株式会社ブレインワークス「仕事は自分で創るもの」という
当社のモットーに通じる協力隊

  • グローバル人材の育成・確保

株式会社ブレインワークスは「日本の中小企業を元気にする」をモットーに、ビジネスプロデュースや海外進出に向けたサポート事業に取り組んできた。近年は特にアジアでの事業を拡大するなど、グローバルに活躍する社員も増えている。こうした流れの中で、2015年に民間連携ボランティア制度を活用し、社員を青年海外協力隊としてアフリカのウガンダに派遣した。同制度を活用することになった経緯や帰国後の社員の変化などを代表取締役の近藤昇(こんどう・のぼる)さんに聞いた。

本人からの申し出がきっかけに

当社は1993年の創業以来、経営、リスクマネジメント、ブランディングなど、多くの中小企業を支援してきました。現在、特に力を入れているのが、海外でのビジネスサポートです。経済成長が著しいアジアの国々には、日本から多くの中小企業が進出しています。当社自身も18年前にベトナムに進出し、事業を展開してきました。現在はその経験やこれまで築いてきた情報網、人的ネットワークなどを生かしながら、企業の進出支援に携わっています。

こうした事業を行っていることもあり、社員の勤務地や出張先もアジア各地に広がってきています。入社してくる社員も海外志向は強い方だと思います。JICAの民間連携ボランティア制度を活用して青年海外協力隊に参加した渡辺慎平(わたなべ・しんぺい)さんもその一人です。JICAが行っている中小企業海外展開支援事業に当社やクライアント企業が応募したことがあり、民間連携ボランティア制度のことは知っていました。しかし私自身、自社でこの制度を活用するというアイディアはありませんでした。当社にとっては民間連携ボランティア制度も青年海外協力隊もあまり身近ではなく、制度は知っていても「自分たちにはあまり関係ないもの」と勝手に線引きをしていたのかもしれません。

そんな私が民間連携ボランティア制度の活用を検討することになったのは、渡辺さんから相談があったことがきっかけです。彼は、自身のキャリア形成に役立つこと、海外事業を積極的に進めている当社にとっても大きなメリットがあることなどを踏まえ、「民間連携ボランティア制度を使って青年海外協力隊に参加したい」という希望を伝えてきたのです。当時、当社にとって彼はすでに貴重な戦力となっていたので、会社に籍を置いたまま参加でき、また派遣国や職種などを相談しながら決められる民間連携ボランティア制度は魅力的なものでした。

代表取締役
近藤 昇さん

今後は協力隊経験者の採用も検討

2年間の活動を終えて2017年1月に帰国した彼を見ていると、以前よりも自信を持って仕事に取り組んでいることが分かります。先日も一緒にインドに出張したのですが、交渉に長けたインド人ビジネスマンと堂々と渡り合っているのを見て、英語、そしてコミュニケーション能力が格段に向上していることに驚きました。常々、海外でビジネスを展開していく上で一番大切なのはコミュニケーション能力だと感じている私にとって、これはとても大きな変化でした。

さらに、渡辺さんはプレゼンテーションもとても上手になっていました。今の若者には、プレゼンテーションを行う前に何度も練習をして何とかそつなくまとめようとする傾向があります。しかし、若いうちは小手先のテクニックではなく、熱意をもって伝えることが何よりも大事です。彼はもともとそういう力を持っていたのですが、協力隊に参加したことで、それがより際立ったように感じます。当社は毎月のように中小企業の経営層向けにさまざまなビジネスセミナーを開催しているのですが、彼のプレゼンテーションに対する評価は非常に高いものがあり、実際に多くの参加者からお褒めの言葉をいただいています。

また、渡辺さんが協力隊に参加したことは、仕事に対する積極性といった面で、他の社員にも少なからず良い刺激を与えています。彼に影響されて協力隊に参加したいという社員が現れることを期待しています。

当社のモットーは「仕事は自分で創るもの」です。これは、言われたことをやるのではなく、自分でやるべきこと、やりたいことを見つけてやるという意味です。青年海外協力隊の活動も同じではないでしょうか。実際、帰国後の渡辺さんの仕事に対する姿勢を見ていると、当社が一番大事にしているその感覚が、さらに磨かれていることが分かります。民間連携ボランティア制度を活用して社員を協力隊として派遣したのは渡辺さんが初めてですが、今後も二人目、三人目と同制度を活用して社員を派遣していきたいと考えています。また、協力隊経験者の採用についても前向きに検討しているところです。

JICAボランティア経験者から

アジアビジネスサポート事業部長 渡辺慎平さん
高校時代からの憧れだった協力隊

2015年1月から2017年1月までの2年間、民間連携ボランティア制度を活用して青年海外協力隊に参加しました。参加を決めた理由の一つは、もともと協力隊への憧れがあったからです。高校生の時にテレビや広告で海外ボランティアを知り、大学では学校のボランティアセンターの活動に参加し、ラオスで学校建設と教育支援を柱としたプロジェクトの立ち上げに関わることができました。ブレインワークスに入社を決めたのも、このプロジェクトがきっかけで、ビジネスの枠組みで開発途上国に貢献したいと思うようになったからでした。

