京都市教育委員会JICAボランティア経験者の力で
「内なる国際化」を

  • グローバル人材の育成・確保

コミュニケーション力を重視

京都市は平成17年度の教員採用選考試験で、全国で初めて「国際貢献活動経験者特別選考」(以下、「特別選考」)を導入させていただきました。以来、平成23年度の試験までに33人がこの枠で教員になっています。
 「特別選考」の導入以前にも、第1次試験の一部を免除する特別枠として、大学院・大学推薦枠、現職教員枠、社会人枠、博士号枠がありましたが、「特別選考」はそれらとは異なる特別枠です。JICAボランティア経験者の方々にとって、こうした枠が設けられていること自体、大きなアドバンテージでしょう。さらに、第1次試験では一般・教職教養筆記試験の代わりに論文試験が設定されており、前者の対策をせずに済むという点でも有利になっています。論文試験のテーマは年度によって変わりますが、過去の例としては、「国際貢献活動の必要性をどのように考えているか?」「協力隊での経験を京都市教員としてどのように活かしていくのか?」などがありました。
 京都市の教員採用選考試験では、人物を重視した採用を行うという方針から、すでに30年も前から「個人面接」を取り入れています。そのため、合格するためにはコミュニケーション力などが求められ、「筆記試験だけが得意」という頭脳派には不利な試験となっています。

総務部 教職員人事課長(当時)
芝田 一広さん

子どもに地球規模の視点を

国際貢献活動の経験者を対象にした特別選考をいち早く取り入れた背景には、やはり京都が持つ独特の歴史があると思います。京都は、唐の時代から中国の人材や情報を受け入れ、伝統を守りながら発展してきた町です。全国の国宝の20パーセントが集まり、2005年には金閣寺や銀閣寺、清水寺など17の社寺がユネスコの世界遺産に登録されました。現在も海外から多くの観光客が訪れる国際都市になっています。そんな京都で育つ子どもたちだからこそ、「外」に目を向ける視点を持ってもらうことで、彼らの「内なる国際化」を図っていくという市の教育方針ができたのです。市が掲げる「内なる国際化」という方針と、JICAボランティア経験者が持つグローバルな視点が合わさり、自然と「特別選考」のような制度ができる流れになったのではないでしょうか。
 これから「特別選考」での受験を目指す方には、何より京都の子どもたちに「グローバルな視点」や「外に目を向けることの大切さ」を教える人間になることを意識してもらいたいと考えています。JICAボランティア経験者は、世界の国々で高い志を持ちながら身体を張ってボランティア活動を実践してきたことと思います。そういう方々には、途上国で見てきたことを教職の現場で役立てていただきたい。環境問題や人権問題、食糧問題などについて、地球規模の視点で物事を見ることができる子どもを育てていただきたい。外国を知ってこそ、日本の文化がわかるという面もあるはずです。国際貢献活動を経験した教員がいれば、ほかの先生たちの国際化にも大きく役立つと考えています。

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