高知ファイティングドッグス球団株式会社球団の事業活性化に社内外の
青年海外協力隊経験者が貢献

  • グローバル人材の育成・確保
  • CSR活動

地域活性化事業で活躍

当社は、日本のプロ野球独立リーグ・四国アイランドリーグplusに所属する球団、高知ファイティングドッグス(以下、高知FD)の運営会社です。独立リーグはNPB(日本プロ野球)でプレーすることを目指す選手の研鑽の場ですが、一方で、もうひとつの経営理念に「地域への貢献」を据えています。高知県を本拠地とする高知FDの場合、県内でも特に選手たちが住む佐川町(さかわちょう)と、練習場のある越知町(おちちょう)で、地域の活性化に向けた事業に取り組んでいます。例えば、高知では農家の後継者不足が一つの問題となっていますが、高知FDではその解決の一助として、休耕地をお借りして米や野菜などの栽培を行い、自社ブランドで販売するという事業も行っています。
 そうした地域活性化の事業を担当しているのが、当社にいる二人の青年海外協力隊経験者です。彼らは途上国でのボランティア経験で得た広い視野や課題解決能力を発揮して、これまで高知FDが行ったことのないような事業のアイデアを提供してくれています。例えば、昨年は「国際化」を通じた地域の活性化を目指す事業として、高知FDの選手、県内の留学生、地元の子どもたちが一緒になってスポーツ交流や農作業体験などを行うプログラムをJICA四国にご協力いただきながら実現することができました。高知FDのスタッフに青年海外協力隊経験者がいなければ、こうした事業は発想することも、実現することもできなかったはずです。

代表取締役球団社長
梶田 宙(かじた・ひろし)さん

球団初のアフリカ人選手

高知FDではかねてから、中米や欧州、アジアなどの選手を積極的に受け入れ、チームの国際化をはかってきました。外国人選手が全選手の3分の1にあたる11人にまで増えた時期もあります。そうした中、2013年には球団として初めてアフリカの選手を受け入れました。ブルキナファソ出身のサンホ・ラシィナ君(16歳)です。彼を紹介してくれたのは、青年海外協力隊員として同国で野球の指導に当たった方でした。

 この青年海外協力隊経験者が、「ブルキナファソで自分が指導した少年を受け入れてほしい」とラシィナ君を熱心に売り込みに来たのは2013年の7月。その熱意に応えるべく、まずは1ヵ月間、練習生として受け入れることにしました。翌8月にトライアウトを受けてもらったものの、残念ながら合格とはなりませんでしたが、年齢からいってもまだ力が伸びる可能性も高いことから、2014年の3月からは1年間の期限で再び練習生として受け入れ、さらに2015年のシーズンも残留してもらうことが決まっています。

 ラシィナ君を紹介してくれた青年海外協力隊経験者は、ほかにいくつもの球団に受け入れを打診して回ったけれども、いずれも断られてしまったようです。当社の場合、ほぼ迷いなく受け入れを決めたのですが、それは主に二つの理由からでした。一つは、潜在的な能力への期待からです。ブルキナファソは、青少年が野球をする環境はまだ整っていないようですが、サッカーは非常に強い国です。もし同国の野球選手が高知FDのコーチ陣の指導を受けたら、どれくらいまで育つか。そうした期待がありました。私自身、昨年末まで選手としてラシィナ君とともにプレーをしてきましたが、この1年で彼は体格も技術も見違えるように成長してきていますし、「野球ができることがとてもうれしい」という気持ちが前面に表れている彼の姿が、日本人選手たちへのいい刺激にもなっています。

地域の国際化への貢献

ラシィナ君を練習生として受け入れたもう一つの理由は、高知県がこれまでまったく縁のなかったブルキナファソとつながるきっかけになり、それが地域活性化の一助になるだろうとの期待からでした。実際、2013年7月にラシィナ君が練習生となって以来、地元の新聞やテレビで話題として取り上げられることも多く、地域におけるブルキナファソについての認知度は格段に上がっています。

 ラシィナ君を含め、チームに外国人選手が増える中で当社として力を入れてきたのが、彼らと地元の方々とが交流する機会を積極的に設け、県の国際化に貢献しようという取り組みです。例えば、学校で行う国際理解教育の授業などに高知FDの外国人選手が参加させていただいています。これまでラシィナ君がそうした機会に参加したのは、実に40回以上にも上っています。少年時代に外国人と接したときの感動というのは、ずっと忘れないものでしょう。日本の子どもたちにそうした貴重な経験をする機会を提供することで、少しでも地元の国際化の役に立てればと考えています。

 外国人選手が、単に野球に取り組むだけでなく、そうした地域貢献活動などに積極的に参加できるのも、青年海外協力隊経験者のスタッフの力に負うところが非常に大きい。彼らは外国人選手が国際理解教育の授業に呼ばれた際に同行するのですが、通訳を担えるというだけでなく、ブルキナファソの現状やラシィナ君が今、ここで野球をしていることの意味などを、途上国の方々とともに暮らした経験に立って、受講者にわかりやすく説明することができます。外国人選手と、外国について語ることのできる青年海外協力隊経験者とのコンビによって、子どもたちにとって非常に意義の大きな国際理解教育が実現できているのではないかと思います。

青年海外協力隊経験者の帰国後の活躍の場として

青年海外協力隊というのは、帰国してからもう一つの活動が始まるとも言えるのではないでしょうか。派遣国での経験で広がった自分自身の可能性を、日本でどのように発揮していくのか。帰国後はその方法を模索することと思います。一方、当社も、球団が持つリソースを使って地元の活性化にどのような貢献ができるかを、日々模索し続けています。その点、青年海外協力隊と当社は置かれた立場はまったく同じだと感じています。

 今後、四国アイランドリーグplusでは米国の独立リーグとのつながりを深め、選手の行き来をさらに促していこうという動きがあります。米国の独立リーグには、ドミニカ共和国やベネズエラなど青年海外協力隊員が派遣されている国の出身者も少なくありませんから、その経験者が高知FDスタッフとして活躍できる場はいっそう広がっていくことと思います。

 そうしたことからも、引き続き今後、青年海外協力隊を経験した方々がその経験で培った力を日本で発揮するために、高知FDをぜひ積極的に利用していただきたいと考えています。

PROFILE

高知ファイティングドッグス球団株式会社
設立:2006年
所在地:高知県高知市南久保13-17
事業内容:高知ファイティングドッグス(四国アイランドリーグplus)の運営
HP:http://www.fighting-dogs.jp/
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