協同組合フレンドニッポンホスピタリティーの厚さと精神的な強さをJICAボランティア経験者に期待

  • グローバル人材の育成・確保

「協同組合フレンドニッポン」では、出資しているフィリピンの大学の卒業生を技能実習生として日本の企業に紹介し、彼らが日本に来てからの生活全般のお世話をするという事業を行っています。

 フィリピンの学生たちは、現地の大学で「溶接」「塗装」「機械加工」といった技術と、日本語や日本企業の価値観などを学習し、卒業後に来日します。当団体の研修所で1カ月ほど日本語力などをブラッシュアップした後、日本の企業で3年間、実習生として活躍します。

 JICAボランティア経験者の職員が携わっている業務は、主に「日本語教育」と「研修指導」です。研修指導とは、実習生たちが抱える日々のトラブルの解決に向けた手助けをする仕事。実習生が勤務している最中は、その企業の担当者が彼らに技術指導などをしてくれますが、何しろ「国外に出るのは初めて」という人ばかりなので、仕事以外のことでもさまざまな不安を抱えています。

 そこで、アパート入居時や役所での各種手続きから、電化製品の使い方やごみ分別の仕方、実習生が病気になったときの病院への付き添いなど、生活に密着した部分のきめ細かな指導やケアを行い、実習生の不安を取り除くのが、私どもの役割です。一言でいえば、彼らが日本で地域社会や会社生活に溶け込みやすくする業務です。現在、私どもがサポートしている実習生は全国に1,800人ほどいますが、毎日、何かしら相談の電話がありますね。

代表専務理事
冨川 太さん

そうした業務を行うにあたり、JICAボランティアとして途上国でさまざまな経験をしてきた人たちは、日本に滞在する実習生の気持ちを深く理解してあげることができます。実習生に対してホスピタリティーにあふれた人が多く、異文化に対するアレルギーもない。また、精神的な強さというのも、JICAボランティア経験者に期待している点です。気持ちに余裕があると、実習生からどんな相談を持ちかけられても優しく対応できるので、心身の強さは大切だと考えています。

 実習生にとって特に難しいのが、日本の企業で働くために必要な「意識」を身に付けることです。たとえば、時間に対する考え方や仕事に対する姿勢など、実習生に通り一遍の説明をしただけでは、まずわかってもらえません。だから、何度も説明して理解してもらう必要がありますが、それはマニュアルによらない部分が大きい。JICAボランティアの経験がある人たちは、そうしたコミュニケーションの素地ができていることが多く、評価しています。

 英語の語学力はあったほうがいいですが、それよりも途上国でさまざまな苦労をし、それらを乗り越えてきた強さを持つ人を求めています。そうした前向きさを、当団体で活かしてほしいと思います。

3年間の研修が修了したことを証明する「研修修了証書」を手にする実習生と、協同組合フレンドニッポンの職員たち

JICAボランティア経験者から

実習生の「予想外」の行動に、動じることなく対応

2006年にザンビアから帰国した後、「活動中は現地の人にお世話になったから、今度は日本に住む外国人に恩返しする仕事がしたい」と考えて就職先を探し始めました。そして、JICAの帰国ボランティアの進路開拓を支援する部署を訪ねたところ、偶然そこでフレンドニッポンの職員の協力隊OGにお会いし、いろいろお話をうかがうことができたのです。

 「フレンドニッポンの仕事内容は、営業や企画などというカテゴリーに入らないからイメージしづらいけれど、在外事務所の調整員の仕事と似ているのでは」と思い始めたら身近に感じられ、就職を決めました。

 現在は東日本に住むフィリピン人実習生約100人の担当として、日本での生活のノウハウを教えたり、プライベートな相談に乗ったり、難しい日本語を通訳したり翻訳したりしています。いくら言っても時間を守ってくれないなど、日本の常識からしたら「予想外」の行動をされることもありますが、そういうことは協力隊時代に経験済み。だから驚いたり怒ったりすることはありません。こちらがあきらめてしまったら何も変わらないので、粘り強く、繰り返し伝えるようにしています。大変なこともありますが、3年経って実習生が帰国するときに、「迷惑かけてごめんなさい。これまでありがとう」「日本が大好きです」などと言ってもらえると、それまでの苦労が大きな喜びに変わりますね。

東日本教育研修指導部 係長
佐藤 由香里さん
(平成12年度派遣/ラオス/空手道)

PROFILE

協同組合フレンドニッポン
設立:1997年9月
所在地(東京本部):東京都千代田区外神田2-4-4 第1電波ビル7階
事業内容:フィリピン人技能実習生の受け入れ、フィリピンでの日本語教育・技能訓練、来日後の日本語教育・生活指導
職員数:42名(2010年2月末現在)
JICAボランティア経験者数:5名(協力隊経験者4名、日系社会青年ボランティア経験者1名、2010年2月末現在)
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