JICA協力隊の人とシゴト
齋藤 康幸(さいとうやすゆき)さん

齋藤 さいとう  康幸やすゆきさん

職  種
自動車整備
派遣国
エルサルバドル
派遣期間
2011年1月~2013年1月
  • グローバルキャリア
  • # 整備士 # 語学 # 経験を生かす

語学習得をめざして参加したJICA海外協力隊。得たものは、語学力だけではなくチャレンジ精神と新たな出会いだった。

2016.06

応募のきっかけ

「語学のマスター」を目標に
JICA海外協力隊への応募を決意。

自動車整備士として、京都府の販売店に7年間勤務していたとき、同期の整備士を通じて初めてJICA海外協力隊の存在を知りました。彼は自動車整備の隊員としてタンザニアに赴任し、2年後、別人のように英語とスワヒリ語が堪能になって帰ってきたのです。海外旅行が趣味だった私は、語学の習得に関心があり、彼のように「協力隊で外国語を勉強するという手もある」と応募を決意。仕事の経験が生かせることも魅力でした。
 協力隊の選考にはなんとか合格。派遣先がエルサルバドルに決まり、派遣前訓練の語学訓練では、生まれて初めてスペイン語を習いました。上達の早いクラスメイトに比べて出遅れていましたが、ここでくじけてしまっては元も子もないと、自分と同じぐらいのレベルのメンバーに積極的に声を掛け、自習時間や休みの日も一緒になってひたすら勉強したのを覚えています。

齋藤 康幸さん

現地での活動

自動車整備の基本が通じず、
語学の上達と率先した作業で
信頼を勝ち取る。

私が赴任したのは、首都からバスで2時間ほどの街にある高校の自動車整備科。自動車整備の授業と実習をサポートすることになりました。その学校には自動車整備工場が併設されていて、生徒の整備技術はそれほど悪くありませんでしたが、日本との認識の違いに驚きました。例えば、日本の自動車整備業界では当たり前の「5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)」の意識がなく、工具の使い方や安全作業もかなりいい加減。日本では整備中に車を汚したり傷付けたりしてはいけないのが当たり前ですが、生徒たちは油まみれの手でボディやハンドルをおかまいなしに触ります。
 そこで、先進国では常識とされている自動車整備士のあるべき姿を教えようとしたのですが、なかなか伝わりません。私がスペイン語を流ちょうに喋れないことにも原因がありました。約7年間の整備士経験があるといっても生徒たちからはあまり信じてもらえず、時にはバカにされるありさま。それが悔しくて、1日も早く言葉を覚えようとスペイン語の勉強を続けました。授業中は率先して彼らの前で整備する姿を見せ、信頼を得られるように努力しました。
 すると、半年ほど経ったころからは、私の話を聞いてくれる生徒が増え、それまでは名前を呼び捨てにされることが多かったのが、「先生」と呼ばれるように。彼らとコミュニケーションが取れるようになり、現地の文化を理解していくにつれ、自分の感覚が現地の人たちに近付いていくのが分かりました。
 卒業を控えた3年生を、首都にあるトヨタのディーラーと、自動車整備の専門学校に連れて行きました。5Sや安全作業などを当然のように行う理想的な整備士を見てもらいたかったのと、街の整備工場に就職する生徒がほとんどの中、さらに高度な技術と知識を身に付けるために、専門学校へ進学する選択肢があることを彼らに知ってもらうためです。後日、ある勉強熱心な男子生徒が「どうしてもトヨタに入りたい」と私のところに相談に来ました。その子の真剣な目は、他の生徒とは明らかに違いました。

首都にあるトヨタのディーラーを見学 実習風景

帰国後のキャリア

帰国後は営業職で
スペイン語力を発揮。
夢はシニア海外協力隊への参加。

帰国後はJICA関西での帰国報告会がきっかけとなり、自動車のエンジンバルブを扱う「日本精機株式会社」へ営業職として入社。畑違いの営業職ですが、中南米の取引先が50%を占めるので、協力隊で身に付けたスペイン語を中南米出張で存分に発揮しています。元々持っていた自動車整備の知識に加え、JICA海外協力隊で得た語学力と経験が今の自分の礎になっていると思っています。
 帰国から2年ほど経ったある日、「どうしてもトヨタに就職したい」と相談に来た教え子から、私が日本に帰った後、専門学校に進学し、見事トヨタに入社できたという知らせを受けました。彼のような優秀な整備士を輩出できたことを誇りに思っています。

JICA海外協力隊で得たもの

JICA海外協力隊に参加したことで、内面も大きく変わりました。以前はためらってしまいそうなことでも、まずは挑戦してみようという前向きな心が備わったと感じています。たとえ失敗しても、やることによって得られるものは大きい、たった一歩の前進が自分自身を大きく成長させてくれるという気持ちです。

挑戦する心

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

JICA海外協力隊として世界中の誰かの役に立てるのは、他では絶対に味わえない貴重な、素晴らしい経験です。渡航前に抱えている色々な不安は、現地に行けば消えてしまうもの。体調を崩して1週間寝込んだこともありましたが、それも含めて、現地で見たこと、聞いたこと、感じたことの全てが自分を成長させてくれました。今度はあなたが第一歩を踏み出してみてください。

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