熊本県芦北町独自の国際化を進める
世界に開かれたまち

  • グローバル人材の育成・確保
  • 研究・教育プログラムの強化

町民参加型の国際事業を展開

芦北町は熊本県南部に位置する、人口約2万人の町です。「すべては21世紀を担う子どもたちのために」を基本理念のひとつに掲げ、教育はもちろん、スポーツ、文化や国際交流など、ソフト面の施策にも重きを置いています。中でも、国際交流の面では、行政と町民が一体となった積極的な取り組みをしています。

 私が町長に就任した1990年代半ばというのは、国際化や国際交流という言葉があらゆるところで飛び交い、自治体は姉妹都市関係を結ぶことに奔走していた時代でした。しかし私は、町にとって国際化とは何であり、どうあるべきかを考えてから施策や事業を展開すべきだと考えていました。ただ時流に乗って取り組んでも、目的もあいまいで、中身のないものになってしまう。だから、世界に目を向け、故郷や日本を愛する心を育む「ひとづくり」を目的と定め、国際事業に取り組んできました。例えば、カンボジアの学校建設支援は今年で15年目、小学校で始まった取り組みが町民運動として定着するまでになりました。単にお金を送るのではなく、町の小中高生自らが、バザーや募金活動を行うほか、米やサラダ玉ねぎを栽培し、それを売ることによって得た収益などを送っています。ほかにも、海外からの研修員受け入れ事業や町民を対象とした外国語講座の開催、そして町役場における青年海外協力隊への現職参加推進などがあります。

熊本県芦北町長
竹﨑 一成さん

世界を目指す若者にチャンスを

今まで町から、青年海外協力隊に参加した若者はいますが、帰国後の再就職が大変困難だと聞き、「有為の青年が国際貢献のためにがんばってきたのに、帰ったら仕事がないなんて、そんなおかしな話があるだろうか」と思いました。所属していた企業に戻れたり、町内企業に採用してもらえたりすればいいけれど、なかなかうまくいかない。それなら、町役場で前例をつくろう、民間に先駆けて町役場からグローバル化を進めようと考えたのです。そこで、協力隊などに町職員が参加しやすくするため、派遣中の身分と帰国後の職場復帰を保障する条例()を2000年に制定しました。九州の町村では初めて、町村レベルでは全国でも珍しい事例です。その条例を活用し、01年に第1号の職員がニカラグアに派遣され、ボリビア、ガーナと続き、計3人の職員が協力隊への現職参加をしてきました。

 役場の仕事は、住民と直接対峙するから辛いことも多い。ですが、帰国した職員は忍耐力を持って、地味な仕事でも情熱を抱きながら取り組んでくれている。海外でいろいろなことを経験してきたからこそ、多岐にわたる仕事ができ、ジェネラリストとして活躍してくれています。

左から、竹﨑町長と協力隊に参加した3人の職員
(寺川さん、上野さん、宮本さん)

未来を担う子どもたちのために

外国を訪れることや、外国の歴史・文化を知ることは、自分の住む国や地域を見つめ直す機会となるだけでなく、豊かな心を養います。私自身、町長になる以前の町議会議員時代に中国や韓国で研修を受け、歴史観の大きな違いなどにショックを受けましたが、同時に視野が広がり、柔軟に物事を考えられるようになりました。カンボジアの学校建設事業では、建設した学校を、事業にかかわった芦北の子どもたちが訪れる機会があります。帰ってくると「何も知らなかったことが恥ずかしい」「将来は国際平和のために働きたい」などという子どももいます。世界に触れることで、国際貢献や世界平和の大切さを学び、幅広い視野を持つ人間、懐の深い人材に育ってほしい。それは同時に、自分の住む町や地域をかえりみるきっかけになるでしょう。

 過疎化や高齢化など多くの問題を抱える地方にとって、自分の町を見直し、町民としての誇りを持つことはとても重要です。町役場から現職で協力隊に参加した職員は、経験を仕事に生かすだけではなく、子どもたちに体験を話すなどの活動も行っています。彼らは、国際化をすすめる芦北町の未来を担うグローバル人材と言えるでしょう。今後も、芦北町の国際化に向けた活動を継続・発展させ、そういったチャンスを子どもたちに与えていきたいと思っています。

※ 「外国の地方公共団体の機関等に派遣される職員の処遇等に関する条例」

PROFILE

熊本県芦北町
所在地:熊本県葦北郡芦北町大字芦北2015
職員数:238人(2013年11月現在)
HP:http://www.ashikita-t.kumamoto-sgn.jp
一覧に戻る

TOP