財団法人 日本数学検定協会JICAボランティア経験者が
海外展開の即戦力として活躍

  • グローバル人材の育成・確保
  • 開発途上国へのビジネス展開
  • 研究・教育プログラムの強化

当財団は、算数や数学の力を測る検定試験「実用数学技能検定(数学検定・算数検定)」の実施を事業の柱とする団体です。同検定は就学前の幼児のレベルから大学卒業程度のレベルまでの全14階級で構成されるもので、実施回数は個人受検と団体受検を合わせて年に16回程度。その問題作成から検定の実施に至るまで、すべてを当財団の約50人の職員が行っています。

 1992年に開始した検定ですが、現在は受検者数が年間延べ32万人ほどにまで伸びています。児童・生徒の学習意欲を高めるために学校が団体受検を導入するケースもあれば、入試で学力の証明とみなす高校や大学も増えているため、入試に向けて受検するケースもあるなど、検定の活用目的の幅は年々広がってきているようです。

 こうした検定は海外に類例を見ないことから、2006年から海外での実施も開始しました。これまでに模擬検定を含め何らかの形で実施した国は、インドネシア、韓国、フィリピン、カンボジア、米国の5ヵ国。このうちフィリピンとカンボジアでは、現在も継続的に実施しています。フィリピンでは現地の数学教師やほかの教科の教師にも受検していただいており、同国の数学教育の底上げに検定が一役買っています。一方、カンボジアの受検者は成績が優秀な層の子どもたち。将来、国内の要職に就くであろう彼らが、検定をきっかけに数学の力、ひいては一般的な思考力をより高めることは非常に有意義なことでしょう。このように、検定は海外でもさまざまな形で重要な役目を担い得るものですので、現在は海外展開を事業方針にも明記し、その実施に力を入れ始めているところです。

 こうした海外展開で主力となっているのが、ここ5年ほどの間に当財団に入職した2人の青年海外協力隊経験者たちです。彼らはフィリピンやカンボジアで検定を実施する際、学校や数学会といった現地の協力機関との調整から当日の運営、さらには海外の受検者の学習に使ってもらうための過去問題集の英語訳版の作成や現地での学習支援など、あらゆる業務をこなしてくれています。これは、JICAボランティアのように2年という長期にわたって外国人と共に働いた経験がなければとうてい不可能な仕事です。

 海外経験を持つ人材となると、当財団には彼らをおいてほかにおらず、しかも海外で事業を回せる人材を自前で育成する体力が当財団にはまだありません。そのようななか、海外展開は今のところ、2人の青年海外協力隊経験者にすべてを託すほかないという状態となっています。

 もし彼らがいなければ、企業の海外進出のコンサルティングを行う会社に業務委託をすることになります。しかしそれでは、成功するかどうかが読み切れないというリスクがあるうえ、海外で検定を実施するうえで必要なノウハウが当財団に一向に蓄積されないというデメリットもあります。当財団としては、フィリピンやカンボジアなどでの実践を足がかりに、さらにほかの国々へと展開し、いわば数学検定の「国際基準」を構築していきたいと考えています。2人の青年海外協力隊経験者たちには、この目標に向けた土台づくりを担ってもらっているわけです。

 二人のうちの一人は、青年海外協力隊時代の派遣国がフィリピン。実は当財団が同国で検定を実施し始めたのは彼の派遣中であり、彼からは事業開始にあたって必要な情報を提供してもらうなどの協力を得ていました。彼を当財団に招いたのも、海外展開に有用な人材だと判断したからにほかならず、フィリピンにおける事業は着任早々から彼に任せています。現地の状況をつぶさに知る彼がその強みを生かしながら、同国で検定を広めるためにさまざまな挑戦をすることにより、いわば検定の海外展開のモデルケースをつくりあげてくれるのではないかと期待しています。

 日本社会がグローバル化するなか、日本の企業にとって重要となってくるのは、海外展開を進めるうえで必要な現地の優れた人材を見分け、採用することではないでしょうか。先ほども申し上げたとおり、数学の力というのは一般的な思考力を測る指標でもあります。そのため、日本の企業が現地の人を採用する際に、当財団の検定を人物評価の一つの判断材料にしていただける余地も十分にあるのではないかと考えています。当財団ではこのように、検定の海外展開の可能性を非常に前向きに捉えていますので、その推進役となり得る人材であるJICAボランティア経験者は、今後も積極的に採用していきたいと考えています。

理事長
清水 静海(しづみ)さん

調査研究部に所属する青年海外協力隊経験者の山口哲さん(左)と三上佳津江さん

PROFILE

財団法人 日本数学検定協会
設立:1999年(1992年に任意団体として設立)
本部所在地:東京都台東区上野5-1-1 文昌堂ビル6階
職員数:約50名(2013年7月現在)
協力隊経験者数:2名(2013年7月現在)

HP:http://www.su-gaku.net/
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