富士通株式会社世界をより持続可能に!
富士通のパーパスとJICA海外協力隊の親和性

  • グローバル人材の育成・確保

富士通株式会社(以下、富士通)は、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」(注1)をパーパス(存在意義)として掲げ、すべての企業活動をパーパス実現のための活動とする「パーパスドリブン経営」を実施している。今回、新卒採用を担当する同社Employee Success本部人材採用センターの末松佳子さんに話を伺った。

デジタル変革の最先端を走る富士通
テクノロジーで新たな価値を

富士通では2020年に、「自分達がなぜ存在するのか」というところから「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパスを策定しました。テクノロジーを使ってイノベーションを起こす、というのが私たちの大きなミッションです。現在、富士通が行う様々なビジネスや社内外の活動は、全て、このパーパスドリブン経営(注2)のもとで実施されています。例えばコロナ禍で、よりデジタルが注目されるようになりました。それはまさに、デジタルテクノロジーによって、人や企業ができることの可能性が広がったことを示しています。富士通のテクノロジーによって、もっと可能性を広げていきたいと考えています。

これまでも富士通では、お客さまに対して、テクノロジーによる新しい価値のご提案に努めてきました。同時に、ご提案した内容をもってシステムを作るという要素技術の開発も、私達が得意とする分野です。お客様へのコンサルティングから、テクノロジーの研究・開発まで、一貫性をもって取り組めるのが富士通の強みです。そしてそれはこれからも、サステナビリティトランスフォーメーション(注2)を産み出す会社として、デジタルテクノロジーによる変革を推進していきます。

こうした経緯に至った大きな理由は、やはり、デジタルトランスフォーメーション(DX)という全世界的な社会の変化です。いちIT企業として、便利なシステムをただ提供するのではなく、それを使うユーザーの行動に新しい価値をもたらす。つまり、提供する価値そのものを変えていくことにフォーカスすべき、ということです。ただ、富士通としてDXに素早く舵が切れたのは、内発的な要因も大きかったのではと考えています。一人一人の社員が、それぞれのビジネスのニーズとして、変革の必要性を強く認識していたのです。お客様と直接関わる者は、現場が求めることが急速に変わってきていることを肌で感じていましたし、研究・開発に関わる者にとっては、テクノロジーの目まぐるしい変化に危機感を抱いていました。2020年にトップが変わり、パーパスが示されたことで、「変わらなきゃ」という社員の思いが強い求心力となり、DXを加速する一助になったと思います。

Employee Success本部人材採用センターの末松佳子さんEmployee Success本部人材採用センターの
末松佳子さん

個人の力の限界を知っているJICA海外協力隊
デジタル技術による社会変革を推進できるかもしれない

これまでを振り返ると、富士通では、新卒・中途採用、現職参加(注3)を含めJICA海外協力隊経験者が20名弱います。彼らの協力隊での活動は様々ですが、共通しているのは、「未知のネットワークの中にひとりで飛び込んだ経験」ではないでしょうか。人材採用の際に、これまでの経験について聞きます。新卒なら学業、中途なら前職務に対して、どんな思いを持ってやってきたのか?と聞くことがあります。協力隊は、そもそも明確な思いがなければ参加しませんよね。未知の文化に飛び込み、自ら考えながら道を切り開いていったという経験は、協力隊ならではと思っています。もし、帰国後の進路として富士通にやってきたとしたら、それも新しい環境へチャレンジしたことになります。ですから、その精神や壁を乗り越える力、思考力、行動力などは十分仕事に活かされると思いますし、大いに期待したいです。

個人的に、協力隊活動は現地に根ざして現地の人と対話を深めていく、というイメージをもっています。その一方で、富士通のビジネスは、ビー・トゥー・ビー(BtoB)が基本で、仕事を通してエンドユーザーの反応に触れられる機会はなかなかありません。だからこそ、そんな活動をしてきた彼らにとっては、目の前の人々の暮らしが変化していく過程を実感できないわけですから、少し物足りないのではと思うことがあります。しかし、草の根を知っているからこそ、その限界も知っているはず。テクノロジーを通して、社会の構造にアプローチし、インパクトを与えられるのが企業の大きな強みです。社会構造に課題を感じ、テクノロジーの影響力の大きさに魅力を感じてもらえるとしたら、「社会を持続可能にしていく」を第一義とする富士通と、協力隊との親和性はここにもあると確信しています。

富士通は、働く社員の意思や思いを尊重して、個人の関心領域を深めていける様々な自己研鑽の機会を提供しています。例えば、スマホでいつでも利用できる講座は、5,000以上。内定者も利用できます。また、Fujitsu Innovation Circuit(FIC)という社内起業家育成のためのプログラムを設け、業務を超えてチャレンジしたいことがあれば誰でもエントリーできるようになっています。あと、新卒採用の1割が外国籍ですので、日本にいながら海外拠点とチームを組むことも多く、自然と多様な人々とのコラボレーションを育めるのも富士通で働くことの魅力ではないでしょうか。

先程、協力隊経験者が20名ほどいるとお伝えしましたが、富士通の歴史や規模から考えるとやや少ないように思っています。富士通では今、イノベーションを起こせる人材を強く求めています。そのためには、個人の思いがとても重要で、いつか社会を変える力になる!と思う協力隊に「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」という富士通の思いが伝わればうれしいです。

JICAボランティア経験者から

デジタルシステムプラットフォームクラウドサービス統括部 中野景太さん
(パナマ/数学教育/2018年度派遣)

