日本デイリーネット株式会社知らない人に話しかけ、
自分の常識を超える出来事に対処する
JICA海外協力隊での経験が活かされる仕事

  • グローバル人材の育成・確保

食品業界のリーディングカンパニーである日本ハム。そのグループ会社である日本デイリーネットは、冷蔵・冷凍での保管と配送に強みを持つ物流企業だ。全国に13の物流センターと3つの事業所を有し、日本全国を網羅する配送網を構築している。ニッポンハムグループ外の企業も顧客とし、例えば同業他社となる食品メーカーや外食チェーンお客様の保管・配送も手掛けている。食品は厳密な鮮度管理が求められるが、同社は冷凍保管した商品を出荷時期に合わせて冷蔵に温度帯変更するといった、流通加工といわれる分野でのノウハウを蓄積している。多様な作業を的確に遂行することが求められる中、JICA海外協力隊経験者への期待について管理本部人事総務部人事総務課の千葉大輝さんに話を伺った。

進化する物流業界
各方面にアンテナを持ち、チームをまとめる力が求められている

当社の物流センターは大きく4つのチームに分かれています。お得意様からのオーダーは電算チームが受注。その情報に基づいて、商品管理チームが出荷指示を出し、工場への発注等を通じて適正在庫を維持する在庫調整を行います。納品伝票を作成する物流事務チームや倉庫内での商品の入出庫、仕分けを担う構内作業チームなど様々なチームが活躍しています。

物流企業というとトラックドライバーをイメージされると思いますが、当社のスタッフにはドライバーはいません。地域ごとに配送を担っていただく協力会社にお願いしています。お客様の商品をお預かりして、商品に付加価値を与え、100点満点の物流・効率的な物流サービスをお届けできるよう物流をコーディネートすることが私たちの仕事です。

私の考える当社の採用基準は二つあります。一つは、各方面にアンテナを持っている人。私たちの仕事はやるべき業務がほぼ決まっています。だからこそ、お客様のニーズを察知し、各業務の中で付加価値を生み出すことが必要です。また、一部業務の機械化など物流業界は急速に進化しています。新しい知識へのアンテナと好奇心は不可欠です。物流は社会のハブのような存在でもあります。食を通して社会に貢献するために、様々な視点を持ったバイタリティのある人が必要です。

もう一つの採用基準は、チームをまとめる力を持った人。当社のチームは5~30名で構成されており、パートさんや派遣のスタッフさんも少なくありません。リーダーシップのある社員には若くてもリーダーになってもらいます。リーダーの役割は、各チームのシフトを組んで連絡事項を周知し、イレギュラーな出来事に対応することなど多岐にわたります。リーダーシップの取り方は人それぞれです。自ら作業に入って率先垂範をする人もいれば、常に周りを俯瞰してメンバーのフォローに回る人もいます。いずれにせよ、チームが成果を出せるか否かはリーダーによって決まると言っても過言ではありません。

管理本部人事総務部人事総務課の千葉大輝さん管理本部人事総務部人事総務課の千葉大輝さん

どんな人とも間に壁を作らない
自然と巻き込みながら目標に向かって進んでいく人材

協力隊経験者の寺井嵩斗さんを採用した時期、当社は新しい拠点の設立が決まっていました。ゼロから拠点を築き、成果を出せるチームを作るためには、バイタリティがあることはもちろん、課題や目標を自ら設定できる人材が必要です。聞くところによれば、協力隊の活動では予想外の事態が発生するケースが少なくないそうです。現地に到着したら配属先の建物が水害で流されてしまった後だったり、水泳を教えに行ったのにプールがなかったりとか。言葉も文化も違う異国、しかも生活環境が恵まれているわけではない開発途上国で、自分なりに課題と目的を見つけ、さまざまな人を巻き込んで目的を達成するのが協力隊なのでしょう。まさに当社に必要な人物像だと考え、寺井さんの採用に至りました。

寺井さんは今、構内作業チームのメンバーとして現場作業を覚えている段階です。当社の現場はマルチタスクを求められ、さまざまなことを同時に考えながら身体を動かし、しかもミスなく業務を遂行する必要があります。バスケットボールと協力隊での経験で心身を鍛えた彼は、現場の作業を早くも体得しつつあります。今後はリーダー候補としてチームをまとめることを積極的に学んでほしいです。労働人口が減少する日本では外国人労働者が増えていくことも予想され、彼には言葉や文化の壁を超えられるコミュニケーションも期待しています。

チームリーダー候補である寺井さんには、名古屋第一センターでのコンプライアンス推進委員も担ってもらっています。センター内のセクハラや飲酒運転を予防する重要な役割で、メンバー全員を巻き込んでいくことが必要です。彼はとても勉強熱心で、分からないことは講師に確認しながらコンプライアンスとは何かを把握したうえで、センター全体に浸透させる活動をしています。

いずれはセンター長を目指してほしいですね。当社の物流センターの長は経営人材である必要があります。センターのメンバーをまとめる一方で、お客様や協力会社との折衝も行い、センターの業績を上げていく責務があります。どんな人との間にも壁を作らず、自然と巻き込みながら進んでいく力がある寺井さんには、この責務を果たすポテンシャルがあると大いに期待しています。

JICAボランティア経験者から

中日本事業部名古屋第一センター 寺井嵩斗さん
(ウズベキスタン/バスケットボール/2018年度派遣)

