現地の人と直接触れ合いながら、
日系人社会が抱える問題と向き合った。
ドミニカ共和国の日系人社会には現在、一世から四世までが1000人ほど暮らしています。高齢化が進む一方、中南米特有の脂質の多い食事の影響もあって、糖尿病や高血圧などの生活習慣病に悩む人も増加傾向にありました。日系人協会に赴任した私が任された要請は、日系人社会全体の健康維持・増進と、高齢者の生活の質の維持・向上を図ることを目的とした5ヵ年計画を策定すること。この計画が今後の日系人の健康や生活の質を左右することになるため、責任は重大でした。
まずは日系人が抱える健康への意識や現状を調べるため、全国各地域の高齢者やその家族を訪問巡回し、健康に関するアンケートを取ることに。5ヵ年計画の基盤とするべく回答を分析すると、多くの人が健康や病気、肥満に関して関心が高いにもかかわらず、適切な情報が得られないということが分かりました。そこで、60歳以上の高齢者100人との面談を実施。ここでも情報がほしいという声が多かったため、身近な健康をテーマに講座を行うなど、現地の人と直接触れ合いながら活動を進めました。
このほかに、より健康的な食事への考察も行いました。ドミニカ共和国を代表する定食「バンデラドミニカーナ」のカロリーを計算すると、一食1800キロカロリーもあることが判明。そこで、日本の同僚の管理栄養士にも協力を得て、油や調味料を工夫することで一食600キロカロリーに抑えることに成功しました。現地の人々には「おいしくて健康に良いなんて素晴らしい」と喜んでいただけて、レシピを配布することで食事をおいしく楽しんで味わいながら、カロリーや塩分を抑える方法について伝えることができました。
ドミニカ共和国の料理は揚げ物が多く、コレステロールが高いのは難点ですが、どれもとてもおいしかったです。特に、緑色の硬い調理用バナナをつぶして素揚げした「プラタノフリト」は私のお気に入り料理でした。一方、私が作ったもので好評だったのは、すき焼きやお好み焼き。現地の友人と料理を教え合うことで、食の文化交流ができたことは思い出深いです。
活動中、全国13ヵ所の移住地へ計28回、首都では25回、巡回を行いました。地方へ出掛けるのはかなり大変で、舗装されていないガタガタの山道を進んだときなどは怖い思いもしましたが、戸別訪問を待っている日系人の方々がいると思うと、不思議と道中の苦労は気にならなくなりました。