あいおいニッセイ同和損害保険株式会社海外戦略をリードしていく人財の育成に
今後も民間連携ボランティア制度を
活用したい

  • グローバル人材の育成・確保

損保大手のあいおいニッセイ同和損害保険株式会社は、「テレマティクス保険」という今、業界で最も注目されている自動車保険の商品開発力を強化するために、2014年に英国のボックス・イノベーション・グループ(BIG)を買収。また近年、トヨタ自動車と連携した海外事業も積極的に進めていることにも関係して、グローバル人材を育成していくことが経営戦略上、重要になっています。そうした中で、2014年に初めて民間連携ボランティア制度を活用し、青年海外協力隊の隊員として社員をパラオに派遣。そして現在、3人目となる社員を派遣するための準備を進めているという同社人事部人財革新グループ長の中嶋督人(なかじま・よしと)さんに、これまでの経緯や狙い、同制度に期待することなどについて聞きました。

「骨太人財育成」の方針にマッチ

テレマティクス保険とは、加入者(車)の走行距離やアクセルやブレーキの踏み方といった運転特性を分析し、それに基づいて保険料を算定する商品です。走行距離が短くて安全運転をする加入者の保険料が安く抑えられるという合理性・公平性から、欧米での導入が進んでいます。われわれもこの新しいタイプの自動車保険の商品開発力を強化するため、2014年に英国のテレマティクス市場最大手のBIG社を買収しました。

今年に入り日本でも各社がテレマティクス関連の新商品・サービスを発表していますが、当社もこの4月に「つながる自動車保険」という実走行距離連動型の個人向け商品を発売しました。これはパートナー企業であるトヨタ自動車が開発したカーナビをインターネットでつなぐ「T-Connect」を搭載した車向けの商品ですが、トヨタ自動車とはこれ以外にも海外事業などで連携していることもあり、ますますグローバルな視点と資質を備えた人財が必要になってきています。

民間連携ボランティア制度を活用して、当社の社員を青年海外協力隊の隊員として初めて派遣したのは2014年4月です。その前年、6月ごろにJICAの担当者から民間連携ボランティア制度について話を伺う機会があり、職種や派遣国を企業ごとに相談しながら決定できることを知りました。もともと、さまざまなところでさまざまな経験を積んだ多様な人財を育てていく「骨太人財育成」という方針のもと、国内の異業種企業への出向や海外での語学研修などを実施してきましたが、職種や派遣国を決めていく際にこちらの意向が反映される民間連携ボランティア制度は、まさに当社の“人財育成”の方針に合致するものでした。

人事部人財革新グループ長
中嶋 督人さん

女性の活用推進にも貢献

派遣する社員は自主性を尊重するため社内公募という形になりました。6人の応募者の中から選ばれたのは、当時入社7年目で、リテール営業部に所属していた菊地紀子さんです。

「授業で出会ったアジアの留学生が海外での経験を生かして成長している姿に刺激された」
「私も海外でたくましい精神力を身につけアジア圏のビジネスに関わりたい」

応募動機にこう書いてきた彼女は、MBA(経営学修士)を取得するために自費で夜間の大学院に通っている努力家でした。当社は、これまで駐在員を含めて女性を海外に派遣した例はほとんどなかったのですが、彼女の強い意志と行動力、そしてバイタリティーは他の応募者を圧倒していました。そこにわれわれも大きな可能性を感じたのです。

菊地さんの任地はパラオの南西部に位置するペリリュー島。ゴミ問題が深刻になりつつある中で、ゴミの分別と3R(リデュース、リユース、リサイクル)を推進する「環境教育」という職種でした。当社の事情に合わせていただき、現地への派遣は9ヵ月と短期間でしたが、月1回送られてくる詳細なレポートからは、生活習慣や文化の違いにとまどいながらも問題点を洗い出し、解決のための計画を立て、それを実行していこうとする中で日に日にたくましくなっていくのが分かりました。

9ヵ月の活動を振り返って、彼女は最後のレポートに「相手の意見を尊重しながらも自分の考えを持つこと、それを伝える大切さに気づいた」「国内外を問わず大切なのは人とのつながりや信頼関係であり、そのためには日々自分ができることに一生懸命取り組み、相手から信頼を得ると同時に相手を受け入れ、認めることが大切だ」と綴っています。

その気づきや成長をもとにさらなるステップアップを図るため、パラオから帰国した菊地さんを派遣前に所属していた営業部に戻すのではなく、当社と業務提携をしている韓国のソウルにあるロッテ損害保険に出向してもらいました。所属は業務協力室というところで、当社とロッテ損害保険の間に立って両社の情報交換と意思疎通を円滑にする仕事ですが、文化の違いを考慮した商品の開発に協力隊での経験が生きています。正直に言うと、社内公募に手を挙げてきたときはこちらが不安に思うほどの語学力だった彼女ですが、今では語学も堪能なグローバル人材として実力を発揮し、将来を嘱望される社員として活躍してくれています。

菊地さんは州知事からの協力を取り付け、ペリリュー島のイベントで缶・ペットボトルの分別回収に取り組んだ(写真右)

事業戦略の一環として継続派遣を

隊員経験を通じて成長する菊地さんの姿を目の当たりにして、次は、より直接的に当社の海外事業戦略に沿った形で社員を派遣したいと思い、JICAに相談しました。そして提案いただいたのがベトナムのカントー市にある投資貿易観光促進センターで、ベトナムへの投資やベトナムとの貿易などを拡大させるお手伝いをするという内容でした。職種は「経営管理」というのですが、これは青年海外協力隊の中では非常に珍しいものだと伺っています。この要請に社内公募を経て、2015年7月から1年間の予定で派遣されているのが営業部出身の青山昌弥さんです。

青山さんが活動するベトナムは、まさにこれからの国です。まずは隊員としてしっかりと、ベトナムの経済発展のために頑張ってほしいと考えています。そして、ベトナムは自動車やバイクの保険の市場としてこれから期待できるという意味でも、隊員活動を通して培われた経験、ネットワークを復職後に役立ててくれることを期待しています。

実は今、3人目の派遣についてもJICAに相談しているところです。派遣国については中東、アジア、アフリカと幅広く挙げさせていただきました。その中から2016年はラオスに候補者を立てることになりました。ラオスを含むメコン川流域は、当社のパートナーであるトヨタ自動車が力を入れて事業展開を進めている地域でもあり、協力隊経験がダイレクトに生かせると感じています。

今後も、ビジネスパートナーとともに海外戦略をリードしていく人財を育成するために、JICAの民間連携ボランティア制度を積極的に活用していきたいと考えています。

小学校で資源リサイクルの大切さを子どもたちに伝える環境教育授業を行った菊地さん(写真上列右端)

PROFILE

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
設立:1918年
所在地:東京都渋谷区恵比寿1-28-1
事業内容:損害保険
HP:http://www.aioinissaydowa.co.jp/
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