神戸国際大学多言語が飛び交うグローバルキャンパス・
神戸国際大学
日本語教育に魅了された協力隊経験者が
主導する「神戸モデル」とは

  • グローバル人材の育成・確保

神戸市東灘区の人工島・六甲アイランドに大きなキャンパスを構える神戸国際大学。戦後間もない頃、民間大使として日本と世界の外交関係を築いた八代斌助牧師により設立され、キリスト教の精神に基づく全人格的人間形成を目指した教育が特徴。早期から国際交流に力を入れ、創立50周年を機に「Toward a Global Campus」をスローガンに掲げている。国際都市・神戸を舞台にしたこの大学で今、JICA海外協力隊(以下、協力隊)の経験者が産官学連携で神戸発の外国人介護人材育成プログラムの開発に挑戦している。大学事務部長付・筆保直子さんに、大学の取り組みと協力隊経験者への期待について話を伺った。

開学以来、少人数制教育が育む国際交流
JICAとの連携に期待

神戸国際大学の前身は八代学院大学といい、1968年に神戸市垂水区で開学しました。創立者の八代斌助師父は、戦後の日本人としては初めて、海外渡航の許可を受けて国際会議に出席し、日本と世界との外交関係が絶たれていた時代に民間大使として貢献しています。その八代師父が、国際教育活動の集約と国際課題の実践の砦として設立したのが本学です。1992年に神戸国際大学と名称変更し、2002年には現在の六甲アイランドにキャンパスを移転しました。現在は、経済学部とリハビリテーション学部の2学部で構成されており、開学当時より少人数制教育を行い、キリスト教主義に基づいた人間形成と国際教育を続けています。

本学では、“グローバルキャンパス”という考えのもと「本学から海外へ、海外から本学へ」をスタンスに、海外に視野を広げたい日本人学生と日本で学びたい外国人留学生との異文化交流を促進しています。海外の協定校は、北米、ヨーロッパ、アジアの各地に及び、どこでも自分のキャンパスのように学べる環境を整えています。留学スタイルもさまざまで、短期、長期、海外インターンシップなど学生のニーズに応えられるよう多様な制度を設けています。

六甲アイランドにある本キャンパスでは多くの外国人留学生が学んでおり、その数は本学生数の1/3を占めます。ここにも少人数制教育が活かされていて、日本人学生と留学生とがキャンパスライフを通して互いに交流を深めています。学生間の交流が双方にとってより有意義な機会となるよう、大学側としても留学生サポーター制度を設けてさまざまなプログラムやイベントを企画、実施しています。本学はアジア圏からの留学生が多いため、英語以外の多言語にも触れることが出来るのが特徴です。留学生に日本語を教える「留学生サポーター」や留学生と交流が出来る「多言語カフェ」などは、海外志向の高い日本人学生にとっては国内にいながら外国の言葉や文化に触れられる機会であり、とても人気の制度になっています。

近年はコロナ禍で、学内のこうした交流機会は自粛せざるを得ない状況が続いていました。そんな中、JICA関西が実施した協力隊経験者との交流プログラムに、本学の日本人学生と留学生が参加する機会がありました。ベトナムと中国の留学生が互いの文化を紹介し合い、日本人学生を交えて意見交換し合うなど、時間を忘れるくらい楽しいひと時だったと聞いています。今、本学が目指しているのは、現代社会を「生き抜く力」を育むことです。学生たちには生き抜く力を備えた人になってもらうために、さまざまな機会を提供したいと思っています。JICA関西をはじめ協力隊経験者とも、これを機に連携を深めていけたらいいですね。

大学事務部長付の筆保直子さん大学事務部長付の筆保直子さん

初めて関わる留学生事業
協力隊経験者から多くを学ぶ

私は、大学事務部長付という立場で仕事をしています。部長が関わる各種事業を事務方として支えるのが役目ですので、学生たちというよりかは教職員や地域、行政の関係者と関わることのほうが多いです。特に留学生に対しては、国際交流担当という部署が別にありますので、私が直接関わることはほとんどありません。しかし、本学の若手研究者で協力隊経験者の瀬戸口達也先生が、「特定技能(介護)受け入れスキーム」という分野で令和3年度の「大学発アーバンイノベーション神戸」に採択されたことをきっかけに、外国人留学生の受け入れ事業に関わる機会が増えてきました。これまでに全く経験したことのない内容なので、留学や特定技能の仕組みなど理解しなければならないことは多いですが、「神戸モデル」として全国に発信できる取り組みだと思うと、非常にやりがいを感じています。

それはやはり、瀬戸口先生自身が外国人の日本語教育に対して信念を持って臨んでいることが大きいと思います。実はこの仕事を担当するまで、先生が協力隊経験者だとは知りませんでした。今回の取材でウズベキスタンでの活動のことを聞き、本学の学生支援センターが取り組む「多言語カフェ」などに先生が積極的に関わり、いつも学生たちにフレンドリーに接している意味がわかったような気がします。

私自身は、幼い頃からガールスカウトの活動をしていたこともあり、もともとボランティア活動や国際交流には強い関心があります。かつて、日本の高校生を引率し、スイスで日本文化について紹介したことがあります。自らの口で日本文化を説明してみて初めて分かったことは、浴衣の着方も漢字の種類も、知っていたようでほとんど理解していなかったということでした。外国人のほうがよく理解しており、恥ずかしい思いをしたこともありましたね。瀬戸口先生の研究に関わることで、自ずと海外と日本の両方の文化に向き合えるため、私も勉強になっています。

