株式会社ギラヴァンツ北九州JICAとの関わりを通じて
地域社会に貢献していきたい

  • CSR活動
  • 開発途上国の物品提供

福岡県北九州市をホームタウンに活動するJリーグのサッカークラブ「ギラヴァンツ北九州」。地域に根差した特色あるさまざまな社会貢献活動のほか、JICAボランティアを通じて、開発途上国の子どもたちにユニフォームを届けるなど、国際貢献活動にも取り組んでいる。また、近年はクラブチームの海外展開も視野に入れつつ、東南アジア各国のクラブチームとも積極的に交流を深めている。こうした取り組みを支えているのが、元青年海外協力隊で株式会社ギラヴァンツ北九州普及事業本部長の下田功(しもだ・いさお)さんだ。その下田さんに、これまでのJICAとの関わりや地域社会に根差した活動、今後の展望などについて話を聞いた。

地域社会に貢献するクラブチーム

ギラヴァンツ北九州というチーム名は、イタリア語でひまわりを意味する「Girasole(ジラソーレ)」と、前進するという意味の「Avanzare(アヴァンツァーレ)」を組み合わせてつくった造語です。ひまわりは北九州市の市花で、このチーム名には「サポーターや地域が輝き、元気になる、その象徴でありたい」という願いが込められています。

2010年にJリーグに昇格してから今年でまだ8年目で、実力的にはこれからという若いチームですが、サポーターや地域が輝き元気になるためのホームタウン活動には、かなり積極的に取り組んでいます。その一つが「スクール☆ギラヴァンツ」です。市内の小学校に選手とコーチが訪問し、活動の前半は教室で夢を持つことの大切さを伝えるために、選手やコーチは夢をどのように実現してきたのか、これまでの浮き沈みを「夢曲線」で表し、子どもたちに挫折やちょっとした成功体験などを話しています。さらに後半には、体育館やグラウンドでサッカーボールを使って実際に体を動かし、スポーツの楽しさを体感してもらう内容になっています。また、認知症や介護予防を目的としたシニア層向けの健康教室、障がい者支援、引きこもりの人たちの社会復帰支援などにも取り組んでいます。

こうした地域活動のほか、これまでJICAと連携し、世界中から九州に来られる研修員をギラヴァンツ北九州の試合に招待したり、サッカーのユニフォームを「世界の笑顔のために」プログラムを通じて開発途上国へ贈ったりと、海外とのつながりを意識した取り組みも行っています。

普及事業本部長の
下田 功さん

「スクール☆ギラヴァンツ」で学校を訪れた選手の話を真剣に聞く子どもたち

プロのサッカー選手と一緒にプレイする子どもたちはみんな笑顔に

サッカーの「チカラ」を知ったきっかけは協力隊参加

私がギラヴァンツ北九州でこうした地域社会を重視した取り組みや、JICAを通じた国際貢献に力を入れているのは、JICAボランティアとして活動した経験があったからかもしれません。

私はサッカーが盛んな静岡県の出身で、小さいころからサッカー漬けの毎日でした。地元の強豪校を経て大学までサッカーを続け、卒業と同時に青年海外協力隊に参加しました。実はこの時、いくつかの実業団のチームからお誘いをいただいていました。友人などからはサッカーで大企業に就職できるチャンスを逃してもったいないと言われたのですが、「海外で自分の力を試してみたい」という思いが強く、参加を決意しました。

派遣されたのはコスタリカという中米の国で、文化青年スポーツ省で体育の隊員として、さまざまな競技の選手やコーチに日本式のトレーニング理論を普及しました。地道に活動を続けていくうちに、日本でのサッカー経験が評価され、20歳以下(U20)のコスタリカ代表チームにコンディショニングコーチとして参加してほしいと頼まれました。なぜサッカー強国でない日本の若者をコーチにするのかと、新聞などで懐疑的な報道もありましたが、それでも私はトレーニングの指導を続け、最終的にはU20コスタリカ代表チームは中米北米カリブ大会で優勝し、念願のワールドカップ初出場を果たすことができたのです。中米北米カリブ大会の決勝戦が行われたグアテマラから帰国すると、空港では2万人を超える人たちが出迎えてくれました。

2年間の協力隊の活動を終え一旦は帰国したのですが、文化青年スポーツ省から「ナショナルトレーニングセンターの立ち上げを手伝ってほしい」という要請を受け、青年海外協力隊のシニア隊員として再びコスタリカに舞い戻り、さらに4年ほど活動しました。その後は、2度のボランティア派遣でスペイン語が上達していたこと、コスタリカをはじめ中南米のサッカー界に詳しかったこともあり、日本サッカー協会の通訳として10カ月ほど世界中を飛び回り、FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップの日本誘致活動を手伝うという貴重な経験もしました。

青年海外協力隊に参加したことで始まった海外との関わりの中で、私は、サッカーは国や地域、人種や宗教を超えて理解し合える“コミュニケーションツール”であること、応援してくれる地域の人々や国民を元気に、そして幸せにしてくれるものであることを強く感じたのです。

北九州市にJICAの拠点があるのはラッキーなこと

FIFAワールドカップの誘致活動を終え、青年海外協力隊の活動を現地でサポートしたいと考えていたのですが、縁あって、Jリーグのチームで働くようになりました。ギラヴァンツ北九州は私にとって2つ目のチームです。

サッカーに限らず、スポーツが地域社会の中に溶け込むためには「見る」「する」「支える」という3つの要素が不可欠です。そのために、地域の人たちに地元チームの試合を見に来てもらうこと、子どもたちや大人たちに実際にスポーツをしてもらう機会やクラブチームの運営を手伝ってもらう機会を提供することが重要だと考えています。

地域の人々が海外に目を向けるきっかけや、クラブチームが海外との関わりを築いていくきっかけとして、地元の北九州市にJICAの国内拠点があるのは、とてもラッキーなことです。これまで同様、世界中から訪れるJICA研修員の方々との交流や、JICAを通じたサッカー用品の支援などを続け、地域社会に貢献していきたいと考えています。

実際に、今年はJICAや北九州市内の高校生を通じて、カンボジアの子どもたちにギラヴァンツ北九州のユニフォームを100着プレゼントする予定になっています。サッカーはカンボジアでもとても人気のあるスポーツです。サッカーのユニフォームが、両国の子どもたちが打ち解ける一つの“コミュニケーションツール”になればと期待しているところです。

※このインタビューは2017年7月に行われたものです。

観客席と選手との距離が近く臨場感あふれる日本初の「ゼロタッチ」スタンドを採用したギラヴァンツ北九州のホームスタジアム(ミクニワールドスタジアム北九州) 写真:GIRAVANZ

PROFILE

株式会社ギラヴァンツ北九州
設立:2008年
所在地:福岡県北九州市小倉北区浅野3-1-26 あべりあ浅野ビル1F
事業内容:ギラヴァンツ北九州の運営
協力隊経験者:1人(2017年7月現在)
HP:https://www.giravanz.jp/

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