埼玉県川越市立川越第一中学校協力隊で深まる「文化」についての理解は
教員にとってのカギ

  • グローバル人材の育成・確保

「文化」という視点を伝える役目

埼玉県川越市は、川越藩の城下町として栄えた古い歴史を持つ町です。本校が位置する町の中心部は、江戸時代からこの地で暮らしてきた家が残る一方、首都圏のベッドタウンとしてマンションの開発も進み、近年になって移り住んだ家も多い。そのため新旧の文化が拮抗しており、両者を融合した新たな文化をどう生み出すかが課題となっています。それを達成するうえで「学校」が果たしうる役割は大きい。本校の生徒の半数は古くからの家の子で、半数は新しい家の子。彼らに「文化とは何か」について考えるきっかけを与えれば、自分たちの地域の文化を見つめ直し、その課題に積極的にかかわることへとつながっていくからです。そうなると、教員にとって「文化」についての理解が重要なものとなってきます。
 同様のことは、ほかの地域でもあてはまると思います。たとえば、外国籍の児童・生徒を多く抱える学校も増えてきており、そうした学校では文化の異なる者どうしの付き合い方について教員が理解を深めなければなりません。
 以上のような観点から、異文化社会に入って「文化」という視点からものを見たり、感じたり、考えたりするJICAボランティアの経験は、教員としての成長にとって非常に貴重なものといえるのではないでしょうか。
 本校には、2010年から2年間、協力隊に現職参加して大洋州の国のセカンダリースクール(日本の中学校と高校を合わせた学校)で数学教師を務めた数学科の女性教諭がいます。彼女はさまざまなかたちで派遣国の文化を本校の生徒や教員に伝えてくれています。たとえば、彼女は現在、1年生のクラスを受け持っているのですが、「道徳」の時間の「異文化理解」の単元では、1年生の6クラスすべてで出前授業を行い、派遣国の文化について話をしてくれました。それによって、生徒だけでなく、各クラスの担任教員も、「文化」という視点を持つことを学べるのです。

校長
近藤 誠さん

ポジティブさは最も大事な資質

彼女が帰国してすぐに受け持ったのは、3年生のクラスでした。なかには生徒指導が大変な子もいたのですが、彼女はあきらめることなく、卒業までその生徒の面倒を見続けました。そういうポジティブさというのは、教員にとって最も大事な資質かもしれません。何か困難があるとすぐに折れてしまうようでは、教員は務まりません。彼女のそうしたポジティブさは、おそらく少なからず協力隊経験が影響しているのではないでしょうか。最初は言葉もよく通じないようななかで授業をまっとうしなければならない。そういう苦労を乗り越えれば、おのずと「なんとかなるだろう」というポジティブな考え方が身につくのだと思います。
 JICAボランティアに参加すれば、どの教員でも彼女のようにその後の仕事のなかで経験を生かすことができるかというと、そうではないと思います。やはり教員としての一定の資質があってこそでしょう。その一定の資質とは何かというと、どれほど困難な環境で仕事をすることになっても、そこで潰れないで、その後の人生に生かす何かを学び取れる力だと、私は考えています。たとえば、いい教員というのは、どんなに荒れた学校に配属されても、そこで何かを学び、次のキャリアにつなげます。彼女にはそうした資質が備わっていたのだと思います。
 さきほど申し上げたように、教員にとって大事な「文化」という概念についての理解を深めた協力隊経験は、とても貴重なものです。彼女には今後、その点を常に自分の核として意識しながら、教員としてさらに成長していってもらいたいと期待しています。

PROFILE

埼玉県川越市立川越第一中学校
創立:1947年4月
所在地:埼玉県川越市小仙波町5丁目6番地
生徒数:631名(2013年1月現在)
協力隊経験者数:1名(2013年2月末現在)
協力隊現職教員特別参加制度経験者数(埼玉県教育委員会):16名(2013年2月末現在)

HP:http://www.city.kawagoe.saitama.jp/www/genre/0000000000000/1121932935992/
一覧に戻る

TOP