当社の名前にもなっている『GeneXus』は、南米ウルグアイのITベンダーであるアルテッチ社(ARTech)が開発・販売するアプリケーション自動生成ツールです。簡単に説明すると、例えば、今までプログラマーが月100人必要だった開発案件でも、『GeneXus』を利用すれば、10名以下のエンジニアで品質の高い開発が可能となります。こうした技術を日本でも広めるべく、2003年に当社を設立しました。現在、大手企業様をはじめ、100社以上の企業様にご利用いただいております。しかし、ここへ至るまでには、長い道のりと、いくつかの転機がありました。

　私も若い頃、｢狭い日本から飛び出したい！｣という気持ちが強く、青年海外協力隊への参加も考えたことがあります(結局、協力隊には参加する機会はありませんでしたが)。そんなとき、偶然にも、世界青少年交流協会が派遣団員を募集していることを知り、試験を受け、1971年にイスラエルへと旅立ちました。生活環境や考え方が異なる生活を通じて、違いを認識すれば自然と会話は生まれ、会話は対話となり、そこには信頼関係が築かれていくことを、身を持って学んだように思います。

　その後のサラリーマン時代は、システム開発一筋だったのですが、紆余曲折を経て、早期退職を決意しました。技術士試験に合格していたこともあり、退職後は、国内外を問わず様々なお仕事をさせていただきました。そうしたなか、JICAさんからの依頼で、ウルグアイに情報通信センターを設立するプロジェクトに参加することになったのです。そのウルグアイで、私は『GeneXus』という技術に出会い、開発元であるアルテッチ社から日本進出の手伝いをしてほしいと言われたことが、当社の設立につながりました。

　ウルグアイはスペイン語圏なので、資料はスペイン語と英語です。でも、日本で売るからには翻訳が必要です。設立当初は1人3役の勢いで私も働いていましたが、仕事が軌道に乗ってくると、やはり人材が必要となりました。本来は、スペイン語に長けているIT技術者を求めていたのですが、それではあまりにもハードルが高いと考え、派遣会社を通じ、英語に長けているIT技術者を募集しましたが、結果は、応募者ゼロ。そんなとき、IT関連でスペイン語圏にいた人材がいると伝え聞いたのです。その人物こそがパナマに派遣されていた協力隊経験者の男性でした。昨年の8月に面接をさせて頂き、9月1日から来て欲しい旨を伝えると、彼はこう言いました。｢自分はパナマには貢献してきたが、まだ日本に貢献できていない。東日本大震災の被災地でボランティア活動をしたいから、入社を1ヶ月延ばしてほしい｣と。このような積極性と行動力は、まさに当社が求めているものでしたので、彼の希望を快諾し、10月から働いてもらっています。

　今、多くの企業が国際人材を必要としています。外国語学科を専攻した人であれば、読み書きに不便はないでしょう。また、語学留学の経験者であれば、コミュニケーションをとることは可能でしょう。しかし、それだけで仕事はできません。企業が求める国際人材とは、1)国際感覚が豊かで、外国人と一緒に仕事のできる人材、2)すべてを国際的な視点から考えることのできる人材、3)外国人と対等に議論のできる人材、こうした人たちを指します。これはまさに、協力隊経験者のことだと私は思います。なぜなら、たった1人で見ず知らずの外国へ派遣され、積極的に現地の人と意見を交し、主体的に物事を考え、計画的に目標の実現に向けて、現地の人と共に活動をするわけですから、否が応でも上述にあるような国際人材としての力が身に付くと思うのです。しかも、2年という長期の任務を遂行したということは、言い換えれば、2年にわたり国際人材としての修行を全うしたということです。よって、協力隊事業は、最高の人材育成事業だと言っても過言ではありません。

　多くの日本人が、いろいろな分野で世界を舞台に活躍しています。なかには、後世に名を残すような人もいるでしょう。しかし、その一方で、協力隊員のように開発途上国の誰も知らないような村で、懸命に頑張っている人がいる。このことは、同じ日本人として誇りに思うべきことではないでしょうか。そして、真の国際人材を求めている企業は、こうした協力隊経験者にもっと注目するべきだと私は考えます。

代表取締役　会長兼社長
大脇 文雄さん

協力隊事業は、最高の人材育成事業だと語る大脇さん。