秋田県大仙市協力隊経験者は
行政が求めるオールラウンドプレイヤー

  • グローバル人材の育成・確保
  • 広報協力

秋田県の南東部に位置する大仙市は、2005年に大曲市を含む近隣8市町村が合併し、誕生しました。「大仙」の名前は、「大曲市」と「仙北郡」の頭文字に由来しています。

 私は、大仙市が誕生した2005年に市長に就任したのですが、JICAさんの事業に対しては、合併前の大曲市長時代から、大きな関心を持っていました。自治体として、より活発な国際交流・国際協力を推進したいとの考えを持っていたためです。したがって、JICAさんの青年海外協力隊募集のポスター掲示などについては、大曲市長時代から全面的にご協力させいただいており、大仙市としても、合併した当初から、同様の考えで取り組んできました。そして2008年度、男女共同参画・交流推進課の新設を機に、JICAさんの事業を正式に支援させていただくようになったものであります。

 大仙市では、広報誌(「広報だいせん」)のなかに『Hello my friends』というコーナーを設け、大仙市から青年海外協力隊等、JICAボランティアとして開発途上国へ行かれている皆さんのレポートを掲載しています。苦労しながらも活躍されている皆さんの生の声を市民に伝えることが、現地で頑張る皆さんへの励ましにつながるとの考えから、このコーナーを継続的に設けています。また、読者である一般市民の皆さんも、自分と同じ大仙市民が、遠い国で活躍していることを知ることで、遠い国に親近感を持つようになるかもしれませんし、開発途上国が抱える諸問題に関心を持つようになるかもしれません。実際に、市民の皆さんからは、『Hello my friends』で紹介した記事に対する声が寄せられており、こちらについても広報誌に掲載しています。ある50代の男性は、パプアニューギニアへ行かれた協力隊員が、「相手の立場で考えることの大切さを学んだ」とレポートしたことに対して、「とても良いことだと思います。帰国後は、現地で学んだことを日本社会に役立ててほしい」とのお便りをくださいました。ある40代の女性は、「ザンビアという身近ではない国のことがストレートに伝わってきて勉強になった」との感想をくださいました。小さなことかもしれませんが、国際交流や国際協力の第一歩は、こうした関心を持つことから始まっていくのだと思います。大仙市のような地方都市では、2年にわたり海外へ行く、しかもボランティアで開発途上国へ行くということに対して、まだ保守的な考えをお持ちの方もいらっしゃいます。しかし、同じ地球上にある国として、日本が他国に対して何か力になれることがあるのだとしたら、海外へ出ていく日本人の存在は必要ですし、行政にはそうした人たちを支えていく義務があると思います。

 そのような考えもあり、2006年度には、現職参加を可能にする市条例を整備しました。「世のため、人のため」という、ある意味、市職員にも通じる志を持って青年海外協力隊に参加する市職員が、帰国後も活躍できるようにするのは、市の役目だと考えたためです。2年にわたる不在を心配する声も聞かれますが、組織全体で1,100人ほどの職員がいるのですから、1人が2年間不在になったとしても、そこはカバーし合えるでしょう。それが組織力というものだと思います。そして、協力隊経験者のように、自らの創意工夫と、現地で磨かれたコミュニケーション能力で、困難を打破してきた人は、どんな難しい案件でも「なんとかする」という気力と実力を備えて帰国されるはずです。行政の仕事をする人間は、基本的にオールラウンドプレイヤーでなければなりませんので、協力隊経験者の皆さんのように、開発途上国での活動を通じて、いろいろな人に出会い、いろいろな問題に直面し、いろいろな方法で対応してきた人にこそ、市職員としてご活躍いただきたいのです。そんな考えもあり、2013年度採用からは、青年海外協力隊での経験を市役所でも生かしていただくチャンスの1つとして、青年海外協力隊経験者を含めた「職務経験者枠」を設けました。通常は5年の職務経験を求めるのですが、協力隊経験者の場合は2年間の海外活動経験で応募することができます。個人的な見解になりますが、青年海外協力隊の経験は、一般的な職務経験に比べてスケールも違うでしょうし、開発途上国で活動をする分、精神力も鍛えられることでしょうから、2年にわたる経験は、一般的な職務経験の5年分に見合うとの考えは妥当だと思っています。

 ほかにも、大仙市では、帰国した協力隊員の活動報告会を国際交流事業の一環として実施しており、市民の皆さんにもご参加いただいております。前回の報告会には約30名の市民の皆さんが、熱心に耳を傾けていらっしゃいました。活動報告会では、2名の協力隊経験者にお話しいただいたのですが、その際に感じたことは、協力隊経験者の皆さんは、自分の考えをしっかりとお持ちであるということ。そして、文化も言葉も異なるなかで、何かを成し遂げてきただけあって、非常にレベルの高いコミュニケーション能力を備えているということです。相手の話をきちんと聞く一方で、自分の主張もきちんとするという点は、協力隊経験者の皆さんに共通する資質だと思います。

 昨年、東北地方は、東日本大震災を経験しました。その際、先進国からだけではなく、多くの開発途上国からも温かいご支援をいただきました。これは、JICAをはじめとした国内におけるさまざまな組織が、長きにわたり開発途上国を地道に支援しつづけてきた結果であると私は思うのです。国境を越えて、互いが支えあう。そのための人材を、行政として大切にするのは当然のことです。したがって、今後も引き続き、青年海外協力隊等、ボランティア活動に参加しやすい職場や社会環境をつくる努力を、大仙市としても推し進めていきたいと考えています。

大仙市長
栗林 次美さん

協力隊経験者は、非常にレベルの高いコミュニケーション能力を備えていると語る栗林市長。

大仙市で行われた帰国隊員による活動報告会

PROFILE

秋田県大仙市
所在地:〒014-8601 秋田県大仙市大曲花園町1-1
HP:http://www.city.daisen.akita.jp/
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