学校法人九里学園高等学校教員が積み重ねた経験は
確実に生徒に響く

  • グローバル人材の育成・確保
  • 研究・教育プログラムの強化

社会に貢献する人材の育成を

当校では、グローバルな人間を育てることに二十数年前から取り組んでおり、私が校長に着任してから制度を具体的にシステム化しました。「交換留学制度」「海外研修・ホームステイ旅行」「姉妹校などの生徒の来校」などを取り入れ、国際教育も盛んです。また、校是である「人間の尊厳を信じその高貴さにふさわしく行為しよう」という「礼(れい)」と「自らの持てる力を発揮して愛する世の人々に捧げよう」という「譲(じょう)」を教育理念に掲げ、どういう生き方をすれば社会の役に立てるのかということを、常に考えて行動できる生徒を育てたいと努力してきました。

 そのために授業とは別に「特設時間」を設け、ボランティア活動などさまざまな経験をとおして、「人と共に生き、人のために生きる」精神を身に付けてもらっています。当校の生徒はその時間以外にも自主的に活動しているようです。私も時間の許す限りボランティアや研修に参加しています。

学校長
九里 廣志(くのり ひろし)さん

教員の成長は学校の財産

生徒も教員も、「実際に経験する」ことが大事だと私は常に思っています。教員は知識はあるかもしれませんが、多様な体験をする機会がとても少ないようです。「井の中の蛙」になってしまうことが一番の問題です。私も大学に進学する際に地元である米沢を離れたことで、私の常識が常識ではないことに驚き、人はそれぞれ違うことを知り、さらに、それでも人は同じだということを、体験して理解しました。

 当校には、6年前に協力隊に現職参加した鈴木という教員がいます。現職参加は2年間の空席ができてしまいます。私立学校の場合、人員が不足するときは新たに教員を採用しなければなりません。これは経営側として大きな問題です。鈴木もこのことを考え、退職して参加する予定だったようですが、私は彼の経験が当校の財産になると判断し、現職参加してもらいました。意欲のあるときに海外に行って、その意欲を海外で発揮し、さらにあらゆることを吸収して日本に持ち帰ってきてほしいという期待がありました。

 また過去に国際教育のシステム化を考えていたとき、英語の教員が1年間の海外研修に行き、大きな成長があったことも、鈴木に現職参加を促した理由のひとつです。海外に住み、現地の人と交流して知識を身に付けた英語の教員が、帰国後に国際教育のシステムづくりをしたと言っても過言ではありません。

 そして今、鈴木は見事にその期待に応えています。彼の担当教科は国語ですが、現在は国際教育の授業も担当してもらっています。また、生徒指導の面でも、多様な価値観を身に付けた彼は、生徒が自ら考える姿勢を尊重しているようです。例えば海外進学の相談をされたときには、語学習得のみを目標にするのではなく、その先に何を見据えて学ぶのかという考え方ができるような指導をしているようです。このようななかで、生徒の目指す道が社会貢献活動につながることも少なくありません。これは当校の理念に基づいた生徒が着実に育っていることだと思いますし、協力隊経験で鈴木が得た社会貢献の精神が、生徒に良い影響を与えているとも感じます。

 もともと鈴木はエネルギッシュでしたが、復職後はより一層、自身の経験を伝えたいという意欲が伝わってきます。それは、校内だけにとどまらず、協力隊で出会った他校の教員とともに国際教育の研修を重ね、今では地域全体に国際教育の活性化を目指す活動もしてくれています。

 今後も当校からJICAボランティアへの参加を希望する教員がいれば、もちろん応援するつもりです。教員の成長は、そのまま生徒の成長にもつながります。多様な経験を教員には積んでもらいたいと思っています。

JICAボランティアの声
鈴木精さん(平成19年度派遣/ザンビア/青少年活動)

私はザンビアの低所得者層が暮らす地域のコミュニティーセンターで、学校に通えない孤児や社会的に立場の弱い子どもたちに教育の機会を与える教師として活動をしていました。現地には学習するにふさわしい校舎はもちろん、十分な教科書や黒板、チョークすらなく、当時の私はこの状況に、「無理だろう」とか「なにもできない」などと考えだけが先回りして諦めてしまいそうなことがありました。しかし、「そんなこと言わずにやってみよう」という隊員仲間に支えられ、「どうやったらできるか、良くなるか」と工夫しようとする考え方に変化しました。また現地で、子どもから大人までいろいろな生き方や生活に触れたことで、多様な価値観を身に付けることができました。

 この工夫や諦めない力、多様な価値観が、現在、教員として働くなかで役立っていると感じます。特に協力隊に参加する前は、先生という価値観で生徒と話していた部分が多かったのですが、今は多様な価値観を持って多角的に話ができていると思います。また、帰国後は国際理解の授業を担当し、世界の不平等や私たちの生活と海外とのつながりなどについて、授業をとおして生徒とともに考えています。生徒にも多様な考え方を身に付けてほしいと思っており、協力隊で培った経験を彼らに伝えることが、この一助となればと思っています。

配属先のコミュニティースクールで、小学生に算数を教える鈴木さん

PROFILE

学校法人九里学園高等学校
設立:1901年
所在地:山形県米沢市門東町1-1-72
生徒数:502人(2013年4月現在)
HP:http://kunori-h.ed.jp/
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