川田工業株式会社海外の人と共に働くうえで
必要な力の獲得に期待

  • グローバル人材の育成・確保

現地での経験を会社の財産に

当社はゴルフ用を中心としたスポーツ用手袋の製造・販売を行う会社で、ゴルフクラグメーカーなどへのOEM生産が大半です。営業や商品企画の機能は日本に置いていますが、量産拠点は中国に持つ2カ所の工場。これに加えて、かつて工場を持っていたインドネシアで再び工場を操業することを目指しており、その管理を担う人材の育成を目的に活用させていただくことになったのが、JICAの民間連携ボランティア制度です。入社6カ月の社員がこの制度を利用し、協力隊員としてインドネシアに派遣されて、4カ月が過ぎたところです。派遣期間は1年。彼が持つ接客業の経験が生かせるだろうと考えて、職種は観光業を選びました。

 彼が協力隊経験を通じて身に付けるであろうインドネシア語の力や、現地での人的ネットワークも、もちろん当社にとっては貴重な財産になります。しかし、何より彼に期待するのは、海外の人と共に働くうえで必要な“グローバルな視点”を獲得することです。これは、協力隊でなければ身に付けるのが難しいものだと思うからです。

 海外の工場での生産管理は、日本から赴いた社員が、現地のスタッフに対して上からの目線で「ああしろ、こうしろ」と命じていれば済むようにも見えます。しかし、技術を伝えるだけならそれでも済みますが、生産管理となると、やはり民族性や宗教など、現地の事情をよく知ったうえで、現地のスタッフに反発されないような接し方をしなければなりません。時間の観念など、日本で当たり前だと思われていることが、海外では当たり前ではないことも多いわけで、それを理解せずに「日本ではこれが当たり前だ」と言うばかりでは、受け入れてもらえません。つまり、「人間全体を見渡したうえで考える」ということが、海外の人たちと共に働く場合にはどうしても必要となる。それがいわゆる“グローバル”という言葉の意味ではないでしょうか。インドネシアの場合、イスラムの国ですから、日本とは文化の違いも大きい。そのため、同国の人たちと働く場合には、なおさらグローバルな視点というものが必要となってきます。

 協力隊というのは、このグローバルな視点を獲得できる機会にほかならないと思うのです。駐在員として海外の工場で働いていても、現地社会とのつながりになかなか広がりや深まりが出てきません。一方、基本的に身ひとつで現地に赴く協力隊員は、配属先の内外に協力者を広く獲得しなければ、充実した活動などできないでしょう。グローバルな視点というのは、そうして懸命に豊かな人間関係をつくりあげていくなかで初めて身に付くものではないかと思います。

代表取締役社長
川田 利之さん

創造力を鍛える場

協力隊経験では、海外の人たちと共に働くときに必要となる力だけでなく、より広い場で発揮される仕事の力も養われる。私はそんな期待も持っています。そのひとつが“創造力”です。

 当社がゴルフ用手袋をつくる場合の最初のステップは、お客様からいただくおおまかな要望をもとに、一からデザインを起こし、お客様に提案するという作業です。つまり、無から有を生み出す“ものづくり”が当社の仕事の本質であり、社員には創造力が不可欠なのです。

 協力隊の観光業という職種の活動は、「何か仕事をください」「では、このインドネシア語の観光パンフレットを日本語に訳してください」で済むものではないでしょう。観光客を増やすために自分に何ができるか、自分自身でそれを見つけ出すところから始め、配属先の人たちと一緒になってその実施に取り組んでいく。そうした、まさに創造性が問われる役目で赴任するのだと思います。しかも、何かしらの結果を出していかなければ、周囲からの信頼も得られないだろうし、本人としても寂しいでしょう。1年という期間にどうにかそれをやりとげようと苦労する経験は、協力隊に参加する社員の創造力を否応なく鍛えてくれるだろうと期待しています。

 彼は若くてまじめな青年なので、心配なのは、活動がうまくいかないといって精神的に参ってしまうこと。「そこそこでいい」というくらいの余裕のある気持ちでいられるよう、声をかけてフォローし、任期を実りあるものにしてもらいたいと思っています。

主力商品であるゴルフ用手袋。手袋の生産は香川県東かがわ市の地場産業でもある

PROFILE

川田工業株式会社

創業:1920年
本社所在地:香川県東かがわ市松原1064-1
事業内容:ゴルフ用をはじめとするスポーツ用手袋の製造・販売など
従業員数:38人(海外の従業員は140人/2013年11月現在)
HP:http://www.kawadakk.co.jp/

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