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その後の仕事人生にとって協力隊経験は貴重な糧になる

2006年に、当時私の部下だった当県職員の坂口くんから「協力隊に参加したい」という意思を聞いたとき、それほど驚きはしませんでした。私の知り合いにも協力隊に参加した人がいましたし、その2~3年前には当県職員で参加した例もあったからです。
 当時の坂口くんの仕事は、野菜栽培の振興に関するものでした。農家の方に対して、いろいろな機会を利用して自分から交流をはかろうとしたり、流通のことまで考えて仕事に取り組んだりと、よくがんばっていたことを覚えています。そういうなかで「海外でいろいろなことを学びたい」という意思を聞いたわけです。彼の性格や人柄も考え合わせると、協力隊への参加は彼の仕事人生のなかの一通過点としてしっかり位置づけられているのだろうなと理解できました。また、彼のような若い世代の職員が開発途上国で仕事をしてくるということには意義があるとも感じました。彼の希望に対して、私を含めて周囲から反対する意見は出ませんでした。
 当時の彼はまだ20代後半。さまざまなことに冒険し、さまざまなことを吸収できる年代です。日本に戻ってきたあとの20年、30年にとって、協力隊への参加はキャリアとして大切なものになっていくはずだと考えました。
 坂口くんはタフで仕事を一生懸命やる人間であり、所属部署に戦力の余分があるわけでもなかったので、彼がいなくなることは非常に惜しかったのも事実です。しかし、それでも彼の協力隊参加を応援したいという思いのほうが強かったのです。

中遠農林事務所 農業振興部長
小長谷 伸郎さん

日本の農業を見つめ直す経験

坂口くんには、日本に戻ってきてからは当県中遠地区の野菜の普及指導員の仕事をお願いしています。
 彼の仕事ぶりを見て思うのは、広い視野で農業を見つめながら仕事をしているなということです。「俯瞰」で物事を見ることができるようになったと感じています。パラグアイでの経験は、日本の農業を外から見つめ直すためにも必要だったのではないでしょうか。
 普及指導員の仕事では、農家の人たちに知識を伝えるだけでなく、彼らが何を問題だと思っているかを聞き出さないといけません。農家の人たちとの間の距離を埋めるというのはなかなか難しいことなのですが、坂口くんはそれがきちんとできていると、彼の直属の上司は話しています。これも協力隊経験で得た能力なのでしょう。
 もちろん、行動力や実践力も付いたと思います。帰国してまだわずかですが、これから先、もっともっと協力隊での経験を職場に還元してくれるものと期待しています。今後、もし「協力隊に参加したい」という職員が出てきたならば、私は応援すると思います。協力隊への現職参加は、参加する本人にとってはもちろん、所属する組織にとってもプラスに働くものだと思うからです。もちろん、みんなが一斉に抜けてもらっては困りますが、年にひとりくらいならばカバーできるだろうと思っています。

静岡県中遠地域特産のエビイモを紹介する同県中遠農林事務所のニュースレター。野菜の振興は坂口さんの担当分野

JICAボランティア経験者から

協力隊経験で得たのは「人」対「人」で仕事をする力

大学院を中退して当県の職員となったのは2004年です。最初の2年間は畜産関係の仕事に携わり、3年目からは野菜の普及指導員になりました。野菜の産地振興が主な仕事です。農協や生産者団体と連携するなど、現場に入っていく力が求められる仕事でしたが、私自身の普及指導の力の限界を感じて悩むことも少なくありませんでした。協力隊に参加したのは、「何か成長したい」という気持ちからでした。
 協力隊員として配属されたのは、日本の農業高校にあたる学校です。土壌分析に関する授業を担当したほか、農家に出向いて土壌分析を行ってもらえるよう説明をし、そこの土壌を分析したうえで、どんな種類の肥料をどれだけやるべきか提案をするといった活動も行いました。
 日本に帰国してからは、再び野菜の普及指導員として働いています。仕事のなかでは、協力隊経験で得たコミュニケーション力が役に立っていると実感しています。農家の方々へのアプローチの仕方など、パラグアイで私の仕事の原点を見つけることができたと思います。今では躊躇なく農家に切り込んでいけるようになりました。
 協力隊活動と今の普及指導の仕事は、どちらも「人」対「人」の仕事である点で共通しています。何も知らないところからあるコミュニティーに入っていき、新しいことを提案し普及させていく。パラグアイでは、それを言葉のハンディがありながらやり遂げた。普及指導員としての能力を存分に磨くことができたと思っています。
 協力隊というのは、私のように若くて経験の浅い人間が参加しても、十分な活躍が難しいと感じたのも事実です。しかし、だからこそ、若い時期に協力隊に参加した人は日本に戻ってから、日本の職場で協力隊の経験をどれだけ生かすかが重要なのだと思います。現職参加を認めてもらえるというのは、そういうことを期待してのものなのだと思います。私自身も今後、協力隊での経験を職場や県、日本の農業のために還元できるよう、がんばっていこうと思っています。

中遠農林事務所 農業振興部 園芸畜産課
坂口 良介さん
(平成19年度派遣/パラグアイ/土壌肥料)

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