株式会社3WMビジネスを通じた社会貢献に
協力隊経験者の力を活かしていきたい

  • グローバル人材の育成・確保

株式会社3WM(スリー・ダブリュー・エム)は、日本の中古自動車や自動車部品、トラック、重機などをアフリカやアジア、中南米に輸出している貿易会社だ。青年海外協力隊経験者の採用にも積極的で、現在は4人の元協力隊の社員が、ウガンダとチリにある同社の現地法人で働いている。協力隊経験者を採用した経緯、会社の将来ビジョンを実現するために協力隊経験者に寄せる期待など、代表取締役社長の今井健太(いまい・けんた)さんに話を聞いた。

実際に途上国で生活をした経験が協力隊の強み

当社は、中古自動車、トラック、重機、自動車部品の輸出に加えて、船積みの手配や輸出通関申告など、物流業務代行を中心に事業を行っています。国内での販売はほとんどなく、取引先はほぼ海外です。現在はアラブ首長国連邦(UAE)のシャルジャ、チリのイキケ、ウガンダのカンパラに現地法人を設立し、当社の社員を駐在させ、日本から輸出した中古自動車やパーツなどの商品を、現地のバイヤーに販売しています。日本の高品質な自動車と自動車部品を世界各地に流通させ、モータリゼーション化を促すことで世界経済の発展に寄与することが、当社の事業理念です。

現在、当社には4人の協力隊経験者がおり、3人はウガンダ、1人はチリの現地法人で働いています。協力隊経験者を採用することになったのは、現在、ウガンダ支店のマネージャーをしている川地茂(かわち・しげる)さんとの出会いがきっかけです。川地さんは2011年に、当社の求人広告を見て応募してきました。協力隊経験者であることを理由に採用したわけではなかったのですが、入社後の川地さんの仕事ぶりを見る中で、人材としての協力隊経験者の魅力を知り、以降は積極的に採用しています。

協力隊経験者に共通しているのは、開発途上国で生活しながら現地の人と一緒に活動をした経験があるということです。当社に応募してくるほとんどの人が海外で働いてみたいと言うのですが、海外に駐在したことがない人の場合、実際に海外で生活すると不便なことや道理が通じないことが多く、「こんなはずじゃなかった」と落胆することが少なくありません。また、アフリカや南米勤務の人材を募集し、採用直前までいきながら、「やっぱり行けません」と断られたことも何度かあります。海外勤務への憧れが現実のものになろうとした時、尻込みしてしまうのです。協力隊経験者であれば、こうした採用後のミスマッチや直前の辞退を心配する必要はありません。

私たちは日本人で、現地では場所を借りて商売をさせてもらっているわけですから、日本のやり方を押し付けるのではなく、現地の商習慣、文化、考え方を理解した上で、ビジネスで恩返しをしていきたいという思いがあります。現地に根付いたサービスを提供することができれば、現地の人にとって有益なビジネスを広げることができ、当社の利益も大きくなると考えています。こうした考え方も、現地の住民と共に活動する協力隊と通じるところがあるのではないでしょうか。

代表取締役社長の今井 健太さん代表取締役社長の
今井 健太さん

協力隊経験者がいて実現したウガンダ支店

当社がウガンダへ進出を考え始めたのは、私がUAEのシャルジャ支店に勤務していた2006年頃です。UAEはアフリカや中央アジア、中東への輸出の中継地点になっており、アフリカへの輸出が年々増えていたため拠点をつくるべきだと考えるようになりました。ウガンダは治安が非常に良いこと、隣国であるコンゴ民主共和国や南スーダン、タンザニアへの輸出の拠点にもなっていることに加え、再輸出する商材に対して関税がかからない保税区があることも大きな魅力でした。

しかし、現地に駐在する人材を確保できないことや、2008年のリーマンショックの影響もあって計画はとん挫していました。そうした中、2011年に入社してきたのが川地さんです。彼には青年海外協力隊でアフリカに行って活動をした経験があるだけでなく、ウガンダ支店を任せてみたいと思ったほど、非常に優秀でした。彼がいなければ、ウガンダ支店はおそらくこんなに早く軌道に乗っていなかったと思います。

現地法人を設立する前から、ウガンダの企業と中古自動車やパーツの取引はありましたが、現地で在庫を持って商売するのは、それとはまったく異なります。彼は、「現地の人たちにも貢献する事業を展開したい」と、モノを売るだけでなく、売った自動車を整備するための整備工場をつくり、職業訓練校の学生をインターンとして受け入れ、人材の育成を進めています。ゼロから立ち上げ、従業員を30人近く抱える今の規模にまで成長させ、現地からも受け入れられる事業展開ができているのは、彼の貢献が大きいと感じています。

中古自動車の輸出をビジネスとしている企業はたくさんありますが、現地に社員を派遣し、在庫を持ってビジネスをしている日本の企業は多くはありません。海外に法人があるからこそ、双方に利益がある事業が展開できているのです。当社の生命線である海外支店で働ける人材を継続的に確保していくためにも、協力隊経験者はなくてはならない存在です。

