株式会社アレックスソリューションズ今後の成長に欠かせない
協力隊の「0から1をつくる力」

  • グローバル人材の育成・確保

株式会社アレックスソリューションズは、自社のエンジニアを取引先のシステム開発系の会社に派遣し、海外との取り引きをサポートするベンチャー企業で、最大の強みは在籍するすべてのエンジニアが語学に堪能なことだ。海外に留学経験のある日本人、日本に留学していた海外の人材を採用して、IT技術を習得してもらうことで、日本と海外のエンジニアを橋渡しする「ブリッジ・システムエンジニア」を育成している。同社はこれまで青年海外協力隊経験者を3人採用し、2014年には民間連携ボランティア制度を通じて社員をマラウイに送り出している。同社のユニークな人材育成制度や協力隊の魅力などについて、代表取締役の大野雅宏(おおの・まさひろ)さんに話を聞いた。

留学経験者をブリッジ・システムエンジニアに

今日本では、コスト削減のためにサーバーを海外に置いたり、システム開発をインドや中国、ベトナムなど人件費の安い国にアウトソーシングしたりするシステム開発会社が増えています。そうした中で、語学力があり、プログラムを書くことや機器のメンテナンスもできるエンジニアに対する需要が高まっているものの、その数は圧倒的に不足しているのが現状です。

そこで当社は、日本語と英語でコミュニケーションができる留学経験者を採用し、入社後にさまざまな研修を通じてITの知識や技術を身に付けてもらうことで、語学に強いエンジニアを育成しています。私たちが育成しているエンジニアというのは、高度なIT技術を駆使してシステム開発を担う人材ではなく、語学力やコミュニケーション能力が高いことが強みで、日本と海外のシステム開発会社、あるいは高度な知識や技術を持ったエンジニアの間を橋渡しする役割を担っていることから“ブリッジ・システムエンジニア”と呼ばれているものです。

このようなエンジニアの育成をはじめたのは、私自身、学生時代に考古学への興味からエジプトに留学してアラビア語を学んだものの、日本でその語学力を生かした仕事に就くことができなかったという経験があったからです。

卒業後、やむを得ず学習塾の英語講師をしていたところ、ITベンチャー企業を立ち上げた友人の誘いで、IT業界に入りました。海外との取り引きや海外進出を目指しているシステム開発会社からの依頼を受け、エンジニアに異文化コミュニケーションなどを教える研修を担当していて感じたのは、日本のエンジニアは技術的にはとても高いレベルにあり優秀な方々ばかりなのですが、もっぱら国内に目を向けた人が多く、英語に堪能な人材が少ないということでした。研修で語学力やコミュニケーション能力を高めようとしても、そう簡単なことではありませんでした。こうしたIT業界の人材事情と、留学経験者といっても語学力だけでは活躍できる場が少ないという問題意識が結びつき、語学が堪能な留学経験者がITの技術を習得すれば必ず需要はあると考え、2007年にアレックスソリューションズを立ち上げました。

代表取締役
大野 雅宏さん

取引先から高く評価される青年海外協力隊経験者

当社では「留学生」という概念を大学などで学んだ人だけではなく、「海外に行って何かを経験してきた人」ととらえ、ボランティア経験者などを広く採用しています。その理由は、語学ができるということは前提としてあるのですが、それに加えコミュニケーション能力やバイタリティーといった点を重視しているからです。こうした考えから、2009年にブータンで活動していた協力隊経験者を2人、2010年にはタンザニアで活動していた協力隊経験者を1人採用しました。日本の国内を向いているエンジニアとは対極にある彼らが特に取引先からとても受けがいいのは、人間的な魅力に溢れているからだと感じています。

取引先企業が増え、また取引先から高く評価されていることもあり、協力隊経験者の採用を積極的に進めていきたいと思い、JICAで行われている協力隊の帰国報告会に出席し、そこで当社の採用説明を行う機会をいただいています。そうしたJICAとのつながりの中で、民間連携ボランティア制度について話を伺い、当社の社員向け海外研修制度の一環として活用していきたいと考えました。

今回、民間連携ボランティア制度を活用するに当たって、「アフリカ」「英語を使ったIT業務」「期間は4ヵ月程度」という要望を出したところ、マラウイの大学から学内のITネットワークを構築するという要請がありました。社内で参加希望者を募ると、3人が手を挙げてくれたのですが、取引先での業務との兼ね合いから、現実的に参加できそうな曽我祐二(そが・ゆうじ)さんに行ってもらうことになりました。

2014年10月に曽我さんが着任してみると、大学内ではすでに無線LANの整備が進みつつあったことから、パソコンやプリンター、サーバーといったIT資産の管理やホームページの編集など、大学側が今後取り組むべき課題を洗い出し、優先順位を付け、整理してきたと聞いています。派遣されていた期間中には、大学職員のストライキや洪水被害による停電など、予期せぬ事態に見舞われたようです。帰国後、曽我さんは元の取引先に戻ったのですが、突然のトラブルや海外出張などに動じることなく業務をマネジメントできるようになったのは、協力隊での経験があったからだと感じています。たった4ヵ月間の活動では、それほど得るものはなかったのではと思われるかもしれません。しかし、こうしたアクシデントへ対応する能力だけでなく、現地の人たちと生活を共にすることで見えてくるものがあると思うのです。

配属された大学の同僚と曽我さん(写真右)

0から1をつくる力

今後、日本企業が開発途上国や新興国に進出していく中で、当社が日本で行っている業務を現地でも行ってほしいというニーズが増えていくのではないかと考えています。当社は現在、シンガポールとスリランカに拠点を設け、日本語が使える現地の人にIT技術の研修を行い、現地の取引先企業に派遣しているのですが、今後、より積極的に海外拠点の開設を進めていく計画です。

アジアの次はアフリカに海外拠点を持ちたいと考えていた私にとって、社員が生活者の視点でマラウイのITの現状を直接見る機会が得られたことは、今後の海外展開に向けた大きな一歩となりました。

協力隊の活動は、だれかが段取りをつけてくれるというものではありません。実際に現地に行って課題を見つけ、その解決に向けた活動の中で身に付くのが「0から1をつくる力」ではないでしょうか。

民間連携ボランティア制度を通じて社員を開発途上国に派遣することで、そうした能力を高めていってほしいと考えています。当社が今後進めていく海外拠点の開設は、まさにそうした能力が求められます。当社のように規模が小さい会社は、海外拠点の開設に割ける人員は限られており、ほぼ何もないところから一人で事務所の開設からクライアントの発掘まで行っていく必要があります。こうした「0から1をつくる力」を養う協力隊での経験は、今後、当社が成長していく上で欠かせないものだと考えています。

PROFILE

株式会社アレックスソリューションズ
設立:2007年4月
本社所在地:東京都港区赤坂2-9-2 WAY TOWERS 7F
事業内容:研修、ブリッジカスタマーサービス、システム開発、ローカライズ事業など
従業員:125名(2016年1月現在)
協力隊経験者:4名(2016年1月現在)
HP:http://www.alexsol.co.jp/
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