そしてもう一つの理由は、未開の地に挑戦したいという思いがあったからです。また、仕事でベトナムのプロジェクトに従事している時に、経済発展が著しいアジアは、もう自分が主役になる場所ではないと考えたことも事実です。「だれも持っていない経験を自分の武器にしよう」と考えたときに浮かんだのが“最後のフロンティア”と呼ばれるアフリカでした。社内で最初にアフリカに関わることができれば、自分の強みになります。また、日本の中小企業の中でも、少しずつアフリカへの関心が高まってきていると感じていたことも関係しています。

社長に「協力隊に参加したい」という希望を伝えるに当たり考えたのが、民間連携ボランティア制度の活用でした。この制度には、派遣国や職種、活動期間などをJICAと相談しながら決めていけるというメリットがあり、会社としても送り出しやすいのではないかと考えたのです。もし認められなければ会社を辞めることも覚悟していましたが、私の決断を快く受け入れ、応援してくれました。その後、JICAと相談していく中で、派遣国はアフリカのウガンダに決まったのですが、その理由の一つは公用語が英語だったためです。英語であれば間違いなく帰国後も生かすことができます。

修理された井戸の前で住民らと談笑する渡辺さん

小学校で行った衛生教育では手洗いの重要性などを子どもたちに伝えた

海外で確認できた自身の成長

協力隊員としての私に期待されていたのは、安全な水を確保することや子どもたちへの衛生教育を行うことでした。活動地となったゴンバ県は陸の孤島と呼ばれるほど開発が遅れており、水道は整備されていません。住民の飲み水を賄うために掘削された井戸は壊れたまま放置され、慢性的な水不足に陥っていました。

そこで、既存の井戸を修理し安全な水を確保する、コミュニティの依存体質を改善し自主的な維持管理システムを構築する、衛生教育の普及と質の向上を図る、スモールビジネスを推進しコミュニティの所得を向上させるという4つの活動方針を設定。井戸の修理や維持管理の方法を伝えるためのワークショップのほか、雨水タンクの設置、水管理委員会の立ち上げ、小中学校での衛生教育などを実施しました。さらに、コミュニティの青年グループや女性グループと連携しながら、魚の養殖、養豚、山羊牧場、養鶏農家組合の設立など、スモールビジネスの創出にも取り組みました。

現地で活動をする中で一番のターニングポイントとなったのは、モーゼスとの出会いでした。配属先である県庁の職員が、地域を巡回するときのガイドとして彼を紹介してくれたのですが、定職に就いておらず時間に余裕があったこともあり、私の活動をサポートしてくれました。何の見返りも求めず手伝ってくれる彼の人柄に引かれ、スモールビジネスに取り組む時のパートナーとしても、共に活動しました。現地の事情や住民の心情をよく理解しているモーゼスがいたからこそ、より効果的に活動ができたのは間違いありません。その彼は現在、地域の青年会議所のリーダーとして活躍しています。私と取り組んだスモールビジネスの活動が多くの住民らに評価され、選挙で選ばれたのです。私が帰国する時にプロジェクトを彼に引き継いできたのですが、例えば養豚プロジェクトは100人ほどが携わるまでに拡大するなど、確実に成果が見えるようになっています。今後、彼がプロジェクトを継続してくれれば、近い将来、住民らにとって重要な収入源になっていくはずです。

2年間の活動で実感したのは、ブレインワークスで5年間働いて得たものの大きさでした。ブレインワークスは小さな会社ですので、一人が何役もこなしながらプロジェクトを前に進めていかなければなりません。ウガンダでコミュニティを巡回し問題を分析することから始まり、方針を立て、活動を計画的に進めていくことができたのは、日本での社会経験があったからです。現地に赴任して「何をすればいいか分からない」と戸惑うことはありませんでした。もちろん人にもよりますが、私の場合、大学を卒業してすぐに協力隊に参加していたら、こうはいかなかったと思います。入社してからの5年間は社長に厳しく指導されながらがむしゃらに働いてきましたが、協力隊に参加したことで自分がそこで何を得てどのように成長したのかを実感することができ、大きな自信となりました。

私が協力隊として活動していた2016年5月、社長がウガンダに来てくれたことがありました。アジアではさまざまな国でビジネスに関わってきたものの、アフリカには縁がなかった当社ですが、社長の訪問を機に一気に関心が高まり、事前調査を進めた結果、2016年9月にはウガンダの隣国であるルワンダに現地法人を設立しました。

当社のアフリカ展開は、幸いなことに協力隊経験が評価され、私が中心となって進めています。現在はケニアの建設プロジェクトやルワンダの農業人材育成プロジェクトなどが動き出したところです。経済成長が著しいアジアとともに、これからの発展が期待される「最後のフロンティア」であるアフリカでも活躍できるよう、日々の業務に全力で取り組んでいます。

※このインタビューは2017年3月に行われたものです。

活動を支えてくれたモーゼスさん

PROFILE

株式会社ブレインワークス
設立:1993年
所在地:東京都品川区西五反田6-2-7 ウエストサイド五反田ビル3F(本社)
事業内容:ビジネスプロデュース・海外進出サポート
協力隊経験者:1人(2017年4月現在)
HP:http://www.bwg.co.jp/index.html
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