数学の先生として協力隊に参加
子どもの頃の夢が思わぬところで繋がった

私は鹿児島県の片田舎の出身で、幼い頃から将来は教員になりたいと漠然と思っていました。のんびりした環境で育ち、身近にいた大人が教員だったので、それしか思い浮かばなかったのかもしれません。大学で数学を専攻しながら教員を目指しましたが、休学してNGOの活動をウガンダで行った時にJICA海外協力隊と出会い、進路=協力隊という選択肢があることを知りました。教員になることしか考えてこなかった私にとって、大きな転機となりました。

協力隊に応募した時、アフリカの国を希望していたので、派遣国がパナマに決定した時は少し困惑しました。配属されたのは、ボケテ市にある中高一貫の公立校です。首都からバスで半日かかる山あいの街で、欧米人が多く訪れる避暑地。高級コーヒーの産地としても有名です。ボケテの名前は知らなくても、ゲイシャコーヒーといえば日本でも聞いたことある方は多いのではないでしょうか。

当初苦労したのは公用語であるスペイン語でしたが、さらに追い打ちをかけたのが配属先の同僚教員の期待。これは重圧でした。「お前は何をしてくれるんだ?」と言わんばかりの目は、教員実務の未経験な私にとってプレッシャーでした。そんな時に助けられたのが、ウガンダでの経験と派遣前に受けた技術補完研修です。ウガンダで孤独と挫折に対する耐性がある程度ついたことは大きかったですね。また、技術補完研修によって指導方法の基礎を習得出来たことは、最後まで活動の支えになりました。

自分の言葉で語れない分、日本の教材を翻訳したり、教育事例を伝えたりと色々なことを試してみました。彼らが、教員経験がない私にも大きな期待を寄せてくれるのは、とにかく多くのことを吸収したい一心からだと分かりました。教壇に立つことが職務ではなかったですが、時々授業を任せてくれることもあって、多くを学ぶことができました。

パナマで数学教育隊員として活動した中野さんパナマで数学教育隊員として活動した中野さん

自分ひとりの力の限界を感じた協力隊活動
それをバネに企業からイノベーションを起こしてみたい

任期満了まで3ヶ月を残して、コロナ禍で配属先が閉鎖となり、帰国の途につきました。活動が全う出来なかったので、帰国後は国連ボランティアへの参加や開発学を学ぶための大学進学を考えていましたが、一方で就職の必要性も感じていました。思い悩んでいた時、国際大学の国際社会起業家プログラム(注4)に体験参加してから、ビジネスで社会課題を解決する方法を意識するようになりました。

パナマにいた時、社会人経験がある先輩隊員たちが精力的に活動していたのを思い出し、社会起業を目指すにしても、自分自身が組織で働いてみる必要を感じて、就職活動をスタート。JICAで協力隊経験者向け求人を見て弊社に応募しました。試験を経て入社が決まった時には、会社とともに自分が成長出来る可能性を感じ、働きながら人生の目標を見つけていくことに自信が持てました。

現在は、デジタルシステムプラットフォームクラウドサービス統括部に所属して、社内基幹システムの管理を担当しています(11月21日よりFICセンターにて、Edtech関連の新規事業開発に従事)。当社は全社でデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいますが、私が所属するプロジェクトもその一助になっており、やりがいを感じています。また、弊社は海外拠点数も多いため、グローバルに社内システムを統一することを目指しており、世界を舞台に仕事ができるチャンスもあります。

当社に入社して良かったと感じることは、自分の可能性を発見できたことです。ソーシャルビジネスに関心がある私にとっては、自社のサービスから社会課題に取り組む道もあることが分かりました。何より、一人では出来ないような世界規模な取り組みにチャレンジできると思うと、夢は大きく膨らみます。

また、現在同期のメンバーとともにFICプログラムに参加して、いろんなバックグラウンドを抱えた子どもたちがつながることができるサービスの企画をしています。メンバーには協力隊で知り合った友人もいます。まさに協力隊が派遣されるような国の子どもまでサービスを届けることを目標にチームで頑張っています。

当社は私を成長させてくれる企業なので、今後は自分が果たす役割を考えていかなければならないと思っています。例えば、外国籍の社員がマイノリティを感じ、困っていたら手を差し出すなどです。周りの人たちの心理的安全性を高めることから始めたいと思います。今後は、協力隊経験で築いたネットワークを活かして、富士通でイノベーションを起こせる人材になれたら最高です。

※このインタビューは、2022年7月に行われたものです。

注1:組織が掲げる社会的意義を起点に、事業戦略やブランディングを行う経営手法。
注2:不確実性が高まる環境下で、企業が「持続可能性」を重視し、企業の稼ぐ力とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図り、経営の在り方や投資家との対話の在り方を変革するための戦略指針。
注3:現在の職場を退職せずに、 所属先に身分を残したまま休職してJICA海外協力隊に参加すること。
注4:社会の様々な課題に対して自ら企業やNPOを立ち上げて解決していくことを志したり、国際機関など支援組織のプロジェクトを通して、課題解決のための業務を行うことを希望する若者の教育を目的としたカリキュラム。

デジタルシステムプラットフォームクラウドサービス統括部で社内基幹システム管理を担当する中野景太さんデジタルシステムプラットフォームクラウドサービス統括部で社内基幹システム管理を担当する中野景太さん

PROFILE

富士通株式会社
設立:1935年
所在地:神奈川県川崎市中原区上小田中4-1-1
事業概要:通信システム、情報処理システムおよび電子デバイスの製造・販売ならびにこれらに関するサービスの提供
協力隊経験者:約20名在中(2022年7月現在)

HP:https://www.fujitsu.com/jp/
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