山梨日立建機株式会社技術力や英語力に加え、「夢を描くこと」
のできる姿勢

  • グローバル人材育成の確保
  • 開発途上国へのビジネス展開

当社は1970年に設立して以来、建設機械の販売・サービスと輸出を行ってきました。そして、94年に私は内戦終了後のカンボジアを商用で訪れました。中古の建設機械の販売が主な業務であるため、復興を目指すカンボジアにビジネスチャンスがあると考えたからです。

 首都プノンペンに到着した私は、そこで人生が変わるほどの衝撃的な光景を目にしたのです。内戦の影響で、地雷で手足を失った人が町中にあふれ、物乞いをしていました。そんななか、幼女を連れた片足のない年老いた女性が、涙を浮かべながら私に言いました。「あなたは日本人でしょう。この国を助けてください」と。

 「この人たちを救えなくて何が平和だ」。私はそう思って居ても立ってもいられなくなり、帰国後すぐに、社内に対人地雷除去機開発のプロジェクトチームを立ち上げました。当時は地雷についての知識はほとんどなかったため、会社としてのリスクもありました。しかし、社員やその家族をはじめ、周りのみなさんの理解と協力のもと、紆余曲折を繰り返し、98年に1号機を完成させました。現在は、カンボジアをはじめ世界8カ国で75台の地雷除去機が稼働しています。当社はそのように、総合建設機械メーカーであるとともに、国際貢献とのつながりも深い会社なのです。

 協力隊経験者を採用し始めたのは、10年ほど前から。海外での建設機械のサービス業務を行うにあたり、英語が話せて、ある程度の技術力を持つ人材を採用したいと考えたからです。本当は建設機械の整備ができる人が最適なのですが、建機専門でやってきた人はなかなかいないので、「自動車整備」の隊員として活動してきた人を中心に募集しています。重機について、最初はわからないことが多いかもしれませんが、自動車整備の基礎と応用力、そしてやる気さえあれば、1年ほどで仕事を覚えてもらえると期待しています。

 私たちが求めているのは、「今日はこれをやろう、明日はこれをやってみよう」と、夢を描くことができる人。“今日”や“明日”を描けない人は、未来を積み上げていくことができません。その点、ほとんどの協力隊経験者は、参加前に「俺はアフリカに行って自分の技術をみんなに教えてくるぞ」と、未来を思い描いた経験があるでしょう。会社においても同じです。「俺はこの機械を世界に紹介して、給料をたくさんもらってビジネスをやっていくんだ」というように、前向きな気持ちを持つ人を求めています。

代表取締役
雨宮 清さん

また、国際的な視野を持つことも必要です。これからの時代、日本の企業は国内だけでは食べていけません。マーケットは、アメリカもロシアも中国もカンボジアもラオスも、世界中のいたるところにあります。技術をどんどん輸出して、日本製品を買ってもらえるように努力しないと、日本は世界のビジネスで遅れを取ってしまいます。そのため当社では採用段階で、ある程度の英語力を必須条件にしています。

 未来像を描く姿勢や英語力などで協力隊経験者に期待している点がありますが、それと同時に懸念もあります。「夢を描ける人がいい」という話をしましたが、協力隊経験者のなかには「夢におぼれてしまう」ような人もいると思います。つまり、辛抱して会社で技術を学んでいくよりも、次の夢を見て、会社を辞めてしまうのです。やりとおす意志が弱かったり、また、のんびりしすぎたりする面があるようにも思います。「この機械を何で1時間で直さなきゃいけないんですか」と聞いてくるような姿勢では、日本の企業では通用しません。

 また、机上の勉強だけできて、技術力が非常に足りない人も見受けられます。面接試験で、「2年間、オイル交換とパンク修理だけ教えてきました」と話していた協力隊経験者もいました。我々の業界では、10年の経験があっても「ひよっこ」扱いで、20年、30年と経験を積み重ねて初めて「キャリア」といえるようになるのです。そうした認識をきちんと持ち、技術を磨くことに励んでほしいですね。

 私は地雷除去活動で途上国に行くと、現地の人たちと寝食をともにします。やはり、現地の人のなかに入り込むということが大事だと思いますね。ものづくりの原点はユーザーなので、彼らが何を考えているかを知ることが、まずは必要なのです。そうしたうえで、「俺はこうしたほうがいいと思うよ」という話をしながら、彼らの意見も聞きます。そのようにして、気配りや目配りをしながら、現地の人たちと協働していくのです。

 そして、継続して地雷を除去することによって、その土地で人々が安全に暮らし、畑を作り、育った作物を売って子どもに教育を受けさせることができる。そのように、彼らにビジネスができる環境を与えることが、我々の考える国際貢献なのです。

 協力隊に参加しているみなさんにも、自分の国際貢献の形やゴールを思い描いてほしいと思います。当社では、そうした意識のもとで現地で活動し、技術力もあって、海外展開で活躍できるような人材を求めています。

ロータリーカッターの製作風景

アフリカ・アンゴラでの地雷除去活動

PROFILE

山梨日立建機株式会社
設 立:1970年4月
本社所在地:山梨県南アルプス市上今諏訪564-1
事業内容:総合建設機械メーカーの日立建機のグループ会社として、山梨県南アルプス市を拠点に日立建機製品を生産・販売
従業員数:77名(2010年10月現在)
協力隊経験者数:1名(2010年10月現在)

HP:http://www.hitachi-kenki.co.jp/
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