JICAボランティア経験者から

ウガンダ支店長 川地 茂さん(平成18年度派遣/エチオピア/コンピュータ技術)
ITベンチャーから協力隊に

2006年から2年間、コンピュータ技術の隊員として、エチオピアに赴任しました。大学を中退して2年間、ヨーロッパを放浪するなど、海外を旅することは好きでしたが、開発途上国や国際協力に興味があったわけではありませんでした。青年海外協力隊に応募したのは、地下鉄の車内で協力隊の募集のポスターを見つけ、「おもしろそう!」と思ったのがきっかけです。

当時はIT系のベンチャー企業で働いていました。待遇は良く、余裕のある暮らしをしていましたが、自分の仕事が世の中にどう貢献し、誰を幸せにしているのかがわからず、虚無感のようなものを感じていました。ITビジネスの本場であるアメリカの会社に出向したことがあり、そこでさまざまな働き方、キャリアパスがあることを知り、もっと自由に自分がやりたいことに挑戦してもいいと思えるようになったことも、協力隊への応募を決めた要因になっている気がします。

協力隊に合格し、配属先となったのはエチオピアのティグレ州にあるマイチョウ技術短期大学でした。大学ではIT学部の授業を担当し、パソコンの分解・組み立て、クリーニングや修理のほか、インターネットの利用、ビジネス文書の作成、表計算・グラフ作成、プレゼンテーション資料の作成方法などを指導しました。

実は、配属先から当初依頼されていたのは、難易度の高いデータ構造やアルゴリズムなどを教えてほしいというものでした。ところが、学生は基礎的な知識や技術もないレベルでした。そこで、配属先にカリキュラムの修正案を提出し、より実践的かつ基礎的な内容の授業を実施したのです。思うように授業が進まないこともありましたが、少しずつ、生徒の理解が深まっていくのを感じ、充実した日々を過ごすことができました。

配属先となったマイチョウ技術短期大学で授業を行う隊員時代の川地さん(写真中央)配属先となったマイチョウ技術短期大学で授業を行う隊員時代の川地さん(写真中央)

アフリカの雇用創出に貢献したい

帰国後は、中古車の情報誌を制作している出版社に就職し、アフリカ向けの事業を立ち上げるためのマーケティングに携わることになりました。そこで、「日本車の需要はあるが、現地で販売している日本人はいない。日本人が行ったら絶対に売れるはず」と思い、当社がアフリカでの事業開発を検討していると聞いて、是非、挑戦してみたいと考え入社しました。

私がアフリカでの事業開発に関わりたいと考えたのは、現地で雇用を生み出したいという思いがあったからです。青年海外協力隊での2年間は、配属先の大学の学長とかけあってカリキュラムを修正し、より学生の実情に合った授業を行いました。学生が就職できるようにするには、それがベストだと思ったからです。

当時、ミレニアム開発目標(MDGs)に初等教育就学率の改善が掲げられ、日本をはじめ国際社会がその達成に向けて取り組んだおかげで、実際に就学率も向上していました。しかし、教育を受けても働くところがないという途上国の問題の一つに、民間企業が育っていないことがありました。その頃から、もし自分が再びアフリカに戻ることがあれば、雇用を生み、頑張る人が報われる社会づくりに貢献したいと思っていました。当社への入社を決めたのはその思いを実現するためでもあり、それが今も仕事に対するモチベーションになっています。

現在、私が勤務するウガンダ支店には日本人スタッフ5人と現地スタッフ25人の計30人が働いています。その他に、長年日本が支援してきた首都カンパラ市内にあるナカワ職業訓練校で自動車整備を学ぶ学生を、常時3人ほどインターンとして受け入れています。また、日本の中古自動車やパーツの輸入販売のほか、最近は日本の農業機械メーカーの代理店となり、ウガンダへの農業機械の普及に力を入れています。今後は農業機械の使い方やメンテナンスにとどまらず、収入と支出の管理、より高額で取引してくれる販売先の確保など、農業経営そのものを支援していきたいと考えています。

自らさまざまなビジネスをつくっていけるのが当社の強みであり、社員一人一人が事業主のように、やりたいことをやらせてもらえる土壌があります。開発途上国の現場で課題を見つけ、ゼロから活動をつくってきた協力隊経験者にとって、非常に働き甲斐のある会社だと感じています。

※このインタビューは2017年7月に行われたものです。

3WMのウガンダ支店には日本から運ばれたたくさんの中古車が並ぶ3WMのウガンダ支店には日本から運ばれたたくさんの中古車が並ぶ

ウガンダ支店で現地スタッフらと打合せをする川地さん(写真右奥)ウガンダ支店で現地スタッフらと打合せをする川地さん(写真右奥)

PROFILE

株式会社3WM
設立:2006年
所在地:愛知県名古屋市港区浜二丁目3番5号 築港ビル2F(本社)
事業内容:自動車および自動車部品の輸出
協力隊経験者:4人(2017年7月現在)
HP:http://www.3wm.co.jp/

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