三菱商事株式会社JICAはグローバル人材の宝庫
~人に、社会に、国に尽くす青年海外協力隊~

  • グローバル人材の育成・確保
  • 開発途上国へのビジネス展開

弊社は国内外およそ80カ国に200以上の拠点を持ち、500社以上の連結対象会社と共にビジネスを展開している総合商社です。従業員数は、連結対象会社を含め全世界で6万人、そのうち日本人が4万人、外国人が2万人おり、ダイバーシティーに富んだ会社であります。

 昨今、私が感じることは、中国やインドなどの新興国が、政治、経済、外交、安全保障において際立った存在感を示す一方で、かつては「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれた日本の国際社会における存在感が低下の一途をたどっているということです。しかしながら、円高や少子高齢化など、日本の現状を考えるとき、日本はグローバル市場を十分に取り込んでいかなくてはなりません。したがって、グローバル人材の育成は喫緊の重要課題です。まさに、産学官が一体となり、わが国の次世代を担うグローバル人材の育成に取り組む責務があると思われます。

 私が考える、グローバル人材の定義とは次の4つになります。

1) 国際的な舞台で物怖じすることなく、議論と主張ができる人材。
2) コミュニケーションを通じて、世界の人々と信頼関係を築ける人材。
3) 自国の文化や歴史に明るく、等身大の説明ができる人材。
4) 人、社会、国に尽くすという志を持っている人材。

 弊社の若手社員に対しては、こうしたグローバル人材になるためのアドバイスとして、次の3点を提示しています。

1) 自己表現力を身につける
 これは、さまざまな言語やバックグラウンドを持つ人たちと議論を展開し、自らの考えを自らの言葉で、しっかりと主張していける力のことです。こうした能力こそが、国際交渉を可能にします。

2) 英語3原則
1. 英語をうまく話す必要はない。
2. 英語がうまい人間が必ずしも仕事ができるわけではない。
3. 下手な英語でもいいから、自分の意見、意思をしっかり主張すること。

 この英語3原則は、私にとって初の海外赴任先となったサウジアラビアでの経験にもとづいています。流暢な英語を話せることと、仕事ができることとは別問題です。下手な英語でもいい。ただし、自分の意見をきちんと言うことが大切です。そうした熱意があれば、周囲は真剣に聞いてくれるものです。

3) 海外に対しての関心を深めること
 日本を外から見て、諸外国はどのように日本を見ているかを知ることが大事です。それと同時に国際社会においては、国際貢献の志を持つことが求められる。

 グローバル人材の育成には、以上のような能力や意識を醸成していく必要があると私は考えているのですが、JICAの青年海外協力隊への参加は、その手段の一つになると思われます。

取締役会長
小島 順彦(よりひこ)さん

弊社では、アフリカ南部のモザンビークにアルミ精錬工場を有しており、同社が地域貢献のための基金を設立し、小学校と中学校を造りました。私がその小学校を訪ねると、子どもたちが大歓迎をしてくれました。中学校では生徒はすでに下校していましたが、校長先生の計らいで、同校で教える2人の教師に会うことになりました。まもなくして私の前に現れたのは、男性と女性の協力隊員でした。2人とも30歳前後で、男性が物理と算数の教師、女性はコンピューターの教師でした。目をきらきらさせながら、現地での活動について話す2人の話を聞き、「協力隊は素晴らしい!」と率直に感動しました。この熱意ある2人の教師のお陰で、学校が活性化していると校長先生も喜んでおられました。

 今現在、弊社にも、開発途上国で経験を積んだ協力隊経験者が全世界で6名います。彼らは押しなべて苦境に屈せず、非常に打たれ強い。そして、豊かな経験と流暢な外国語を武器に、貴重な戦力として我々のビジネスの現場でも頼もしい存在として活躍してくれています。

 2011年ベースで、協力隊員は約2,600人。彼らは志を胸に、世界各地の厳しい環境で、逞しく活動されています。高い志を抱き、開発途上国で活動した人材が揃う青年海外協力隊は、まさにグローバル人材の宝庫です。こうした人たちに、企業で活躍してもらうことは非常に意義深いことだといえます。

 JICAは、協力隊の派遣事業以外にも、ODAや技術協力を通じて、新興国や開発途上国の開発や復興に大いに寄与しておられます。日本人のこうした活躍が国際社会でも評価されたのでしょう、昨年3月に発生した東日本大震災後、世界中から義援金が寄せられたことは皆さんご存知の通りです。昨年10月時点で、寄付金や物資が計126の国や地域から届けられていますが、その3分の2にあたる約80カ国が、いわゆる開発途上国です。これは日本が積み重ねてきた国際貢献が高く評価されていることの証だと思われます。

 こうしたことからも、今、あらためて、JICAが果たす役割を再認識するときではないでしょうか。グローバル人材の育成が、国家としての喫緊の課題であることを考えるとき、企業が自社の人材育成のみならず、JICAが輩出する貴重なグローバル人材の予備軍にも目を向け、積極的に活用していくことは、グローバル競争に勝ち抜くための有効な手段の一つになると思われます。グローバル人材としての最も重要な資質は、人に尽くす、社会に尽くす、国に尽くすという志を持っているかどうかです。こうした志を持つ協力隊経験者の再就職を、日本の企業が支えていくことは、非常に意義深いことだと私は考えます。

 これからもJICAの青年海外協力隊事業が将来の日本を背負って立つグローバル人材を送り出し、国際社会に貢献しゆくことに心から期待しています。

※2011年12月26日日本経済新聞朝刊に掲載されたコチラの記事もご覧ください。
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「協力隊はグローバル人材の宝庫」と語る小島さん

PROFILE

三菱商事株式会社
設立:1950年4月1日
所在地:(三菱商事ビルディング)東京都千代田区丸の内2丁目3番の1号
(丸の内パークビルディング)東京都千代田区丸の内2丁目6番の1号
事業内容:当社は、新産業金融事業、エネルギー事業、金属、機械、化学品生活産業の6グループにビジネスサービス、地球環境事業開発の2部門を加えた体制で、幅広い産業を事業領域としており、500社を超える連結対象会社と共に、世界中のお客様とビジネスを展開しています。
従業員数(連結):60,520名(三菱商事単体および連結子会社従業員数)
協力隊経験者数:6名

HP:http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/
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