寄贈先はナミビアの子どもたち

当社は2014年11月、FC東京のユニフォーム18着をJICAの｢世界の笑顔のために｣プログラム(※)で寄贈しました。ナミビアで活動する青年海外協力隊員を通じて同国オプヲ市のフットボールクラブに届けられる予定です。そこは、孤児やストリートチルドレン、失業した若者、貧困層の学生などが、サッカーを通じて生きる力をつけることを目的に活動しているクラブだとうかがっています。地球の反対側でFC東京のユニフォームを着た子どもたちが笑顔でボールを蹴る姿が見られるのは、私たちにとってもうれしいことです。現地からの報告が届いたら、FC東京のファンにもぜひお見せしたい。きっと喜び、｢国際貢献っていいな｣と感じてくれるのではないかと思っています。

　FC東京ではしばしばユニフォームのリニューアルを行うため、まだ使えるけれども破棄するほかないユニフォームがたくさん出てきます。今後も、それらをご提供することでお役に立てるようなチャンスがあるならば、ぜひ今回のような形でご協力したいと考えています。

｢世界の笑顔のために｣プログラムの贈呈式で佐々木十一郎JICA東京所長(右)にユニフォームを手渡す阿久根謙司FC東京社長(2014年11月現在)

クラブの国際化

FC東京は1999年のJリーグ加盟以来、｢都民のための地域密着型クラブ｣を目指し、小学校の体育の授業にサッカーコーチを派遣するなど、ホームスタジアムがある調布市とその周辺5市における地域貢献活動にも力を入れてきました。そんなFC東京がより輝くクラブとなるためには、｢国際化｣が不可欠だと考えています。FC東京はJリーグの中でも日本にいる外国人のファンが多いクラブなのですが、さらに海外の方々にもファンになってもらうことで、より充実した事業が可能になるからです。また、2006年からは外国籍の監督を迎えるようになり、選手やスタッフには彼らと良好な関係を築くだけの力が求められるようにもなっています。

　クラブの国際化の必要性を強く意識するようになったのは2012年のAFCチャンピオンズリーグへの参加でした。アジアを中心とする10カ国のクラブチームが戦った大会でしたが、選手もスタッフも大会を通してアジアのサッカー熱の高さを肌で感じるとともに、外国人とうまくやり取りする力の不足を実感させられました。そこで｢もっと海外にかかわっていこう｣ということになったのですが、当初はどのようなやり方でそれを実現していいのかがわかりませんでした。そうした中でチャンスを与えていただいたのがJICAでした。

　最初の連携は、JICAのプログラムで日本に滞在している途上国からの研修生を、FC東京の公式戦に招待する活動でした。これはホームスタジアムと同じ京王線沿線にあるJICA東京に相談して実現したもので、2014年5月からこれまで6回にわたり、のべ100人近い研修生に日本のプロサッカーの醍醐味を味わっていただきました。そうしてできたJICAとのつながりの中でご紹介いただき、参加させていただいたのが｢世界の笑顔のために｣プログラムです。

青年海外協力隊員との連携

FC東京は今後、特にアジアの国々でファンを増やしていきたいと考えていますが、そのためにはまず、日本で行っているような社会貢献活動をアジアの国々でも実践し、クラブのことを現地の方々に知っていただくことも必要かもしれません。しかし、例えばFC東京の選手やコーチが現地でサッカー教室を開くにしても、その相手を見つけるのは簡単ではありません。もし、すでに現地の子どもたちと関係を築いている青年海外協力隊員の方々から、｢この子たちにサッカーを教えてほしい｣というお話をいただけるなら、サッカー教室の開催も実現するかもしれません。

　サッカー選手の多くは、社会貢献活動に対する非常に高い意欲を持っており、常々｢自分は職業としてサッカーをやっている。その技術で人の役に立てることがあるならば、ぜひ協力したい｣と言っています。それは、自分の職業、自分の社会的役割に対する誇りの表れなのだと思います。

　しかし、そんな彼らでも、青年海外協力隊員のように2年間という長期にわたり、途上国の方々のために身を捧げるだけの勇気を持つことは難しいでしょう。協力隊に参加される方々は、それだけ高いボランティア精神をお持ちなのだと思います。そういう方々の力をお借りしながら、FC東京の選手やコーチたちが少しでもその力を途上国の人々のために役立てることができるようになるならば、素晴らしいことだと思います。

※｢世界の笑顔のために｣プログラム
開発途上国で必要とされている教育、福祉、スポーツ、文化などの関連物品について、ご提供くださる方々を日本国内で募集し、JICAが派遣中のボランティアを通じて世界各地へ届けるプログラム。