株式会社アキュート世界で戦える企業に
成長するための第一歩

  • グローバル人材の育成・確保

ITシステム開発や人材派遣事業を手掛ける株式会社アキュートは、2010年の創業当時わずか3人だった従業員が40人にまで増えるなど、急成長を遂げている。「世界で戦える企業」となることを創業当時から目標に掲げる同社は、2015年に民間連携ボランティア制度を活用して、社員をペルーに派遣した。その背景や狙い、成果などについて、同社代表取締役の永吉拓哉(ながよし・たくや)さんに話を聞いた。

JICAの充実したサポート体制を知り派遣を決断

当社の事業は、IT、物販、人材派遣の3つから成り立っています。IT事業ではシステムの開発を行い、物販事業ではシャンプーやリンス、ネイルといった日本製品を中国や韓国などの海外市場に向けて輸出しています。また人材派遣事業では、事務や経理職、コールセンターのオペレーター、家電量販店の販売員などを取引先企業へ派遣しています。

まったくゼロからの出発でしたが、創業当初から「世界で戦える企業」に成長することを目標に掲げてきました。グローバル化が進んだ現代社会で生き残り、こうした目標を達成していくためには、常に海外を意識しなければなりません。

JICAの民間連携ボランティア制度を知ったのは約3年前、中小企業を対象としたJICA事業の説明会に参加した時でした。海外展開に向けた人材育成の必要性を感じてはいたものの、当社のような中小企業は資金力が乏しく、なかなかそのような余裕はありません。そのため、同制度を活用して社員を青年海外協力隊として派遣すると、その間の人件費が補てんされることは大きな魅力でした。そして、何よりも世界中に拠点を持ち、これまでに多くのボランティアを派遣してきたJICAの事業であること、隊員の安全を確保し、サポートする体制が整っているという安心感もあり、社員の派遣を決断しました。

代表取締役
永吉 拓哉さん

自信を深め帰国した社員

実際に派遣することになったのは、世界30カ国を旅した経験があり、入社当初から海外で働きたいという夢を語っていた大三川勝人(おおみかわ・まさと)さんです。彼は英検準1級、TOEIC900点の実力がありながら、なかなかその力を発揮し切れずにいました。そのような彼が、慣れない土地や慣れない言語、慣れない習慣の中で悪戦苦闘しながら活動することで、自信を付け、後輩社員たちのモデルになってほしいという思いがありました。

派遣先については、治安の良さに加えて、日本と貨幣価値の差が大きい国という希望をJICAに伝えました。それは、将来その国でビジネスを展開することを想定した場合、日本円では少額でも、現地通貨で考えれば大きな投資ができるからです。中小企業の場合、リスクを考えると多額の投資はできないため、これは重要な要素です。こうした会社側の考えと、本人が南米を希望したこともあり、数カ国の候補の中から最終的にペルーに決まり、2015年1月から1年間、青年海外協力隊として派遣されることになりました。

大三川さんは「マーケティング」という職種でペルーの観光都市クスコにある農業省の地方事務所に配属されました。その配属先からは、住民の収入向上を目的に地元の婦人会が作る手づくりクッキーの売り上げを増やすことが期待されていました。このクッキーは最近日本でも話題になっている栄養価の高い「アマランサス」(現地名:キウイチャ)という、インカ帝国時代からの伝統穀物を使ったものです。彼は、これまで日本で培ってきたマーケティングの知識や経験を踏まえ、スーパーや旅行代理店、キオスク、ホテルなどへの販路を開拓したり、贈答用としても喜ばれるように箱入りの商品を開発したりと、利益を大きく伸ばしたと聞いています。

現地の人たちとは労働やビジネスに対する考え方が大きく異なり、またボランティアとして受け入れてもらうのにも相当苦労したようですが、彼の報告書を見ると、「物事が思い通りに進まなくてもそれが当たり前、簡単にはあきらめない」「相手のよいところを見つけて、それを生かす方法を考えること」「怒らず、急かさず、長い目で見ながら結果を出していくことが必要」といったことを実感したようです。

実際に帰国した大三川さんに会ってまず感じたのは、自分自身に対する自信を深めたということです。派遣前とは違って人前でのスピーチも堂々としたもので、私が期待していた以上に成長していることが見てとれました。また、仕事というのは与えられるものではなく、自分で探して作っていくものだというベンチャー精神も身に付いたように思います。現在、その大三川さんには国内営業所の新規立ち上げを担当してもらっています。

大三川さん(写真右)は婦人会のメンバーと手作りクッキーの販売も行った

「手作りクッキーを購入してくれた女性との何気ない会話の中にも、売り上げを伸ばしていくヒントがある」と大三川さん(写真左)

ペルーの観光産業にも貢献する新規事業

今回のボランティア派遣を機に、当社はペルーでの事業展開を進めていきたいと考えています。ペルーは日本や欧米からの外国人観光客が増えているので、観光客向けのお土産品を現地で製造し、販売する計画を立てています。観光資源の一つであるお土産品を開発することで、観光地としての魅力を高めることにもつながればと期待しているところです。

今年中にも現地法人をつくる予定で、1カ月単位の収支計画書をまとめる段階にまできています。もちろん、この事業を担当しているのは大三川さんで、現地の文化・風習にも慣れている彼に現地法人を任せたいと思っています。

嬉しいことに、こうした彼の活躍ぶりを見て、協力隊に興味を持つ社員が出てきています。語学力などクリアすべき問題はありますが、会社としても語学研修を実施してサポートしつつ、それぞれが個別にブラッシュアップする努力を促しています。そして二人目、三人目と社員をボランティアとして派遣する機会が得られれば、本人にとっても会社にとっても大きなプラスになると考えています。

今後も、「海外で戦える企業」を目指し、その足掛かりとなる海外市場の開拓と、それを担う人材育成の場として、JICAの民間連携ボランティア制度を活用していきたいと思います。

PROFILE

株式会社アキュート
設立:2010年
所在地:東京都千代田区三崎町3-10-4 ウィスク三崎町ビル4階
事業内容:IT、物販、人材派遣
従業員:40人(2016年5月現在)
協力隊経験者:1人(同)
HP:http://www.a-cute.co.jp/
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