株式会社小島組語学ができるフィールドワーカー
としての魅力

  • グローバル人材の育成・確保

株式会社小島組は、独自に開発したグラブ浚渫(しゅんせつ)船を使った港湾や航路、泊地、河川などの浚渫工事を主な事業としている。現在はシンガポール政府が進めるコンテナふ頭建設プロジェクトに3隻の浚渫船を貸し出すとともに、外国人の乗組員に対する技術指導を行っている。そこで活躍しているのが元青年海外協力隊員たちだ。浚渫船のスタッフとして協力隊経験者を採用した経緯や彼らに寄せる期待などについて、代表取締役社長の小島徳明(こじま・とくあき)さんに聞いた。

「PARTNER」を活用

浚渫船は、船が港に入れるように、海の底に堆積した土砂を取り除くための船です。コンテナ運搬船の巨大化に伴い、国際貨物港や航路はこれまで以上に水深を深くしなければならず、浚渫船の需要は増しています。当社は、世界最大のグラブバケット容量を誇るグラブ浚渫船「五祥」など、3隻の浚渫船を所有しています。周辺の水環境への影響に配慮し、かつ効率的に浚渫工事を進められる当社の船は海外からも高い評価を受けており、近年は南アフリカやシンガポールの港湾整備事業など、活躍の場を海外へと広げています。

青年海外協力隊経験者の採用を検討し始めたのは4年ほど前のことで、シンガポールのコンテナふ頭建設プロジェクトの元請けとなっているベルギーの会社に、浚渫船を貸し出すことが決まったことがきっかけです。浚渫船で実際に作業をするのはインド人など開発途上国の乗組員が多いのですが、当社が独自に開発した特殊な船なので、乗組員に技術指導を行わなければなりません。しかし、当社は地方の中小企業ですから海外志向の社員は少数派で、英語でコミュニケーションできる技術者も多くはありません。国内での事業や、海外であっても小規模な事業であれば対応できたのですが、今回のプロジェクトは今までになく規模が大きく、3隻の浚渫船を一度に貸し出すのも初めてのことでした。しかも、24時間シフトで作業に当たらなければならず、そのための人員が必要になったのです。

そこで注目したのが、青年海外協力隊の経験者というわけです。日本で英語を話せる人材を探そうとすると、どうしてもオフィスワーカーが多くなってしまいますが、私たちが探していたのは、浚渫作業の現場で働いてくれる英語を話せるフィールドワーカーでした。インド人乗組員と一緒に船に乗り込み、彼らとコミュニケーションを取りながら仕事をしなければなりません。その点、協力隊の経験者であれば、語学は堪能だし、浚渫船という厳しい環境での仕事にも前向きに取り組んでくれるのではないかと考えました。

協力隊経験者の採用に当たっては、国際協力の分野で活躍したい個人と、国際協力に関わる人材を求めている企業・団体をつなぐJICAの「PARTNER」というサイトを利用しました。そこに登録している協力隊経験者の中からエンジニアや土木、船舶に関係する人材を探し、当社の方から「シンガポールの浚渫船で働くことに興味はないか」とアプローチしました。浚渫船は非常に特殊な船ですから、専門的な知識は期待していません。それは、仕事をしながら覚えていってもらえばいいからです。それよりも重視したのは、海外の現場で働きたいという意欲です。候補となった人には実際に浚渫船を見ていただき、興味があることを確認した上で採用しました。

代表取締役社長
小島 徳明さん

小島組が誇る世界最大のグラブ浚渫船「五祥」

4人の協力隊経験者がプロジェクトをけん引

シンガポールのコンテナふ頭建設プロジェクトでは、現在4人の協力隊経験者が活躍しています。唯一の女性である大山幸子(おおやま・さちこ)さんは、環境教育の隊員としてエルサルバドルの小学校などで、ゴミの分別や再利用を促進するための活動に取り組んだと聞いています。彼女は一級土木施工管理技士の免許を持ち、協力隊に参加する前は大手ゼネコンの子会社で現場監督として働いていたため、土木の知識と実績は申し分ありません。現在は浚渫作業の現場監督として働いています。2人目は桐岡広征(きりおか・こうせい)さんです。彼は、理数科教師としてザンビアの学校で活動してきた人で、現在は浚渫船の監督補佐として働いています。彼はベルギー人船長からの信頼が厚く、時には船長や乗組員たちの愚痴の聞き役にもなりながら、業務が潤滑に進むよう、環境づくりに努めてくれています。

3人目の長谷川正浩(はせがわ・まさひろ)さんは、1989年に航海術の指導でソロモンに赴任し、それ以後は約25年間、JICAの専門家として各国で活躍してきた人です。新たな分野に転身したいと、当社に来てくれました。非常に経験豊かなオールランドプレイヤーで、元請けであるベルギーの会社との折衝などもすべて対応してくれています。今後は海外事業のマネジメントを担ってもらう予定です。そして4 人目の小川洋久(おがわ・ひろひさ)さんは、ボツワナ共和国の職業訓練校で自動車整備に関する理論的な授業や実技指導を行っていたそうです。現在は自動車整備の知識と経験を生かし、浚渫船の監督補佐として作業状況の集計業務や船のメンテナンスなどを担当しています。

彼らを見ていて感じるのは、非常に忍耐強いということです。船内は冷暖房完備で、トイレや食堂も整備されていますが、やはり船ですから、オフィスのように快適な環境で仕事ができるわけではありません。しかし、開発途上国の過酷な環境で活動してきた彼らには、まったく苦にはならないようです。「トイレにドアが付いているので助かります」と笑って言った大山さんの言葉はとても印象的で、頼もしく感じました。

シンガポールの今回のプロジェクトは、約4,400万立方メートルの土砂を海底から掘削するというものです。受注を狙っている次のプロジェクトも、同じくらいの規模になる予定です。現在、日本全体の浚渫量が年間約800万立方メートル程度であることを考えると、シンガポール、そして成長著しいアジアは当社にとって非常に魅力的な市場です。今後の事業展開を考えても協力隊経験者の力は不可欠ですし、語学ができるフィールドワーカーとして、さらなる活躍を期待しています。


※このインタビューは2017年3月に行われたものです。

青年海外協力隊として派遣されたエルサルバドルの小学校でゴミ問題の授業を行う大山さん

理数科教師の協力隊員として配属されたザンビアの学校の子どもたちと記念撮影する桐岡さん

配属先となったボツワナの職業訓練校の先生たちと協力隊時代の小川さん

PROFILE

株式会社小島組
創業:1919年
所在地:名古屋市港区木場町1-6
事業内容:浚渫、埋立、土木工事など
協力隊経験者数:4人(2017年5月現在)
HP:http://www.kk-kojimagumi.co.jp/

一覧に戻る

TOP