株式会社GDIコミュニケーションズ名古屋発、世界へ。
グローバル人材に必要なのは「伝える力」
今回は、グローバル人材の育成・支援を軸に事業を展開する株式会社GDIコミュニケーションズの最高執行責任者、北村沙枝子(きたむらさえこ)様にお話を伺いました。同社のユニークな企業文化や『グローバル人材』の定義、そしてJICA海外協力隊(以下、JOCV)への期待について、深く掘り下げていきます。
御社の成り立ちや事業概要などについてお聞かせください。
当社は、2005年にカナダ人で現社長のジェームズ・ヘデンが名古屋でスタートした会社です。当初は愛知県の企業向けのビジネスコミュニケーション、特に海外赴任される方向けのビジネス英語研修が中心でした。その後、若い世代を対象としたカナダ留学事業を開始し、当地の高校や大学、専門学校、語学学校など十数校と提携して、留学のサポートを行ってまいりました。
2013年には東京オフィスを開設。こちらはエンジニアに特化した人材サポート事業が中心で、ニーズが高く一気に社員数が増え名古屋本社よりも規模が大きくなった時期もありました。後には、事業内容の相違や会社ミッションにおける価値観の相違が生まれ、双方の在り方を尊重すべく2018年に分社化。現在のGDIコミュニケーションズは、グローバル人材を集めて、育て、共に成長していくことをコンセプトとし、外国籍エンジニアの紹介・派遣事業の他、海外とのブリッジ役となるような人材の育成を事業の柱としています。また、日本国内外でクライアントが求める経験値を有するグローバル人材を発掘できることも私たちの強みです。
東京と名古屋でお仕事をされてきて、
違いなど感じたことはありますか?
私は名古屋の出身ですが、「名古屋でビジネスができたらどこでも成功する」と評判なくらい、保守的な土地柄だと感じています。地元に日本経済を支えてきた大きな産業がありますから、変わらなくても良いと考える人たちがひと昔前の世代には多いように思います。それでいて、ミーハーで見栄っ張り(笑)。とっかかりは難しいですが、中に入ると懐が深く、忠誠心がある人たちが多いのではないでしょうか。
あと、地元のグローバル企業にはご家族で海外赴任をする方も多く、子どもの頃から海外経験を積んだ若い世代がたくさんいるはず。にもかかわらず、彼らの能力を活かせる仕事が東京に比べて少ないことは残念に思います。
御社も海外経験のある社員が多いと聞きましたが…
はい。当社の社員およそ30人のうち3分の1が外国籍です。欧米、アジア、中南米など多様な国籍がいますから、共通言語は英語と日本語。母国語以外を話せないとコミュニケーションが成り立たない職場です。
意見を発しやすく自分らしく仕事ができると言ってくれる社員が多い一方で、「GDIコミュニケーションズはミスコミュニケーションだ」という皮肉な言葉があるくらい価値観のすれ違いや言語の理解不足は日常茶飯事です。だからこそ、お互いに歩み寄って確認し合う努力が一人ひとりに必要だと考えています。「阿吽の呼吸」で分かり合えるのは日本人だけかもしれませんね。
では『グローバル人材』については、
どのように定義されていますか?
一般的に、海外経験があり俯瞰して物事を捉えられる人を『グローバル人材』といいますが、当社ではもう少し掘り下げて考えています。語学に長けていても、自分の気持ちが相手に伝わらなければ意味がありません。ポイントは「アウトプットする力」「会話のキャッチボールができる力」「話を発展させられる引き出しの多さ」です。これらを備えた人間こそ、当社が考える『グローバル人材』という位置付けです。
個人的には、『グローバル人材』と呼ばれる人たちは仕事と私生活を明確に切り離さないタイプが多いと感じています。プライベートでのチャレンジが仕事に活かされたという話はよく聞きますし、仕事以外の意外な一面を持つ人材というのも、企業の多様性を豊かにしてくれる要素といえます。仕事と私生活の両方の経験が相乗効果となって、グローバルな視点を育んでいるのかもしれませんね。
JOCVも『グローバル人材』といわれていますが、
JOCVについてどんな印象をお持ちですか?
JOCVのみなさんには、現地で様々な困難を乗り越えて自らの力で何かを実装してきた経験がありますよね。コミュニケーション能力や、いざという時の即戦力になる点、そして何よりも『やり抜く力』を持っている人が多いという印象です。これは企業で働く上でも大きな強みになるはずです。
一方で、帰国直後のJOCVが、「思ったような仕事が見つからない」と就職先に悩む様子も見てきました。途上国での経験が業務で実際に役に立つのか? 具体的なイメージがつかないという企業側の声も聞きます。途上国のような特別な環境で培ったスキルを直接的に活かせる仕事は稀です。そんな時こそ真の『グローバル人材』としての力を発揮し、自分の力を言葉で説明して相手に理解してもらう努力が必要だと思うのです。
最後に、そんなJOCVに対して期待することがあれば、
ぜひお聞かせください。
日本企業で就職するなら、ぜひ周りを巻き込める影響力のある人材として、会社全体にグローバルなカラーを植え付けてほしいと期待しています。
長年にわたり日本企業をお客様としてきた当社が感じているのは、グローバル人材を受け入れる企業側にも変化が必要だということです。特に外国籍の社員に対しては価値観の違いなどから人事評価の基準が掴みづらく、彼らの活躍の場を広げるためには企業側にもグローバルな視点を持ってほしいと願っています。JOCVで培った経験は、まさにそうした企業の変革を促す原動力となる気がします。
私自身は、仕事とは「人を助けること」だと考えています。最高執行責任者という立場による影響力は大きく、社員が働きやすい環境を作り社員の成長に貢献することが自分の役目だと思っています。とはいえ、一人が頑張っても企業や社会は成長しません。そこに欠かせないのが”個性”です。JOCV経験は、まさにその人のユニークな一面であり、それこそが『グローバル人材』としての「会話を続けられる引き出し」の一つ。そのことに自信を持って、ぜひ企業や社会で活躍してほしいです。
※このインタビューは、2025年2月に行われたものです。
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