の中小企業が保有する技術の中から、途上国が必要とする技術を棚卸しして、技術移転を通じて途上国の起業家たちを支援する活動に挑戦してみたいと思っています。

JICA海外協力隊で得たもの

帰国後によく考えるのは、先進国の発想で豊かだと思うことが、開発途上国にとっても幸せであるとは限らないということです。企業人として働いていた時は、効率重視の仕事漬けの日々を送っていました。また、仕事でアジアに滞在していたときは、追いつけ追い越せの勢いに共感を覚えていたのですが、アフリカの雄大な自然に抱かれていると、「人間にとって本当の幸せとは何だろうか」と考えるようになりました。自分でも気付かないいうちに、価値観が変化していたんですね。自分や会社の利益ではなく相手側の利益を第一に考えて行動すること、日本の価値観や考え方から距離を置くことで、さまざまなものが見えてくる。これは企業人として働いていた日々からは決して得られなかったであろう変化ですね。

シニア世代のこれまでの経験は途上国で必ず生きる!

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

シニア海外協力隊に求められていることは、培ってきたさまざまな経験や知識を、開発途上国のために生かすことです。ただ日本のやり方を押し付けるだけでは、途上国にとっての本当の幸せは追求できません。まずは相手国の環境に溶け込み、共に働きながら、相手側の考えや大切にしていることに耳を傾ける。そして、彼らにとっての幸せを一緒に考え、自分の経験や知識を最大限に役立てるよう活動する。それこそがシニア海外協力隊が果たすべき役割なのではないでしょうか。日本で培ってきた知識や経験は、途上国の経済成長にきっと役立ちます。一人でも多くの方にチャレンジしてもらいたいです。

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