ガールスカウト神奈川県第79団「世界の笑顔のために」プログラムで
子どもたちの視野を広げて行きたい

  • 発展途上国への物品提供

JICAの「世界の笑顔のために」プログラムは、教育、福祉、スポーツ、文化などの分野で開発途上国が必要としている物品を日本国内で募集し、青年海外協力隊などのJICAボランティアを通じて現地の人々へ届ける取り組みだ。ガールスカウト神奈川県第79団は、このプログラムに2016年から参加している。プログラムに参加することになった経緯、さらにガールスカウトの活動と国際協力の関係などについて、青年海外協力隊の経験者で同第79団リーダーの石塚咲(いしづか・さき)さんに話を聞いた。

子どもたちの思いを世界へ

ガールスカウトは、1909年にイギリスで生まれた世界最大の少女と女性のための団体です。現在、150の国と地域で約1,000万人が活動しており、日本では47都道府県で約4万人がこの活動に参加しています。その目的は、少女が世界に目を向け、地域社会や世界に貢献できる自立した女性に成長するための場を提供することです。活動のベースとなるのは、全国に1,038ある「団」と呼ばれる地域のグループで、私が所属している神奈川県第79団は、横浜市青葉区を拠点に活動しており、会員は子どもから大人まで40~50人ほどいます。私は小学3年生の時から活動に参加し、今はリーダー役となり子どもたちの活動をサポートしています。

ガールスカウトの活動は団によって異なりますが、第79団では野外活動や奉仕活動のほか、国際理解に力を入れています。海外のガールスカウトと手紙を交換したり、日本に駐在しているアメリカのガールスカウトとのキャンプに参加したりと、海外の子どもたちと交流する機会は他の団と比べても多い方でしたが、私が青年海外協力隊から帰国してから始めたのが「世界の笑顔のために」プログラムへの参加です。

きっかけは、世界中のNGOが年に1回、それぞれ一斉に開催する「世界一大きな授業」に第79団が参加したことでした。この授業は、世界のために自分たちにできることは何かを考えるためのものであり、そこで子どもたちから「開発途上国に物を贈りたい」と意見が出ました。しかし、途上国に物を贈るだけでは、それが本当に必要なものか、現地でどのように使われているか、なかなか見えてきません。そこで思いついたのが「世界の笑顔のために」プログラムでした。現地で必要とされている物品を募集し、集まったものをJICAボランティアが届けるという仕組みなので、現地でどのように使われているかが見えやすく、子どもたちのモチベーションにもつながると考えました。

さっそく、「世界の笑顔のために」プログラムで募集している物品が家にないか、各家庭の協力を得て子どもたちに探してもらいました。これまでに集まった物品は、バスケットボール、野球ボールやグローブ、そろばん、算数セット、絵本、水彩画セット、ハーモニカなど約20点。子どもたちの手紙やカードを添えて、必要としているアフリカや南米、アジアなど16ヵ国に届けてもらい、現地からは手紙や写真、お礼状などをいただきました。

ガールスカウト神奈川県第79団リーダーの石塚 咲さん

集めた物品とともに送る手紙やカードを手にして記念撮影するガールスカウト神奈川県第79団の子どもたち

子どもたちにもプラスになった協力隊経験

私が開発途上国に興味を持つようになったのは、子どもの頃に、ガールスカウトを通じて学用品や文房具をアフガニスタンの子どもに贈る活動をしていたことが影響していると思います。また、協力隊として途上国に行きたいと思うようになったのは、ガールスカウトの推薦で内閣府が主催する国際青年育成交流事業でカンボジアに行ったことがきっかけです。実際に協力隊の活動を視察する機会があり、現地に入り込み、現地の人たちと一緒に働いている姿がとても印象的で、私は大学を卒業してすぐ協力隊に参加しました。

派遣されたのはマダガスカルというアフリカにある島国で、活動場所となったのは町のコミュニティセンターでした。施設を有効活用するための活動を期待されていましたが、同僚にとっても外国人を受け入れるのは初めてだったので、私に何をしてもらえばいいかわからず、私も何をすればいいのか手探りの状態でした。話し合って決めたのが、コミュニティセンターにやってくる就学前の子どもたちのために、保健衛生の大切さを伝えるためのワークショップや本の読み聞かせなどを行うことでした。また、地域の学校で体育や工作の授業を行ったりもしました。

ここで生きたのがガールスカウトの経験です。子どもたちを引きつけるためにどのような段取りでプログラムを組めばいいのか、物事を動かすために自分と違う世代の人とどのように関わり、いかにコミュニケーションを取ればいいのかなど、ガールスカウトで学んだことが役に立ちました。たまに断水や停電があっても、ガールスカウトで行っていたキャンプの技術も生かせたので、逆に不便な生活を楽しむことができました。

帰国後は一般企業に就職し、ガールスカウトの活動を続けています。協力隊での経験は、私の自信になっていると同時に、子どもたちにとっても刺激になっていると感じています。以前は本で読んだことやテレビで見たことをベースに、子どもたちに途上国のことを話していましたが、実際にマダガスカルで活動したことで、自分の経験をベースに、「世界にはこんな国がある」「世界にはこんな人がいる」ということを伝えられるようになりました。

小学生の頃から第79団で活動を続けてきた大学生の一人は、現在、ガールスカウトの活動とは別に、ミャンマーの学生との交流事業を企画しています。ミャンマーの教育問題に注目し、その改善に関わりたいというのが活動のモチベーションになっているようです。ガールスカウトの活動と直接的に結びついているわけではありませんが、私の活動が彼女をはじめとした次の世代の子どもたちに少しでも影響を与えられているのであれば、それは嬉しいことです。

「世界の笑顔のために」プログラムには、これからも取り組んでいきたいと考えています。現地から届くお礼状や写真を入口に、その国について子どもたちが勉強するといった効果が生まれています。寄贈をしてお礼状をいただいたら終わりではなく、そこを入口に、子どもたちともっといろいろなことに挑戦していけたらと思っています。

※このインタビューは2017年9月に行われたものです。

マダガスカルのコミュニティセンターで活動する隊員時代の石塚さん(写真中央)

PROFILE

ガールスカウト神奈川県第79団
発団:1979年5月
主な活動地域:横浜市青葉区
HP:http://www.gskanagawa79.jimdo.com
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