古い友人がJICA海外協力隊としてボリビアに派遣され、自然環境から生活様式まで何もかもが日本と異なる中で活動している話を聞きました。あまりに自分の暮らしとかけ離れていたので驚いたのですが、衝撃だったのは“一度派遣されたら絶対に帰国することが出来ない”ということ。後々“絶対に帰国出来ない”というのは私の勘違いだったことが分かりましたが、友人がそのくらいの覚悟を持って協力隊に参加したことが印象的でした。大変な活動だけに、本人の成長にも繋がる貴重な機会だと思います。もしチャンスがあれば、いつか私も協力隊にチャレンジしてみたいですね。

JICAボランティア経験者から

経済学部 国際別科 日本語教員 瀬戸口達也さん
(ウズベキスタン/日本語教育/2013年度派遣)

日本語教師と日本語研究者の二つの顔
協力隊経験を経て外国人の日本語習得という壁に挑む

私は本学の国際別科に所属し、経済学部から留学を希望する外国人に日本語を教えています。学生たちは大学寮で暮らしを共にしながら、半年から1年半のカリキュラムで日本語能力と日本事情に関する基礎知識を養っていきます。クラスは全部で6クラス、私を含めて18名の日本語教師が担当しています。能力別に分かれているクラスなので学生数にはばらつきがあり、多い時で20名ほど、少ない時で5名ほどの学生が1クラスに集まっています。ここでの日本語教育は、一つの主教材を使ってレベルごとに順番に進めていくスタイルのため、教員たちは常にチームで動いています。

JICA海外協力隊でウズベキスタンに派遣されていた時は、突然の休講で準備したものがすべて無駄になってしまう経験を何度もしました。それと比べると、計画通りに物事が進むだけでもありがたく思えてきますよね。ここは熱心な教員たちが多いので、日本人学生と留学生との交流イベントなどを楽しみつつ、積極的に意見を交わしながら日々の仕事に臨むことが出来ています。

この国際別科の仕事とは別に、日本語研究者として取り組んでいるのが「特定技能(介護)受け入れスキーム」の研究・開発です。日本の介護現場においては、特定技能資格を持った外国人材の確保が期待される一方で、人材側の日本語習得が大きな障壁となっています。これは、協力隊で外国人に日本語を教えてきた私としては見過ごせない社会課題です。具体的には、神戸市での事例を基に外国人介護人材育成プログラムを確立していく、「神戸モデル」の開発が私の研究テーマです。この研究は、当然私一人では成し得ません。産官学連携で進めていく中、必然的にJICA関西や協力隊経験者に協力していただく機会も増えてきました。

例えばこの「神戸モデル」では、来日して半年ほどで特定技能資格を取得することを想定しているのですが、そのためには来日前に一定レベル以上の日本語を習得しておく必要があります。ありがたいことに、この来日前の日本語教育について京都に住む協力隊経験者が力を貸してくれることになりました。JICA関西を通して、こうした繋がりが出来たことにはとても感謝しています。

ウズベキスタンで日本語教育隊員として活動した瀬戸口さんウズベキスタンで日本語教育隊員として活動した瀬戸口さん

留学先で魅了された語学教師という仕事
初心を忘れずに留学生たちと接していきたい

協力隊時代、私はウズベキスタンの国立世界言語大学に派遣され、日本語教育の活動をしていました。当時、配属先では日本語を第二外国語から第一外国語に引き上げる計画があり、最後まで見届けたいとの思いから任期を半年延長、2年半の活動となりました。ウズベキスタンは、地理的には日本から遠く離れていて接点も少ないのに、日本語学習者がとても多い親日国家です。こうした状況を、私たちの専門用語では「孤立環境の日本語教育」と呼んでいます。帰国後は、孤立環境で外国人が日本語を学ぶ動機について研究をしたいと考え、日本国内の大学院に進学。その過程で、本学で非常勤講師をしたことがきっかけで採用され、現在に至ります。

ウズベキスタンでの活動を振り返ると、当時の配属先は私がたった一人の日本人で、かつ日本文化そのものに興味がある学生ばかりだったため、私が何もしなくても学生のほうから近寄ってきてくれました。今は、自分と学生との年齢差が広がったこともあるのでしょうか、学生に距離を置かれてしまっていると感じることが少なからずあります。ウズベキスタンの学生も本学の学生も、日本語習得にかける思いに大きな差はないので、大切なのは私自身が常に学生と同じ目線で接することだと思っています。また、漢字圏と非漢字圏とで学生の語学習得に違いが発生するというのも、日本でさまざまな国の学生と接する中で判明してきたことです。しかし、教える立場としては、学生の母国文化に左右されてはいけません。出来る限り同じやり方、同じ姿勢で学生と接していくことが教師として大切なことだと考えています。

私自身、30歳を過ぎてカナダに語学留学をした経験があります。そこで、カナダ人教員の教え方に感銘を受けました。日本の学校教育で育った私にとっては、教員が友人感覚で接してくれることにまず驚き、それが結果的に生徒の学習意欲を高めてくれているという事実を目の当たりにしました。すっかり外国人に言葉を教えることに魅了され、日本語教師の資格を取得。その後、日本語学校の教員に転職しました。カナダでの経験が協力隊活動に活かされ、協力隊活動が今の仕事や研究に繋がっています。これからも初心を忘れずに頑張っていきたいです。

※このインタビューは、2022年11月に行われたものです。

経済学部国際別科日本語教員の瀬戸口達也さん経済学部国際別科日本語教員の瀬戸口達也さん

PROFILE

神戸国際大学
設立:1968年
所在地:兵庫県神戸市東灘区向洋町中9-1-6
学部・学科:
・経済学部
経済経営学科、国際文化ビジネス・観光学科
・リハビリテーション学部
理学療法学科
協力隊経験者:1人(2022年11月現在)
HP:https://www.kobe-kiu.ac.jp/
一覧に戻る

TOP