人との出会いとご縁を大切にすること
協力隊での学びが新たなスタートに

大学卒業後、英語教師になるために通信で教員免許を取得する勉強を続けていました。その頃のアルバイト先にJICA海外協力隊出身のスタッフがおり、話を聞いて「面白そうだな」と思ったのが応募のきっかけです。協力隊は日本国政府の事業であり、訓練や生活面の支援が充実したボランティアであることも安心感がありました。自分の得意なバスケットボールを教えることにやりがいを感じ、現地語を習得する経験は自分が英語を教える時に役立つとも思いました。
派遣されたのは中央アジアのウズベキスタン。首都には戦後のシベリア抑留時に日本人捕虜が建設した建物が残っており、地震の時にも倒壊しなかったことから尊敬の念を持たれているほど、親日的な国です。夏は50度、冬はマイナス20度になるウズベキスタンは、人が住むには厳しい環境です。そのせいか体格の大きい人が多く、15歳なのに身長が190センチもあったりするのには驚かされました。181センチの私でも当たり負けしそうになるので、必死で体重を10キロ増やしたほどです。

バスケットボールよりも圧倒的にサッカーが人気のお国柄でしたから、子どもに教えるのは苦労しました。しかし、自らプレーする姿を見せて「あいつのように上手くなりたい」と思わせることで、いつしか子どもたちにやる気と真剣さを引き出せるようになったのは嬉しかったですね。

2年間の協力隊活動はあっという間に過ぎてしまいましたが、それだけ濃密な日々だったのでしょう。ウズベキスタンでは、出会った人たちにたくさん助けてもらいました。そんな経験から、いつしか人の出会いとご縁は大切にするようになり、これが新たなスタートを生むことになりました。

2020年に帰国した時、引き続き教師を目指すべきか迷っていた私は、JICAが主催するJICA海外協力隊経験者と企業との交流会にて、当社の採用担当者と出会いました。社会人経験がないという負い目を正直に伝えたところ、「経験の有無ではなく、物事をフレキシブルに考えられる人を求めている」という言葉を返され、心惹かれるというか、縁を感じて入社を決めました。

最初の1年間は仕事についていけず、非常に辛かったです。物流マンたるもの、お客様の商品を時間通りに正確に届ける責任がありますから、スタッフが少なくても荷物が多くても泣き言は言えません。常に先々を考えながら迅速に動かなければなりません。また、正社員には3~4名のパートさんや派遣のスタッフさんの方々が付くため、私には指示を出す役割もあります。経験豊富なスタッフを前に、新人の私にとっては精神的に厳しい日々が続きました。

ウズベキスタンでバスケットボール隊員として活動した寺井さんウズベキスタンでバスケットボール隊員として活動した寺井さん

自分の常識を押し付けない
日々の仕事に活かされる協力隊の2年間

業務に慣れてきた今は任せてもらえる仕事も増え、やりがいを感じられるようになりました。職場全体のことも少しは見えるようになり、「ここはこう変えたほうがいいのでは」と課題を見つけることもあります。幸いなことに、センター長はじめスタッフみんながフランクに接してくれるため、意見を言いやすく、自分を出しやすい職場環境でもあります。

私が所属する構内作業チームは2班に分かれているのですが、担当するお客様によって大小の違いがあり、お互いの段取りや作業内容が異なることから、これまで業務中に助け合うことがありませんでした。どちらかの班で人手が足りない時は、フレキシブルに人を動かすことで業務をより効率的に進めることが出来ると考え、ヘルプを出し合うスキームを作り始めています。

協力隊経験で役立っていることの一つに、人見知りしなくなった点が挙げられます。例えば、協力会社のドライバーさんにはいかつい風貌で、一見近寄りがたい雰囲気の方もいるのですが、私は「今日は道混んでいましたか?」などと積極的に声をかけます。ウズベキスタンでは、言葉がほとんど話せない、聞き取れない状態から活動を始めました。相手の表情やしぐさ、声色などで感情や意見を読み取ってコミュニケーションを取るしかなかったのです。それに比べれば、言葉を理解してやり取りができる環境ははるかに楽です。今では初対面の人に話しかけることも、まったく抵抗がありません。

また、自分にとってイレギュラーな出来事が起きたとしても、「そういうこともある」と受け入れられるようになりました。ウズベキスタンで、自分の常識を木端微塵に打ち砕かれてしまったからです。例えば、日本では部活の練習を休むのはよほど体調が悪い時ぐらいだと思いますが、現地では「牛の世話をするから休みます」など、予想外の理由が様々出てきます。あの経験のおかげで、「普通はこうするだろ」と考えなくなった自分がいます。

「普通はこうする」という考えは、説明の放棄ですね。相手に何かを伝えて動いてほしいのであれば、「なぜそうするべきなのか」という理由と目的きちんと説明するべきで、そのための準備も当然必要だと思います。私が働く現場では、作業手順などで他人が自分とは違う動きをすることも少なくありません。自分のほうが絶対に正しいと思っても、それを頭ごなしに押し付けることはせず、まずは相手の考えや状況を理解する努力をするようになりました。場合によっては、その人がやりやすいように動いてもらって自分がフォローに回れば、より良い成果を出すこともあるわけです。

協力隊での2年間で自然と身に着いたことが、今の仕事で意外なほど役立っていると実感する日々です。ウズベキスタンが教えてくれたことをこれからも大切にしながら、仕事に活かしていきたいと思っています。

※このインタビューは、2022年8月に行われたものです。

中日本事業部名古屋第一センターに勤める寺井嵩人さん中日本事業部名古屋第一センターに勤める
寺井嵩人さん

PROFILE

日本デイリーネット株式会社
設立:1987年
所在地:茨城県筑西市みどり町2-1-1
事業概要:配送センター運営管理業務、第一種貨物利用運送事業、第二種貨物利用運送事業、倉庫業
協力隊経験者:1人(2022年8月現在)
HP:https://www.nippondailynet.co.jp/
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