JICA協力隊の人とシゴト
小柳 清美(こやなぎ きよみ)さん

小柳 こやなぎ  清美きよみさん

職  種
ソーシャルワーカー
派遣国
ドミニカ共和国
派遣期間
2011年6月~2013年6月
  • 社会貢献キャリア
  • # 看護師 # 経験を生かす # 現職参加制度

長く訪問看護に携わってきたキャリアを生かし、高齢化と生活習慣病対策が急がれるドミニカ共和国の日系人社会を健康へと導く。

2015.03

応募のきっかけ

興味を持ったのは20代のころ。
長年携わってきた、
訪問看護の経験が生きる。

JICA海外協力隊に最初に興味を持ったのは20代のころ。看護師の友人が青年海外協力隊としてネパールの病院に赴任したことがきっかけでした。結婚して家庭を持ったこともあって一度は参加を断念しましたが、シニア海外協力隊の制度ができたことで、夢の実現の期限が69歳まで伸びました。
 結果的に、20代から抱き続けた夢を叶えてくれたのは、長く携わってきた訪問看護の経験が大きかったです。所属する病院は、現職参加することを認めて下さり、病院に籍を置きながら任地に赴くことができるように。長年夢見たJICA海外協力隊に参加できると決まったときは、本当にうれしかったです。

小柳 清美さん

現地での活動

現地の人と直接触れ合いながら、
日系人社会が抱える問題と向き合った。

ドミニカ共和国の日系人社会には現在、一世から四世までが1000人ほど暮らしています。高齢化が進む一方、中南米特有の脂質の多い食事の影響もあって、糖尿病や高血圧などの生活習慣病に悩む人も増加傾向にありました。日系人協会に赴任した私が任された要請は、日系人社会全体の健康維持・増進と、高齢者の生活の質の維持・向上を図ることを目的とした5ヵ年計画を策定すること。この計画が今後の日系人の健康や生活の質を左右することになるため、責任は重大でした。
 まずは日系人が抱える健康への意識や現状を調べるため、全国各地域の高齢者やその家族を訪問巡回し、健康に関するアンケートを取ることに。5ヵ年計画の基盤とするべく回答を分析すると、多くの人が健康や病気、肥満に関して関心が高いにもかかわらず、適切な情報が得られないということが分かりました。そこで、60歳以上の高齢者100人との面談を実施。ここでも情報がほしいという声が多かったため、身近な健康をテーマに講座を行うなど、現地の人と直接触れ合いながら活動を進めました。
 このほかに、より健康的な食事への考察も行いました。ドミニカ共和国を代表する定食「バンデラドミニカーナ」のカロリーを計算すると、一食1800キロカロリーもあることが判明。そこで、日本の同僚の管理栄養士にも協力を得て、油や調味料を工夫することで一食600キロカロリーに抑えることに成功しました。現地の人々には「おいしくて健康に良いなんて素晴らしい」と喜んでいただけて、レシピを配布することで食事をおいしく楽しんで味わいながら、カロリーや塩分を抑える方法について伝えることができました。
 ドミニカ共和国の料理は揚げ物が多く、コレステロールが高いのは難点ですが、どれもとてもおいしかったです。特に、緑色の硬い調理用バナナをつぶして素揚げした「プラタノフリト」は私のお気に入り料理でした。一方、私が作ったもので好評だったのは、すき焼きやお好み焼き。現地の友人と料理を教え合うことで、食の文化交流ができたことは思い出深いです。
 活動中、全国13ヵ所の移住地へ計28回、首都では25回、巡回を行いました。地方へ出掛けるのはかなり大変で、舗装されていないガタガタの山道を進んだときなどは怖い思いもしましたが、戸別訪問を待っている日系人の方々がいると思うと、不思議と道中の苦労は気にならなくなりました。

健康に関する調査

帰国後のキャリア

帰国後、病院に復帰し、
迎えた定年退職。
現在はドミニカ共和国での
経験を地域へ発信。

ドミニカ共和国の日系人は、皆さん日本人以上に日本人。季節の行事や習慣、伝統文化を大切にして、後世に伝えようとしっかり守り続けています。私は日本では盆踊りに参加することはめったにありませんでしたが、現地では熱心に練習し、参加しました。外国にいると、不思議と日本の文化を大切にしたいという気持ちが芽生えるものだと実感したのです。
 帰国後は、すぐに勤めていた病院に復帰。看護師として1年半ほど勤務し、定年退職しました。現在は地元の公民館で出前講座を行ったり、JICA海外協力隊の説明会で体験談を話したりしています。ドミニカ共和国での経験を、地域の方々へ発信することを通じ、ドミニカ共和国やJICAの活動への理解を深めてもらうことに努めています。

JICA海外協力隊で得たもの

活動中は、常に多くの方々が協力してくださいました。彼らと共に目標を達成することの喜びを、シニア海外協力隊の経験で得られたと思います。日本とは違い、ドミニカ共和国の人々は独居が少なく、家族の絆を大切にしています。時間に縛られず、今日は今日!と楽しむ姿にさまざまな価値観があることを知り、経済大国となった日本にはない豊かさに気付かされました。

仲間と目標を達成する喜び

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

私自身、シニアになってから夢を実現できたときは、本当にうれしかったです。たとえ歳を重ねても、人は努力次第でいくらでも伸びていけると思います。素晴らしい出会いや苦労を乗り越えた先には、必ず大きな成長が待っています。思いがあれば必ず叶うと信じて、皆さんもぜひ飛び出していってください。

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